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平穏な時代は終わりを迎える

登場人物紹介

リイア 本作の主人公(?)

創造者ダンジョンによって創り出されたモンスターの一人で自由意志をもつ、身長160ちょっとの人型モンスター。白っぽい桃色の髪をしている。種族は不明。女の子だが男の子っぽいところがある。能力は体の一部を武器化する。黒魔クロマとは偶然知り合う。時々長考する。

次回は多分クロマ

 私が五階の中央にある大きく開けた広間を横切って六階に降りようとしたとき、横から「オイ」と呼び止められた。

暇人か……

声のした方を見るとそこにはルヴァンがいた。


 ルヴァンはドラゴンモンスターであり、この階層のボスである。ドラゴンモンスターと聞くと強そうに感じるかもしれないが、こいつはドラゴンモンスターの中では最弱の種類であり、ぶっちゃけ見た目はでっかい爬虫類である(大きさは1メートルちょっと)私はこいつが大嫌いである。なのでめんどくさそうに

「……なんですか。急ぎのようでないならまた今度にしてください」

と冷たく言って相手にする気がないことを伝える。しかし、逆効果だったらしく、目線が自分の方が上になるようにわざわざ飛びながら

「フン。ドラゴンである儂に対して随分となめた態度だな」

と言い、わざわざ飛びながら私を見下すような目で見る。でもその顔に余裕はない。上から目線でものを言いたいのだろうが必死すぎる顔が余計に情けなく思えてしまう。

 大して強くもないにもかかわらず、傲慢な態度をとる。おそらく自分が最強の「ドラゴン種」だからだろう。自分がドラゴン種の面汚しであることも知らないで。


「お前、ここにいるならやってきた冒険者を倒しに行け。わざわざ、六階の秘密部屋の番人の仕事を全うする必要はないだろ」

とにやりと鋭い歯を見せ笑いながら言う。その様子はさもパワハラ上司が部下に何かを強要的に同意させようとしているようであった。でも、その顔は必死なせいで効果半減。下りたらいいのに……

 私は基本的に六階の秘密部屋にやってきた冒険者を返り討ちにするするのが仕事だ。私の役割、それは『特殊ボス』。ゲームの『隠しボス』みたいなものである。

 私はこのダンジョン内なら強い部類に入っている。少なくとも目の前にいる傲慢龍(ルヴァン)と同等、いやそれ以上はある。相手の冒険者がよほど強くない限り、私が向かえばより多くの被害が出る前に冒険者を倒せるだろう。

 ダンジョンについて詳しく知らない人が聞くとその方が合理的に聞こえるかもしれない。しかし、

「それなら、あんたもここでぬくぬくと待つ必要はないだろ。どうだ?私と一緒に行かないか?」

「くだらん提案をするな!さっさと行け!」

ルヴァンは絶対に動かない。

なぜならそんな簡単な話ではないからである。


 ほとんどのダンジョン内のモンスターの与えられた使命は『侵入者を殺せ』である。なので自由意志を持たないモンスターは躊躇することなく使命を全うする。たとえその身が滅びようとダンジョン内部ではその力がやがて吸収され、新たなモンスターが生み出されるのだから。しかし、自由意志を持つものは少し話が変わる。……たしかにダンジョン内部では自身が死のうと、その力で新たなモンスターが生み出される。しかし、そのモンスターが前と同じかどうかはわからない。それにそのモンスターに自分がなれるとも限らない(それにそもそも自由意志を持つかどうかも分からない)。つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 こいつも結局のところ自分が死ぬことを恐れているだけなのである。理由はそのうち話す……と思うがダンジョンの仕組みとして各階のボスモンスターを倒さなければ先に進めない。つまりこいつは冒険者が下の階層に行くまで隠れておく……なんて卑怯な真似はできないのである。


 私は今日こそはこいつを殺そうかとも考えた(別にこいつを殺してもこいつの力は吸収され、その分のモンスターが創られるのだから、大事にはならないし)しかし、力を吸収しその分のモンスターなどが創るにはそれなりの時間を要する。仮にでも冒険者が侵入してきているこの状況で仲間同士で殺し合い、戦力が足らずにダンジョンが攻略されて崩壊するなんて事態が起こったら私もこいつと同じぐらいバカ認定されてしまう。そんなことは絶対にあってはならない。

 私は右手に力を込めつつも

「分かった」

とだけ言って、言われたとおりに来た道を引き返した。


ルヴァンはその様子を見て、そっと口角を上げるのであった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 私が四階を再び歩いていると、前方から一人の人間が剣を持って走ってきた。不法侵入者だ!思った以上に進むのが早いと感じ、強者かと思ったが、その人間は私に気づくと

「みちをあけろー!じゃまをするなー!」

と必死に叫ぶ。その言葉と冒険者の表情に余裕はない。よく目を凝らすとその人間を二人のモンスターが追いかけていた。どこかで見たことがある。……あっ、ケンとミーアだ。ケンとミーアは私に気が付くと

「リイア先輩⁉なんでここにいるんですか⁉」

「リイア先輩!そいつ殺しちゃってください!残りはそいつだけです!」

「くるなくるなくるなくるな!」

なるほど。この男に余裕がないように感じた理由はそれか。おそらく仲間が倒され、暴走しているのだろう。

(……楽に死なせてやった方がいいな)

私はそう思い右手を横にし、戦闘態勢をとる。右手は私の意志によって変化し一本の剣となる。これは私の能力によるものだ。


 そうこうしているうちに人間との距離は五メートルもなくなっていた。人間はよくわからない言葉を叫びながら剣をがむしゃらに縦に振る。自由意志の持たない魔物ならばそれでも十分通用するだろう。

 しかし、普段から訓練している私やケンには通用するはずがない! 私は軽く左によけ、止まった隙だらけの人間の首を目掛け右手を振る。

「お前ももう楽にしてやる」

私はそう言って人間の首を切断した。人間はそのまま倒れて動かない。そこに、ケンがやや興奮気味に走ってくる。

「……やっぱ先輩すげえ!」

「それは認める。あの長考癖さえなければ、だけど」

「それは先輩の魅力でしょ!それより先輩はどうしてここに?」

「ああ、それはな……」

と言いかけたその時、二人の背後に三つの人間の輪郭が現れる。

「ヒャッハー!隙だっらけだぜー↑」

「避けろ!ケン!ミーア!」

突然三人の男が姿を現し、それぞれに襲い掛かる。私は戦闘態勢を解除していなかったので、間一髪不意打ちを防げたが、ケンとミーアは間に合わず、男達の剣によって斬られる。

 私は距離を取り状況を整理しようとする。目の前の男達は身だしなみや雰囲気などから推測するに『盗賊』だろう。おそらくだが冒険者にこっそりついていき、最後に宝を横取りしようとでも企んでいたのだろう。だが、冒険者が弱すぎたようだ。

 一方こいつらは強い。それよりも

「……ケン!ミーア!」

私は叫ぶ。しかし、二人は倒れたまま、返事もしなければ動くこともなかった。

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