国の辿った道
国はその後、乱れに乱れた。
まともな統治がなされるわけではないのだ。
当然ながら様々なところで破綻がおこる。
財務を担当する者は税率を極限まであげた。
犯罪組織と繋がってる者は、警察の動きを停止した。
国軍を預かる者は、徴兵を強行して軍勢を隣国に送り込んだ。
貴族籍などを司る者は、難癖をつけて貴族を没落させ、その財産を奪った。
農工商などの産業を司ってる者達は、担当分野を国有化、その実、己の支配下においていった。
大臣達は一夜にして国の全てを手に入れた。
欲望に歯止めのかからない者達である。
望みのままに己のなしたい事をなしていった。
とはいえ、それで誰もが納得するわけではない。
突然の事に驚き、嘆き、そして反抗する者も出てくる。
今まで持っていたものを全て奪われるのだ。
当然の結果である。
もちろん、それを見越して大臣達も反発した者達を攻撃していく。
弾圧などという生ぬるいものではない。
反抗的に見えたというだけで皆殺しである。
大臣達は真っ当ではない。
だが、人間というものをよく理解していた。
徹底的に痛め付ければ逆らわなくなると。
相手の意思など少しでもくんではいけないと。
それがどれほど理があり、言うとおりにした方が有益だとしてもだ。
話を聞かない。
これこそが人を従順な奴隷にするための第一歩である。
つづいて、容赦のない殲滅。
一言でも何か言えば殺すという態度。
実際に行うだけの行動力。
これがあれば人は服従する。
人は恐怖によって動く。
道義や正義では動かない。
穏便な温和さでも動かない。
「お願いします」「いいですよ」が成り立つのはごく一部の者達だけ。
多くの人間は、強い者に服従するという動物と同じ本能で行動する。
だからこそ、大臣達は容赦しなかった。
反発・反抗すれば、即座に切り捨てた。
もののたとえではない。
文字通り剣や槍で殺した。
従わねば殺すという意思表示である。
徹底する事も忘れない。
一人が反抗すれば、その家族に親類縁者、村や町の人間全員を殺した。
反発する者を見逃したという事で。
こうしておけば、人は反発や反抗する者をおさえこむようになる。
その反発・反抗の方が道理にそっていてもだ。
善意や道理に道義、正義。
それに従って行動する勇気など人は持ち合わせていない。
そんなものがあるのは、例外的な一部だけである。
多くの人間は、苦境や苦痛にのたうち回っても、強い人間に従う。
凶悪であろうが、強いならそれに従う。
どれほど不当な扱いをうけても、それに耐えようとする。
多くの人間は本質的に奴隷でしかない。
強者に従い、不遇な立場に陥るのを望む。
大臣達はこれをしっかりと理解していた。
だからこそ、最初の段階で徹底した殲滅を心がけた。
最初にやっておけば、以後は大人しく従う奴隷ばかりになる。
逆に最初で話し合いや譲歩をしたらこうはいかない。
その後にどれだけ強烈な制圧・殲滅をしても反抗する者があらわれる。
前例があると、人間はそれにすがる。
だから、最初の段階で容赦なく反抗する者を殺していった。
村や町を地上から消していった。
その理由を国内各地に伝えていった。
一か月もすれば国内は落ち着いた。
反抗しようというものはあらわれなくなった。
あらわれても、周囲の者達が押さえ込んだ。
「大人しくしてろ!」
「俺達が死んだらどうすんだ!」
こうした声と集団による暴行が反発の芽を潰していった。
圧政・悪政が始まる。
だが、文句を言う者はいない。
いてもすぐに消される。
大臣達はそんな国からありとあらゆるものを奪っていった。
長続きするわけがない。
奪う物を奪い尽くせば、後には何も残らない。
田畑を耕す者も消える。
資源を採掘する者も、資源を加工する者も。
様々な品を売り歩く者も。
食い扶持すら奪われてるのだ。
あとは死ぬしか無い。
最初の一年は良かった。
まだ奪うものがあった。
だが、二年目からもう何も奪えなくなった。
さすがに大臣もどうしようと悩んだ…………りはしなかった。
奪うものがない。
ならば、人を奪えば良い。
男は労働用として。
女は快楽用として。
それぞれ奴隷として売り払えばよい。
国内では買い手がつかないが、外国なら買い手はいくらでもいる。
あるいは男は兵隊として使えば良い。
他国へ侵略させて、他国から奪えば良い。
損害は大きいが、得るものも大きい。
国内から何も奪えなくなった大臣達は、最後にのこった人を奪っていった。
奪った人を使って稼いでいった。
国は三年をまたずに疲弊していった。
豊かに暮らしてるのは大臣とその取り巻き達だけ。
もっとも、その大臣達も仲良く共同作業をしてるわけではない。
それぞれの利権や権益のために衝突し。
それでも利益が得られるなら共闘し。
血なまぐさい権力闘争を繰り広げながら国を食い潰していった。
そんな大臣達の下で、配下の者達も派閥争いや権力闘争をくりひろげている。
下の者を使い潰し、上に向かって下克上を仕掛け。
同僚同期を踏み台にして蹴落として。
そんな調子で少しずつ己の陣営を疲弊させていった。
当然ながら、そんな大臣達が律儀に王子への支払いをするわけがない。
玉璽の使用料とも言うべき実入りの一割。
その納金を大臣達は怠った。
請求されれば切り捨てるつもりですらいる。
それがわかってるのか、王子も取り立てにやってこない。
身分と権力と権威を失った王子にそんな力は無い。
力の無いものに律儀に対応する理由もない。
強いて理由をつけるならば。
大臣の席が支払いの理由になるだろう。
それをもたらしたのは王子である。
なので、王子を蔑ろにすれば大臣の職を失う。
後ろ盾が無くなるからだ。
だが、それも既にどうでも良いことだ。
大臣達は既に己の力で今の立場を確保している。
自分の派閥・組織などだ。
大臣の名前など、今更どうでもいい。
そんなものが無くても、ほしいままに動く事が出来る。
そうなるきっかけを与えたのは王子だが。
もうそれにこだわる必要もない。
そんな大臣達は、己の求めるままに悪逆非道をつくしていく。
止めるものは誰もいない。
阿鼻叫喚の地獄がひろがっていった。