前哨戦は始まっている
ちーちゃんも加わり私以外の九人は楽しく会話をしている。一方の私は10人分の料理を作っている。大変だ~!
次にモンスターを雇う機会があるならば料理をできる子にしよう。うん、そうしよう。
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みんなで仲良くご飯を食べる。大人数で食べるとやっぱりおいしいね。一番心配なヒマリも問題なさそうで安心安心。
ご飯を食べている最中、カムイが何かを思い出したようである。
「……そういえば俺の長剣はどこにあるんだ?」
ちーちゃんの成長に驚いて忘れてた……
「長剣ですか?ちょっと待っててくださいね」
ちーちゃんは洞窟から長剣を取ってくる。そんな重そうなものも運べるのか! その剣をカムイは手に取って見る。
「思ってた以上にいい剣じゃないか」
「大丈夫そう?」
剣を軽く振った後カムイは答える。
「問題なし。ただ慣れるまでは時間がかかるかもしれん」
「……そういえば僕たちの武器はどうなったの?」
「ああ、それはな……」
「俺が作ってやる。材料は結構そろっているからな。いいもの作ってやるよ」
「ほんとに!僕ね魔法を使えるようになりたいんだ!」
「おれも鎧が欲しい!でも重いのは嫌だ。軽いのがいい」
「私も同じです。それと出来れば魔法以外の攻撃方法も増やしたいです」
「おうおうみんな好き勝手に要望だすんじゃないよ。こっちの身にもなってくれ」
ライヤさんは笑う。すまんライヤさん。この子たちはそういうことに疎いから許してやってくれ。
その後フェニとリキは私に訓練の成果を自慢し。ちーちゃんはクロマの魔導書に興味を示し。ヒョウリと残りの四人はダンジョンと外の世界について楽しく話すのであった。
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その様子を遠くから見ているモンスターがいた。
(やはりデル様の言った通りではないか)
そして静かに喜ぶ。これを知らせれば自分をもっと優遇してくれると。
彼は自分の配下にデルのもとに行って伝えるように命令した。
自分はボスに任命されたから下の階に行けないが配下に命令させればいいだけのことである。
彼は改めて様子を見る。誰も自分には気づいてない。
そしていい感じの獲物がいることも確認した。デル様とうまく交渉して自分のものにしようと思うのであった
しかし、彼は甘かった。……否、そもそも彼はこの戦いに参加できるほどの知能も実力を持ち合わせていなかった
「……なにしてるの?」
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「……虫けらが」
アランは目の前で真っ二つにされたゴブリンを見る。ゴブリンが堂々と階段を降りようとして我が疑わないはずがないだろう。
……さて、ゴブリンたちに動きがあったことが何を意味するか。
(……帰ってきたのか)
アランは異変に気付き、やってきたカリンたちに向かい命令する。
「カリン!コリン!二人の元に向かえ!ゴブリンたちに気づかれないようにな!」
背後から感じる強者の気配。首だけ何とか動かして振り返るとそこにはコウモリのモンスター。ただし普通の個体ではないのは一目でわかる。すぐに勝てないと悟った。
こうなったら……
逃げる!
俺はすぐさま全速力で走った。しかし走って数秒もたたないうちに
「どうした?腹でも壊したのか?」
「ひぃ!」
突然目の前にファイヤーバードが現れ、尻込みする。こいつもさっきのやつほどではないが、自分よりも強いだろう。
「フェニ。とりあえず殺さない程度に焼いてあげて」
やめろ! 俺をいじめるな!
「よっしゃまかせな!火炎吐息!」
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「あれ?もしかしてやりすぎたか?」
フェニは意識を失ったゴブリンを見ながら心配そうに呟く。
「いや、意識を失っているだけだね」
「弱くね?二階のボスだよな?」
「……同じ階のモンスターだと思うと恥ずかしすぎて死にたいですよ」
ちーちゃんはため息交じりに呟く。
「……なんかすまん」
やっぱりフェニは速くなっていた。もちろんちーちゃんも。私やヒョウリがいなくてもあの子たちはもう大丈夫そうである。これからも二人で競い合いつつ強くなっていけるだろう。
そんな親ばか感想は置いておいて。アランたち以外は全員集まっているし
「……作戦を考えることにするか」
この感じだとデル側にばれるのも時間の問題である。……となるとなるべく短期決戦が望ましいか。情報の差を利用するならば。
しかし、できるならこの三人の感覚がある程度取り戻すまでは待ちたいところである。それとゴブリンたちが来るまでは。ゴブリンたちは3~4日以内に引っ越してくるとのことなので早くて四日後になる。
「俺の仕事も忘れないでくれよ。ある程度のものを作るのなら五日は絶対にいる」(ライヤ)
「なら、7~10日後ぐらいになるがそれでいいと思うか?」
反対意見はない。決行の日時は決まった。
さて、それじゃあ詳しい内容について決めていくとしようか……
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一方そのころ、ダンジョンの八階にて
デルは進捗状況を確認しているのであった。
「どうですか、順調ですか?」
デルはオークの男の一人に尋ねる。尋ねられた男は豪快に笑いながら得意げに答える。
「もちろんですよ。三日もあればほとんど完成します」
「……よろしい。それが終わったら、各自武器や食糧を確保しておくこと」
デルはそう言って返事も待たずに自身が住むダンジョンの最下層である九階へと向かうのであった。階段を下りる途中、デルは一人静かに
「……懐かしい感覚だ。……といっても立場が逆転しているので同じ感覚ではないのですが……」
デルは思い出したのであった。
ダンジョンのモンスターがラスボスを倒しても、ラスボスである権利が勝利者に渡されるのでダンジョンは崩壊しない。
ラスボスにはある権利が渡される。それをめぐってモンスターを戦わせることでより強いモンスターとし、ダンジョン自身の強化につなげるのである。
自身は数か月前に初代ラスボスを騙し、自身がラスボスとなり、ある権利を手に入れた。あの時の才能を少しずつ取り戻しているのであった……
(次回はまさかののんびり回⁉)