(閑話)チビッ子三人の成長録
新章開始です!
ただしこの話はクシャ編の時のダンジョンの話です
リイア先生とクロマ先生が出て行ったあと
「……それじゃあ私はいったん四階に戻ります。私の仲間の訓練もしたいので。なにかあったら私のところに来てください。おそらく雪原にいるので」
ヒョウリ様は四階に戻られた。
「お前たちは侵入者が来ても無理に倒す必要はない。いざとなったら隠れろ。いいな?」
と言ってアラン先生もどこかに行ってしまった。
残ったのはおれとリキとちー助。
「……急にみんないなくなっちゃったね」
「どうする?」
おれは二人に聞いてみる。ちー助はすぐに
「私は自分で訓練を続ける。クロマ先生のそばに仕えるものとして、もっと強くならないと」
と答える。それに続いてリキも
「僕も!ヒョウリ先生の魔法がね!きれいで素敵だった!僕もやりたい!」
リキもその場でぴょんぴょんはねる。二人ともやる気なそうだ。……よかった。
おれは二人に覚悟を決めて二人にあることをお願いする。
「なあ、二人にさお願いがあるんだけど……」
~~~
おれは避けるのが苦手だ。全くできないわけではないがリキやちー助と比べると下手で手加減したリイア先生の攻撃も未だに避けきれない。
「相手の動きの癖や特徴を見極めて予測する。それがうまければ避けれない攻撃はほとんどない」
とリイア先生は言うが俺には「相手の癖や特徴」がよくわからない。今までは小ささと速さで十分避けれていた。でもリイア先生にはそれは全く通用しない。リイア先生曰く
「どれだけ的が小さかろうと速かろうと動きが予知できるならいつかはあてられる。そしてフェニはリキたちと比べると予知しやすいんだ」
「なんで予知しやすいですか?」と聞いたがリイア先生は答えてくれなかった。
「フェニの感覚もすごいけどじっくり考える能力も大切だからあえて答えは言わない。自分で考えて導き出してごらん」
あの後も考え続けたが、分からなかったのでヒョウリ様にも聞いてみたが
「リイアさんから答えるなと言われたので答えれません。ごめんなさいね…」
先に根回しされているようであった。さすがはリイア先生。
それからも悩み続けたけど分からなかった。
先生の言ったことを気にしないことにしようかとも思った。十分避けれるのだから。でも、おれは……
ちー助だけには負けたくない。
俺が同時に七体まで命令できるようになったころにはあいつは10体同時にできるようになっていた。
俺がある程度避けれるようになったころにはあいつは手加減しているリイア先生の攻撃を全部避けれるようになっていた。
あいつはいつの間にか魔法も使えるようになっていた。
その結果、おれだけの長所もなくなった。
おれはあの出来事からずっとちー助に負け続けている。おれは一階。あいつは二階。俺にとってちー助は因縁の相手である。目の上のたん瘤である。正直、嫌いである。
でもその才能は認めるしかない。俺より強いのは事実である。
だから……
~~~
「俺に回避の仕方を教えてくれ!頼む!」
余計なプライドは捨てる。勝つために必要な分以外はいらない。
「……えっ、いやだ」(ちーちゃん)
「そんなぁ……」
普通に即、断られた。俺が甘かったのか?俺がうろたえているとちー助はボソッと
「だってフェニの才能はすごいからさ。ただで教えちゃったらせっかくの有利がなくなっちゃうじゃない。フェニだけはずるいよ」
そういうけどさ。俺がじゃああんたに何ができるんだよ。何にも勝ってないんだぞ。するとリキは
「そんなことないよ。フェニの同時命令の才能はすごいよ!」
と必死にジャンプして励ましてくれる。……リキ
「……あんたの同時命令を私に教えてくれるなら考えなくもないけど」
「僕にも教えてほしいなぁ。僕は苦手だから」
「リキの回避も教えてよ。リキの回避すごく上手だから」
「いいよ!」
「俺も教えるから教えてくれ!頼む」
改めてちー助にお願いする。ちー助は羽を組みながら答える。
「……いいよ。私もいつか頼もうかなと思ってたから」
「よっしゃ!そうと決まれば早速やろうぜ!」
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この三匹の会話を茂みに隠れて微笑みながら観察しているものがいた。
(いい子たちじゃないか)
自分たちの得意分野を教えて苦手なことを仲間から学ぶ。リイアが目指していたことである。
先生がいなくとも自分たちで成長できるようになる。
常に面倒を見れるわけではない。特に今みたいな状況だと。
(さて……と)
俺もちびっ子たちに負けないようにしないとな。
そう思い傍らに置いていた弓を持ち、訓練を始めようとしている三匹のもとに向かうのであった。
「俺『私』(僕)達も頑張るぞ!」