急募! ゴールドの使い方
少し短いですがきりがいいので
翌朝、私たちはとりあえず武器屋モタに行くことにした。
店はまだ開いていないが(そもそも店として開いているのか怪しいところだが)「いつでもここにきていい」とのことなので建付けの悪い扉を音を立てながら開ける。
「……こんなに朝早くからどうしたんだ?」
ライヤさんは鉄を打つ手を止めて私たちに向かって言う。
「実はですね……」
ゴールドがあまりに余っている現状をライヤさんに伝え、何かに使えないかと相談しに来た旨を伝える。……やってることが成り上がった貴族みたいでなんかちょっとやだなぁ……
「別に無理に使う必要もないだろ」
その通りだと思います。
「それもそうなのですが、次に使える機会があるのかも微妙ですから、革命のための費用としてほかに使い道がないのかと思案しているんですよ」
「武器や防具はライヤさんのおかげで何とかなりますし食料もそれほど必要ないですし」
「それなら傭兵でも雇ったらどうだ?食料、武器があるならあとは人員だろ」
傭兵か。確かに強い仲間はほしいかも。だけど……
「……そういいますけどライヤさん。モンスター同士の小競り合いの依頼を受ける人間がこの世にいますか?どんなに割が良くても私は嫌です」(クラモ)
奥からやってきたクラモさんはライヤさんに正論パンチをする。
しかし、一方のライヤさんにはあまり効果がなかったようで
「そんなことはわかってる。それならモンスターを雇えばいいだけだろ」
たしかに! ……ってそんな簡単に言いますけど魔物を人間のお金を対価にして雇うって普通に考えてかなりの難題だと思いますよ。私らだってゴールドの価値はここに来るまではほぼなかったのですから。使えないゴールドなんてほぼゴミですから。
「私だって行き場がなかったところをあなたに雇われただけであってお金が原因じゃないですし」
「……でも強いモンスターはほしい。戦力はまだこっちの方が少ない。それに革命中や革命後すぐに冒険者とかが来ると不味い」(クロマ)
「でもそんな都合のいいモンスターを探すとなるとどれだけ時間がかかるかわかりませんよ」
「何の当てもなければな。お前らはモンスター売買を知ってるか」
ライヤさんの言葉に全員の動きが止まる。
「最近この街でも話題になっているんだ。いくつか店っぽいものの目撃情報もある。俺の姉がそう言ってた。気をつけろって」
「そこで商品になっているモンスターは子供のモンスターだったり、人型のモンスター、優秀な能力を持ったモンスターだったり色々だ。だが、共通して言えることは奴らは一生自由になれない。たとえどこかの人間に買われようが買われまいが鎖をつけられ権利などなく、欲望のために使われる」
その後も商品となったモンスターの末路の話などを続ける。特に悲惨なのはたとえ自由を手にすることができたとしてもその時には壊れてしまっていることがほとんどらしい。身体的にも精神的にも。
「……信じらんない!」
クロマもいつの間にか魔導書を読むのをやめてライヤの話を聞いていたようだ。
「それでだ。たしかにモンスターを金で雇うのは難しいかもしれないがモンスターを自由で雇うことはできるんじゃね?ってわけ。ただ、俺たちも傭兵として雇うわけだから待遇的にどうなのか?とも思うが……」
「私は捨て駒が欲しいわけではないし別に無理はさせない。相手の意思を聞いて決めるつもりだ」
それに自分から協力してくれるモンスターのほうが戦力になるからな。傲慢龍みたいなやつは結構役に立たない。下手すれば裏切りそうだし。
私たちは戦力が欲しい。モンスターは自由が欲しい。お互いの利害が一致するのならば、案外悪くないのかもしれない。しかし……
「……でもどうやってモンスターを買うのですか?私ら全員モンスターですよ?店に入った瞬間に捕まりませんか?」
「代理の人間でも雇えばいいんじゃない?」
「……お前、さっき『誰がモンスターの小競り合いの依頼を受ける人間がどこにいる?』って話をしただろうが」
「あっ……」
ライヤさんの勝ち……クラモさんが勝手に自滅しただけか。
「ただ、最終手段としてはそれしかないように思えるけど」
私たちは頭を抱えて悩む。ほかに何か方法はないのだろうか?
店にこっそり侵入……はダメだな。人間にはなれないし。人間……いやどうにかして私たちがモンスターであったとしても店に入れる手段はないのだろうか。
何か使えるもの……。だめだ私たちが持っているのはゴールドと薬草と魔導書…いや、待てよ……?
私は周りを見渡す。……いけるんじゃない? この方法なら!
「私たちにはすごいものがあるじゃないですか!ーーこれなら私たちも店に入れますよ!」
「…リイア天才」
クロマは文句なしのようである。ほかの二人も私の案に賛成してくれた。
「よし!それじゃあすぐに計画に移ろう!」
リイアの考えた計画とは…?