黒魔は愛し、商人せこし
ほとんどクロマが主役のほのぼの回
登場キャラクター紹介
ガスロ
正体不明、目的不明、年齢、種族、性別不明…と謎だらけの商人
ガスロマスクをつけている理由は変な奴に絡まれたくないからだそう
(そのせいでしょっちゅう不審者扱いされて、傭兵やらに事情徴収をお願いされる)
不気味な見た目だが意外といい人である
次に登場するのはもう少し後
私は今、クシャの「商人ロード」を歩いています。武器屋と防具屋を探しつつお店を見て回っています。種類が多すぎます。食べ物屋台、雑貨、家具、肉、魚、野菜、果物、よくわからん鉱石、胡散臭い骨董品、洋服屋などなど。ただ、いくら探しても防具と武器屋がない。なかなか見つからないなぁと思いつつ歩いていると、私の袖をクロマが引っ張る。
「……っと、どうしたんだ?」
「……あれ。食べたい」
指さしした先にあるのは店の前に長椅子と和風な傘が置かれているのが特徴的な『茶屋』と書かれたところにある三色の丸い物体が棒で刺されたものであった(三色団子)……たしかに私もハラヘッタ。
私とクロマと見つめあう。
「食べるか」
ということでちょっと休憩。
「すみません。これください」
「三色団子かい?ちょっと待っててね」
店主と思しき人物は慣れた手つきで団子を二つ取り、
「40ゴールドね」
私たちはお金を支払い、店の前にあった長椅子に座って団子を食べようとする。
……買ってから気づいたが、これどんな食べ物なんだ? 聞いときゃよかった。
私もクロマも一口目は先っぽにあるピンク色の玉を少しかじる。
「「おいしい!」」
残りのピンクの玉を口の中に放り込む。何とも言えない触感っと甘さが最高においしかった。
「この白いのも、おいしい」
そう言いながらクロマはすでに二つ目の玉も食べ終えていた。早っ!
私も二つ目をたべる。これもおいしい! これをダンジョンのみんなにも食べさせてあげたいな……と思いつつゆっくり食べていると、どこからとなく感じる視線。私はふと隣を見る。どうやらクロマらしい。クロマはすでに全部食べ終えている。そしてその目線の先にあるのは……。私はまだ残っている団子の櫛を動かす。それに合わせてクロマの目線が動く。面白くなったのでもう少し遊ぶ。……猫かな?
遊び終えて食べようとするとクロマはしょんぼりとした。
食いずれえ……
「ほしいのか?」
と分かりきっているが、一応聞くと、クロマはこくりと頷く。普段自分から意思表示することなんてめったにないので、それほどおいしかったのだろう。
「……しゃあねえな。やるよ」
と言って櫛をクロマにやると、最初は遠慮していたが、その櫛を取って「……あいがと」と恥ずかしそうに言って食べる。ただし一口で。もうちょい味わえと思っていると
「嬢ちゃん優しいな。こいつらもやるよ」
と先程の店主が茶色いどろっとしたものがついているものを一本ずつ渡したのである。
「……?」
「いやぁ、嬢ちゃんたちがおいしそうに食ってるから客が急に増えたんだよ。見てみな」
……ふぇ? さっきまでは誰もいなかったのに10人以上並んでいますやん。店主はニコニコしながら
「宣伝のお礼だ」
すると客の一人が店主に向かって
「オイ!そう言ってみたらし団子も宣伝するつもりだろ!」
「ありゃ、ばれたか」
店主は大袈裟口を開けてに驚いたような仕草をする。
そういうことですか。なんだかちょっと残念な気がした。
一方のクロマはそんなことは気にせずにおいしそうにニ本目を食べるのであった。
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「ありがとうございます!」
「……ありがとう」
「いいって!こっちも利益が出てるんだからさ」
「それと……その、一つ聞きたいことがあるんですけど」
「なんだい?応えれる範囲のもので頼むよ」
「武器屋と防具屋を探してるのですが見つからなくて、どこにあるか知りませんか?」
「ああ、あんたらこの街に初めてきたのか。ここは商人ロードだから武器屋とかはないんだよ。もう少し行った先で右に曲がると冒険者ロードがあってそこに行けば探さなくても見つけられるよ。なんだ?あんたらもしかして冒険者なのか?」
違うけど一応そういうことにしておく。
「最近はこんなにかわいい子が増えたのか?昔は女の冒険者なんて言ったら筋肉バカかインテリ系の美しい女性みたいなやつがほとんどだったのによ。時代は変わったねぇ……。それは置いといて、こんな答えで大丈夫か?」
「大丈夫です」
「そうか、それじゃあまた来いよ!次来た時もサービスしてやるからさ!」
店主の人は親指を立てる。それを聞いていたのか先程の客は言う。
「お前!油断も隙もねえな!」
「なんだい、店主の特権にいちゃもんつけるのかい?あんたに売るときだけ、値段倍にしてもいいんだぜ?」
「うぐぐ……」
私たちは愉快な茶屋を後にし、冒険者ロードを目指すのであった
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冒険者ロードは商人ロードとはまた違う活気を帯びていた。店の傾向も少し変わっている。武器屋や防具屋が数多く並んでいる。私たちはその中の大きめな店に入る。店に入ると眼鏡をつけた年老いた(小人?)がいた。
「いらっしゃ……ここは武器屋だぜ。なんであんたらみたいな嬢ちゃんがいる?」
……いたらだめなんですか?
