10話 ダンジョン都市クシャ
この話からしばらく新キャラが登場するので次回からはまた登場キャラクター紹介を勝手に再開します
私たちはついに街に到着した! 今は町に入るために列に並んでいる。
「……人が多い。大丈夫かな」
「まあ、いざという時は逃げる。いいよな?」
クロマは答える代わりに黙ってうなづく。そんなことをしていると突然
「うげ!大行列じゃないか……」
「「……!?」」
ガスロマスクをつけた不審者!? が私たちに気づかずに横入りするように列に並ぶ。
「どうしよう。声をかけたくない」
「……私も嫌だ」
二人で首をブルブルと振りつつ様子を見ていると不審者と目が合った気がした。
(気づいた⁉……いや、気づいてない。気づいてないよ……な?)
「……ありゃ、もしかして先に並んでおられましたか?すみません気づかなくて」
「気づいてる!」
「ちょ、そんなに怖がらないでください。私はガスロ。普通の商人ですから!不審者じゃないですから!」
数分後……
「……なんだか」
うん。何が言いたいのかは分かる。
明らかに避けられている。
私たちの前後の間隔が他と比べると明らかに広い。絶対怖がってますやん。
「いいじゃないですか。広々としている方が」
ガスロは呑気に答える。商人って怖がられたらいかんのでは?
「そうかもしれないですけど。私たち、できるだけ目立ちたくないんですよ」
「そうですか。たしかにモンスターはなるべく目立ちたくないですよね。分かります。分かります」
「そうな……!?」
私とクロマは慌てて距離を取る。こいついつから気づいてた⁉
「ちょちょちょっと!そんなに警戒しないでくださいよ!私は普通の商人ですって!戦闘なんてできませんから」
信用ならねえよ! あんたのその見た目と言動が!
「そもそもですね。この街はモンスターであろうと人を襲わないのであれば『問題なし』ってスタンスなんですよ。現にあなた方の正体がばれても攻撃しようとしている人が誰もいないじゃないですか!」
そういわれて周りを見渡すと何人かは私たちに気づいているが警戒しているだけで手出しはしにこない。
「私もこんな見た目なのに特に何も言われていないじゃないですか!…たまに不審者と思われて傭兵たちに取り調べを受けますが…」
「じゃあはずせよ!そのマスク!」(全員)
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「すみません。あなたがたがモンスターと知られたくない理由があったかもしれないのにこんなことを言った私があほでした」
「いや、いいですよ。むしろそうだと知れてよかったです。モンスターと人間が共存しているなんて知らなかったですから」
……というわけでマフラーを外して普通に話しています。
「なるほど。そのかんじですとこの街についてもあまり詳しく知らないのではないでしょうか。お詫びにいろいろ教えますよ。これでも商人なのでそれなりの知識がありますから」
ガスロのお言葉に甘えていろいろと質問をする。この街の特徴。お勧めの店。泊まれる宿など。最後に
「モンスター用の武器や防具を売っている店は知りませんか?」
「そうですね。……すみません。私は武器や防具に関してはかなり疎いのでわかりませんね。この街にある武器屋や防具屋の人に聞けばいいと思います。ただ、あまり期待しない方がいいと思います。従魔のための武器屋はあるそうですが、需要が少ないのでね。それこそ王都に行かないとないかもしれません」
ありゃりゃこれは相当な長旅になるかもしれませんな。
「そうですか。ありがとうございます」
「お気になさらず!それはそうと、あなた方なら注意しておいた方がいいかもしれませんね…」
「……モンスターの売買などが最近話題になっているんですよ。優秀なモンスターもそうですが、あなた方みたいな人型のモンスターの売買が多いのですよ。噂じゃこの街にもあるそうですので、そのマフラーをつけておいた方が安全かもしれませんね」
「……なにそれ。気持ち悪……」
「私のところにもお誘いが一度来ましてね。まあ、お断りしましたけど。モンスター売買ってグレーゾーンですからね。それもアウト寄りの。さすがにその世界に踏み込む勇気はありませんでした」
と見た目はすでにアウトなガスロは言う。
「もし、また何かあれば私のところに来てください。しばらくこの街に滞在しますので。その時はできる範囲でお助けします」
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街に入る前に疲れた。新情報と出会いが多すぎた。…っとそんなことばかし言ってられないな。私らには時間がないのだから。
「一人30ゴールド」
と門番の人に言われたのでそれを支払い中に入る。すんなりと中に入れたことに少々驚いた。本当にモンスターでも問題なく入れるんだな。
「……すげえ」
門を抜けると目の前に並ぶのは大きい道とその両脇にあふれんばかりの店。
ダンジョン都市クシャ。この国で五番目に大きな都市であり、唯一の内陸部にある大都市である。内陸部の村の商品は一度ここに商人たちによって運ばれ、商人たちによって売られる。また、ここら辺には大小さまざまなダンジョンがあり、冒険者たちの数も多い。
「これ、全部に店を回ったら何日かかる」
「……一か月以上はいるね。多分」
私たち二人が呆然と立ち尽くしていると後ろから
「全くあの門番は私が商人ギルドのカード持っているのになんで事情徴収するのさ……」
と文句を言うガスロさんがやってくる。
「どうですかお二人さん。ダンジョン都市クシャはすごいですよ。一言で表すなら混沌ですね。王都の清潔な雰囲気とは対極に位置します」
と言いながらふっふっふと笑う。やっぱこの人怖いよ。不審者だよ。
「それでは、縁があればお会いしましょう。さらば!」
と言って、ガスロは闇に消えてった。……???
「……やっぱりあの人普通じゃなかったか」(クロマ)
クロマは最初から気づいていたようであった。言ってよ、それ。
ガスロさんは今後もたまーに登場します
次回はクロマが可愛い?