仲間は多い方が楽しい Ⅰ
のんびり回前編
登場キャラクターはちーちゃん、リキ、クロマ、ヒマリ
登場キャラクター紹介
デル
このダンジョンの二代目のラスボスで悪魔のモンスター。ずるがしこさいだけでなく実力もきちんとある。アランとは相性最悪。自分に従はないものは優秀であろうと基本的に殺すのだが、アランがいなくなるとこのダンジョンについて熟知しているモンスターがいなくなるため殺せずにいる
次の日の早朝、洞窟内で寝ていたヒマリは目を覚ます。
目を開けると目の前に広がるのは岩の壁。それを見て自分がダンジョンの中にある洞窟の中で寝ていたことを思い出した。周りを見渡すとまだ早いようでライヤ、カムイ、リン、リイアとフェニは寝ていた。ヒョウリは昨日の夜に四階に戻った。
ヒマリは早寝早起きのおりこうさんであった。(尚本人曰く、元はさっさと寝たまま二度と起きないことを望んでの行動とのこと)
ヒマリはしばらくぼんやりとしていたが、今の彼女にはやることも考えるこもとないので洞窟の外に出ることにした。
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ダンジョン内部はダンジョンの外に合わせて日の出、日の入りの概念があり、朝、昼、夜もあるとのこと。もっと暗くて無機質なものだと想像していた私はとても衝撃を受けた。
私は洞窟から少し離れた場所に一人静かに立って、魔法の練習をすることにした。精神を統一し、魔法の詠唱を始める。
ヒマリは水を生成し、操ることができる(ただし、操ったり一度に生成できる量の限度アリ)ヒマリの限度の値は少なめであるため、物量でごり押したりはできない。
私が生成した水を操って、四角くしたり球状にしたりしていると
「お姉ちゃんは魔法が使えるの?」
足元から声がしたので、見てみると一匹のスライムがいる。確か名前はリキだったはず……。リキは興味津々といった様子である。
「……うん。水の魔法。……といってもすごいものじゃないけどね」
私は作った水を優しくリキにあてると「冷たい!」とぴょんぴょん跳ねる。
「ねえねえ、僕にも教えてよ~」
……そう言われてもね。魔法が使えないモンスターが使えるようになるには何十年って普通はかかるって話だからね。それもスライムみたいにエネルギーも知能も低いモンスターとなると死ぬまでに覚えられるかどうかも怪しい。
「…教えるのはいいけど使えるようになるのは何十年後か分からないよ?」
「リキ、がんばる!」
そういう問題じゃないんだけど、今更断れないし、暇だったので魔法を教えてあげることにした。
同時刻、洞窟の入り口付近にて
クロマは新たに手に入れた魔導書を読んでいた。肩に乗ったちーちゃんも熱心に読んでいた。新しい魔導書は大したものではなかった。そもそもゴブリンたちが手に入れられるレベルのものなのだから当然と言えば当然であった。クロマはその後もしばらく新しいものを読んでいたが、途中で読むのをやめ、古い方の魔導書を取り出そうとしていると少し遠くの方で何やら楽しそうな声がした。
声の方を見てみると、そこにはヒマリとリキといつの間にかいなくなっていたちーちゃんがいた! どうやらヒマリに魔法の使い方を教わっている(遊んでいる)ようである。楽しそうにしているちーちゃんを見てクロマはある出来事を思い出す
~ダンジョンに帰る途中の夜~
「今日は魚を買っておいたので魚にしましょう!」
とリイアがいい、その日の夕食はクシャで買ったヤマネと言う魚の塩焼きにすることにした。薪であぶられ、油が落ちているのを見ておいしそうと思った。実際に食べてみるとおいしかったので「もう一本食べたいと」催促すべくリイアの方を見たのだが、リイアは目線が動かなかった。目線の先にいたのはヒマリ達だった! ヒマリが目を輝かせて食べる様子を見て、リイアは微笑んでいたのである。その時私は初めて不思議な感情が渦巻いたのである。そして
リイアをヒマリにとられた!
と思った。リイアはかわいいものが好きである。『せやな』(リキ、ちーちゃん、フェニ)今まではいつもおいしそうに食べている私をかわいがってくれていたのに!
クロマは生まれて初めて嫉妬したのである。
~~~
そしてとうとうちーちゃんも取られた。
(貪欲な奴め!)
と思いヒマリをにらみつけるが、ヒマリは気づいていない様子であった。
(…)
一瞬力づくで奪おうかとも考えたが、すぐにやめた。そんなことをしたら間違いなくリイアに怒られる。
突然殺気を感じ、身の毛がよだつ。それに気づいたちーちゃんが不思議そうな顔をする。
「どうかしましたか?」
「……いや、なんでもない」
殺気はすぐに消えた。……気のせいだと思い、特に気にしないことにした。
でもヒマリに負けたままなのは許せない!
……さてどうしたものかと思い周りを見渡すと、新しく手に入れた魔導書が目に入る。
(確か……)
と思いながら、魔導書を読み返す。そして内心ガッツポーズをする。
クロマは新しい魔導書をもってちーちゃんたちのところに向かうのであった。
私がちーちゃんとリキと魔法の訓練(といいながらほとんど遊んでいる)と
「……ヒマリ。これあげる」
と突然クロマさんが私に本を渡す。私が理解できずに戸惑ってしまう。
「それは魔導書。しかも水の魔導書。私には合わないからこれ、あげる」
「……魔導書?」
「この本を使えば新しい魔法を使えるようになったり、今の魔法を強化できる」
そんなすごそうなものを私に渡していいのですか? と尋ねる。
「私はもう一個持ってるからそれはいらない。リイアたちは魔法を使わないから。魔法を使うあなたが持っていた方がいい」
「……ですが、私は魔導書なんて初めて見ますのでどのようにしたらいいのか分からないのですが……」
「今から教えてあげる。簡単だから」
(もう一押し!)
私がそう言ったら、ヒマリは笑顔で「ありがとうございます!」と言った。
(むっ……たしかにかわいい……)
そう思ったがすぐに首を振る。そんなことはない、私の方が可愛いと思い込む。
「えー僕たちの訓練は?」
とリキが悲しそうに聞いてきた。ちーちゃんも少し残念そうだったので
「私があとで教えてあげる」
と言ったらすぐに機嫌が直った。フフフっ、ちょろいな
そんなこんなで何とかちーちゃんだけは奪われずに済んだとクロマは思うのであった。
尚、ダンジョンに帰る途中のリイアはヒマリ達を見ていたのではなく、ぼんやりといつもの長考をしているだけなのであった。
もちろんリイアはクロマの勘違いに気づくことは永遠になかった。
そしてヒマリもそんな嫉妬に気づくことは永遠になかった。
彼女はそれに気づくにはあまりに純粋すぎたのである。
クロマのYAKIMOTI
次回、決戦……?