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王子は求めた、誰もが義務を果たすことを

 城を出た王子は、目的もなく足を動かしていく。

 付き従う者はいない。

 パーティでの蜂起を行った仲間はいるが。

 それらも全員が付き合ってくれてるわけではない。



 侯爵令嬢や男爵令嬢、国王の思惑。

 それらへの反発から決起したのは確かだ。

 しかし、目標を達成すればあとはそれぞれの好きなように行動していく。

 王子の思惑にのって行動した者達も、それぞれの目的がある。

 卒業パーティで事を起こす所までは、その目的に沿っていたので協力もした。

 しかし、終わればもう用はない。

 そこからはそれぞれの望むままに行動していくだけだ。



 それでも何人かは王子と行動を共にした。

 連絡を取り合う者もいる。

 その思惑もまた様々だ。

 王子という身分や立場に関係なく、一個人として王子に好意を抱いてる者。

 今後の活動・行動のために、王子という旗頭を求めてる者。

 こういった様々な思惑が王子の周囲で渦巻いてる。



「しょうがないか」

 王子という立場がどうしてもつきまとう。

 様々なものを引き寄せる。

 やむない事と諦め、受け入れるしかない。



 ただ、国政に手を出すことは避けた。

 それなりに有力な貴族からも求められているのだが。

 いかに王子と言えども実権はもう無い。

 あるのは王子という立場と、権力のない権威くらい。

 それらを上手く扱えるとは思えなかった。



 それに。

 王子としての、王族としての高貴な義務。

 これにもう縛られたくなかった。

 逃げ切れるものではないかもしれないが、今は放り出しておきたい。



 なによりだ。

 自分だけ義務を背負うのは不平等だと感じている。



 下賎の義務。

 王子が考えてる事だ。



 王侯貴族などの有力者に義務があるという。

 ならば、一般庶民にも義務があるはずだ。

 たとえ権力や権威、地位や身分、能力に才能が無くてもだ。

 守らねばならない義務があるはず。



 それをこなしてる者がどれだけいるのか?

 高貴な義務、力持つ者だけに負担が強いられるべきなのか?

 それはおかしいと王子は考えていた。



 立場や地位や身分には義務が伴うという。

 ならば、一般人・庶民・平民・国民といった立場や地位・身分にも義務があるはずだ。

 民草は民草で、守るべき事があるはず。

 それを遂行してる者がどれだけいるだろうか?



