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モンスター売買

少しですが流血と残酷……?なシーンがあります。苦手な方はこの話を読み飛ばすことを推奨します

それと主人公が若干暴走します

「二か所共に大歓迎だってよ!これで俺たちも安全に中に入れるぜ!」

翌朝もまた武器屋モタに行くと、開口一番にライヤは言った。

「まずは一つ目の問題はクリアか。いい調子ですね」

私はその報告を聞いて安堵する。もし、ここで断られるといよいよ手段を選べなくなる。

「それじゃあ予定通り私とライヤさんで店に行って」

「……私はここでクラモさんとお留守番」

「本当にお気をつけて」

「そっちもな。まだ、安心できない」(ライヤ)

相手は言ってしまえば裏組織である。そんな人たちの言葉を安易に信用なんぞできるはずがない。もしかしたら罠かもしれないのだから。

~~~

 私はライヤに案内してもらいある店に入る。一見するとただの防具屋なのだが……。そんな疑問を抱く私のことは気にせずにライヤはガタイの良い店員に声をかける。

「試着室を使わせてほしい」

「お客様。どの防具を試着いたしますか?」

「防具はいらない」

「……さようですか。少々お待ちください」

店員はやや首を傾げながら店の奥へと消えていった。なにがなんだかわかっていない私に「この店は表向きは防具屋で裏でモンスター売買をしているんだ」と教えてくれた。


 そんなことをしているうちに先程の店員は戻ってきて

「もしかしてライヤ様でございますか?」

「そうだ。さっそく色々と商品を持ってきたから試したいんだがいいか?」

「もちろんです。……それとお連れの方はお手伝いとかでしょうか?」

「ああ。こいつはモンスターを見る才能があってな。もしいいやつがいたらついでに買おうかなと思って連れてきたんだがまずかったか?」

「なるほど。それなら大丈夫です。どうぞ右から二つ目の試着室に入ってください。中に仲間がいますので」

……罠を張っているとは思えない。……いや、あいつらはプロだ。多分私じゃ見抜けない。私はライヤの後ろをついていく。最大限後方に警戒をしながら。


 私とライヤが試着室に入ると後ろの鏡が動き、奥の部屋へとつながる石造りの通路ができた。暗い無機質な通りを慎重に足を進める。ほんの数メートルしかないのに私はとても長い時間歩き続けたように感じた。

 奥の部屋に入るとそこにはスキンヘッドで耳にピアスをつけたいかつめの男が机に足をかけながら椅子に座って待っていた。

「あんたがライヤか。安心しろ。俺はあんたらを商品にする気はさらさらねえ。長期的に見ればどちらの方が得かなんてサルでもわかる」

男は自己紹介も挨拶もせずに言い放った。

「俺がライヤ。改めて試作品の装着に協力してくれたことに感謝する」

「そういうかしこまったものはいらん。この世界じゃ似合わねえからよ」

「それなら来て早々だが、案内してくれ」

「あいよ。ついてきな」

男はそう言ってだるそうに立ち上がり、床に散らばっているごみを蹴飛ばしながら奥にある階段を下りていく。私たちは黙ってついていく。

 階段をしばらく下りていると、突然金属同士が激しくぶつかる音がした。私とライヤが何事だ⁉ と困惑していると前の男は

「まったく、うるさいやつらだ。いくら騒いでも無駄だっていうのによ。こんな奴らを買いたいやつがいるなんて世の中分かんねえな…」

と頭をかきながら呟いていた。私は覚悟を決めて階段を下りて行った。

~~~

 私は眼前に広がる光景を見て唖然とした。両手に鎖をつけられ、壁から離れられなくなっている魔物。端の方でうずくまったまま動かない魔物。檻に入れられている獣の魔物。特殊な水槽に入れられて出られずにいる魚の魔物。

 壁や床に広がる血痕。やせ細った魔物たち。ひどいものは全身鎖で巻き付けられしゃべれないようにしてあった。ライヤもこの状況を見て動けずにいた

「ここにいるのが戦闘用として買い手が多いモンスター。これの奥にあるのが人型のモンスターの部屋。この二つがお願いしたやつ。終わったら勝手に戻ってこい。俺は上の部屋で懸賞付きのナンバープレートでもしとく」