私はいろいろ言いたいことがあったが、ぐっとこらえる。
「売りたいものと、聞きたいことがあってここに来たのですがダメでしたか?」
「ああ、冷やかしじゃないのなら構わん。それで売りたいものは?」
防具一式と武器を二つだけ出す。一気に何個も売るのはさすがに怪しまれる気がしたので自重した。
「……おお、どれもそれなりのやつだな。いったいどこで手に入れたんだ?」
「ダンジョンです。せっかく手に入れたんですけど、防具は大きいし武器は私たちに合わないので売りに来ました」
「なるほどな。……てか、あんた冒険者なんか」
「よく言われます」
あまりそういうこと言わない方がいいと思うのは私だけ?
「そうか。でこいつらの買取だが、全部まとめて5080ゴールドでどうだ?」
「……」
数時間前
「いいですか?この世界の商人と言うのは結構下劣な生き物ですからね。……私にもブーメランが飛んできますが気にせず続けます。最初はほとんどの場合低い値段で買って高い値段で売ります。ですから、少なくとも一回は交渉したほうがいいですよ。面倒と思われるかもしれませんが、そうしないと商人は調子に乗ります」(個人の感想です。決して全員がそうだとは言ってませんし思ってません)
「……あきらかに少ないと思うのですが。全部そろっているんですよ」
「なるほど。そういわれると困りますね。……それなら5980ゴールドでどうですか?」
「端数」
「わかりました6000ゴールドでいいですか?」
「……まあ、それでいい」
っということで買取成立。私は6000ゴールドを受け取る。現在11400ゴールド。
「それと一つ聞きたいことがあるのですが」
「なんだ?」
「この辺りでモンスター用の防具や武器を作っている店を知りませんか?」
「モンスター用?…いくらここでもないんじゃないかな。王都に……いや、一か所だけもしかしたら売ってるかもしれん。武器屋モタ。この通りの端の方にある店だ。ただ、少々変わっている店でな。あんまりお勧めはしないんだが、モンスター用の武器がありそうなのはそこぐらいしかこの街にはないな」
「そうですか。教えていただきありがとうございます」
そうして私が店を出ようとすると、私と店主が話している間、店内のものをあさっていたのだろうか、クロマが
「……これ、なに?」
と聞くのである。クロマが持っていたのは……本?
「ああ、そんなのもあったな。それはな、なんだ胡散臭い魔法使いがな素晴らしい魔導書があるから買ってほしいって言われて10000ゴールドで買ったんだが、買い手がつかなくてな。俺のダチの魔法使いが言うには『この魔導書は変な文字で書かれていて読めない。多分だまされたんだよ』だってよ。俺としたかとがまんまと騙されちまってよ。買い手がつきそうにもないから放置していて忘れてたよ」
「……これ、いくら?」
「なんだ?買ってくれるのか?正直ごみが減るからただでもいいと言いたいが、一応商品だしな100ゴールドでどうだ?」
「リイア、これ買う!絶対!」
「……ええ?それ、ただのごみじゃない……」
と言ったが、クロマは勝手に100ゴールドを店主に渡す。店主は私に「いいのか?」と目配りするのだが、
「……まあ、100ゴールドならいいですよ」
と言って、購入するのであった。
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私とクロマは店を出る。私はため息、クロマは上機嫌であった。
「クロマはそういうよくわからんものを集めるのが好きなのか?」
「違う。ごみはいらない。そしてこれはゴミなんかじゃない!」
さっきもちょっと思ったけど明らかにクロマのテンションがおかしい。
「私、この文字読める。そしてこの本、本当に魔導書」
クロマはそう言い切るのである。さすがにわたしも半信半疑である。クロマが嘘をつくとも思えないが、店主の話も間違いないと思うのである。
(ただまあ…)
クロマは私の前を上機嫌に歩いている。
100ゴールドでルンルンなクロマが見れるのなら案外悪くないのかもなと思うのであった。