 義務だ何だというなら、まずはそう言ってる者が己の義務をなしてもらいたい。

 高貴な義務を求めるなら、下賎の義務を果たしてもらいたい。



 それでこそ釣り合いがとれるというもの。

 この義務が果たされないうちは、王子は己の立場や地位を用いるつもりはなかった。

 高貴な立場による義務を負わせられないようにするために。

 この義務のせいで、無駄な負担を背負い込まされそうになったのだ。

 暫くは義務など捨てておきたい。



「あんなのと一緒になるくらいならなあ……」

 かつての婚約者を思い出す。

 様々な暗躍をしていた侯爵令嬢。

 性悪女というだけでは済まされない凶悪な存在だった。

 あんなのと一緒に暮らすなどたまったものではない。



 側に寄ってきた男爵令嬢もだ。

 己の立場を利用する狡猾さを持ち合わせていた。

 これが側室、そこまでいかなくても近くにいるだけでも面倒だ。

 友人や庇護対象となっていた事から、長く付き合う可能性はあった。

 そうした接点があるだけで様々な面倒に巻き込まれただろう。



 それを飲み込み、上手く操りたぐっていく。

 そうしろというのが国王や王妃の意向だった。

 統治者や為政者としてはまっとうな考えなのだろう。

 だが、その為に費やす労力があきらかに無駄だ。



 支払う必要の無い対価。

 本来なら発生しない代償。

 それを費やさねばならないという事が、とてつもない無駄だ。

 そうしなければならないという時点で、国はもう終わっていた。



 確かに現状の悲惨な状況は王子が引き起こしたと言えるだろう。

 だが、それはきっかけを作ったというだけの事。

 問題は既に国の中に山積みになっていた。

 放っておいても、いずれは崩壊しただろう。

 ならばいっそと、今この時に問題を表に出した。



 悲惨な事になるのはわかっていた。

 今まで抑えつけていたものが解き放たれるのだ。

 堰を破った洪水のように国を蹂躙していくだろう。

 それでも構わなかった。



 問題というのは、解決しないで後まわしにすればするほど大きくなる。

 それこそ本当に解決出来ないほどになる。

 そして問題はそうなってから解き放たれる。

 どれだけ抑えつけていてもだ。

 その時には災害としかいいようのない損害をもたらす。



 そうなる前に問題を表に出していった。

 被害は確かに出る。

 だが、まだそこまで大きくはない。

 対策も対応も出来ないほどではない。

 ならば、今のうちに放り出した方がマシだ。

 損害も損失も、最悪よりはマシになる。



 そうして義務を背負い込んでもらうつもりでもあった。

 王子だけではなく、国全体に。

 それこそ全ての貴族と全ての国民に。

 高貴な義務だけではない。

 下賎の義務もまっとうしてもらうことにした。



 今この瞬間の押さえのためだけに、王子に義務を強いてもらいたくはなかった。

 我慢を強要し、しなくて良いことをさせられたくはなかった。

 問題をとりあえず抑えるため。

 その為だけに、侯爵令嬢や男爵令嬢のような女を押しつけられた。

 ならばと、王子は全ての面倒を自分以外の者達全員に押しつけた。



 義務。

 それは生け贄である。

 誰かに苦痛と苦難を押しつけるものだ。

 それによって、他の者達は面倒を避けることが出来る。

 その無責任さ、いい加減さ、我が儘ぶり。

 それを王子は見逃すつもりはなかった。



「滅びてしまえ」

 国が背負い込んできた面倒だ。

 それを今、国全体が背負ってる。

 この面倒の重みに耐えられないというなら、さっさと死んでしまえば良い。

 滅びてしまえば良い。



 国全体でも背負いきれない重み。

 耐えがたい苦難。

 それを他の者達は王子に押しつけたのだ。

 その代償は支払ってもらわねばならない。



「がんばれよ」

 下賎の義務の遂行を。

 そう願い、王子は落ち延びた先で生きている。

 仲まである有志達と共に。



 この先、国がとことんまで落ちぶれた時。

 その時に王子が動き出すつもりだった。

 面倒と問題が全て表に出て、どうしようもないほど国全体を覆ってから。

 あらゆる問題が出尽くして、もうこれ以上悪くはならないとなってから。

 それまでは引きこもって様子を見る。



 荒れに荒れていた国だ。

 大臣達の横暴など関係ない。

 表面に出てこない隠れた部分で国は壊れていた。

 大臣達によってそれが表に出ただけである。

 こうした問題を表に出し、全てが出尽くさなければ先はない。



 問題の解決のためにも、まずは問題をはっきりさせないといけない。

 表に出して、荒れるにまかせるしかない。

 そうして全てが出てきて、疲弊して滅亡してようやく改善に乗り出せる。



 問題を起こす原因を表に出す。

 その上で、表に出た原因を根絶やしにする。

 そうでもしなければ、国の中にいつまでも発生源が、病原が残る。

 ここを解決しなければ、何をしても上手くいかない。



 その為にも、国民には義務を遂行してもらわねばならない。

 一般庶民や平民だけではない。

 貴族も、そして王族も。

 誰もが等しく地獄をあじわい、ことの改善に乗り出さねばならない。

 それが義務である。

 この国に生まれた者としての。



 義務に高貴も下賎もない。

 誰もが等しく負うものだ。

 やらねばならないことは、それぞれの立場や地位、身分に仕事で違うにしてもだ。

 その全てが自分の住む場所を守り保ち、繁栄させることに繋がる。

 義務とはそういうものだ。

 一部の人間だけに負わせてはいけない。

 負うべきものではない。



 国の乱れという形で、今は様々なものがこの義務を負っている。

 それを見て王子は胸がすく思いがした。

「がんばれよ」

 かつて自分だけに押しつけられていた高貴な義務。

 それを今、全ての国民が押しつけられている。



「俺に押しつけてたんだ。

 俺にも押しつけさせろ」

 そう言って、空を見上げる。

 同じ空の下で苦しんでる国の者達を思いながら。

 それらが例外なく等しく苦しむよう願った。

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