男は私とライヤをおいて上の部屋に戻っていった。

~~~

 私とライヤが動けるようになるには数分の時間を要した。

「これなことが許されているのかよ…」

ライヤはおそらく無意識にそう口にした。私は慌ててライヤの肩をたたきここが敵地のど真ん中であることを伝える。絶対に油断はしない。

「……俺がやっておくからお前はその間に見といてくれ」

「分かった」

私はライヤにバックを渡す(装備などを入れていた)そして私は壁から離れられないモンスターの一匹に話をしようと試みる。

「私はモンスターだ。少し話せないか」

すると目の前のモンスターは私をにらみながら

「はぁ?あの男の仲間ならモンスターだろうと話しなんぞする気はない。しゃべりかけるな!」

「私たちはあの人の仲間ではない」

「ならなんでお前らは捕まらねえんだよ!下手な嘘をつくな!」

「たまたま利害が一致したんだ!いいか」

「何を言おうが無駄だ!大体な『お前と俺らが同じモンスターだから話せるどろ!』って態度が気に入らないんだよ!俺らのこの状況を見て、本気でそう思っているのか?」

「私とあんたらで何が違う?客と商品の違いか?」

私の言葉は少しずつ強くなっていく。目の前のモンスターは「フン」と鼻を鳴らし

「お前みたいな温室育ちのモンスターと辛酸をなめ続けている俺たちがおんなじ?笑わせるね。傷の一つもついていないじゃないか」

周りのモンスターもそれに頷く。私が温室育ち……⁉ ありえない!

私たちの過去も知らないで!


(これは……)

これは想像以上にひどい。商品なんだからもう少しましな待遇だとかと思っていたがこれだと会話すらできないじゃないか。

 申し訳ないことをしたな。と俺は思った。俺の見立てが甘かった。完全に無駄足であった。俺はリイアの方を見る。リイアは黙ったまま壁の方に向かう。……? 何しようとしてるんだ? そう思ってみてみるとリイアは突然頭を石壁に打ち付け始めた。

「リイア⁉なにしてるんだ⁉」

俺が聞いてもリイアは返事もせずに壁にぶつけ続ける。きれいな顔から血が流れ出る。止めなくてはならない。しかし、足が動かない。彼女の気迫に震えて動かない。いつのまにかほかの魔物も騒ぎ、動き回るのをやめて呆然とその姿を見続けるのであった。

 彼女が壁に顔を打ち付ける音だけが聞こえる。息を切らしている音だけが聞こえる。彼女は20回近くそれをした後、「……となんはつ」と呟く。


「あと……何発で、何発で……私とお前は同じになる!さっさと言え!」


 モンスターたちは何も答えない。否、答えられないのである。

「……いかれてやがる」

リイアに話しかけられたモンスターは声を絞り出すようにつぶやく。

そして振り向いたリイアと目が合って身の毛がよだつのであった。

そして、自分が愚かであったと悟ったのであった。話を一向に聞かないで決めつけていた自分を悔やむのであった。

「……もういい。もう、十分だ」

モンスターは今にも泣きだしそうなほどか弱い声で言うのであった。


 私は歩こうとしたが足元が定まらず崩れ落ちそうになったが、ライヤに支えられ、なんとかなった。

「無茶をしすぎだ!これを食っとけ」

とバックに入れていた薬草を私に食べさせようとしたが私は断った。

それだと意味がないし今のままの方が冷静でいられる。

 私が壁に頭を打ち付けた理由はモンスターのこともあったがそれよりも自分が冷静でいる為であった。荒治療だが、こうでもしないと自分が冷静でいられないことは()()()()()で知っている。私も成長してるのだ。

「さて、改めて聞くが私と話す気はあるか?」

目の前の魔物は震えながらうなずく。

ようやく本題に入れる。

本題に入るまでが長すぎるんだよ全く……

リイアの計画

『モンスター用の武器屋なのでモンスター商人達と取引したい』という建前を使って侵入してます。今後の取引のことを考えるとライヤ達には手出ししにくいだろうと考えたのです

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