国王とても
あちこちに潜んでいる有志は、集まった国の主要人物達を処分していっている。
その中には侯爵令嬢の派閥に関係のない者達もいる。
だが、侯爵令嬢のやってる事を見逃してきた連中だ。
生かしておく理由はない。
国を損なっている輩を放置してた連中だ。
証拠がない、法律がないといって悪事を放置してきた。
国の存亡がかかってるというのにだ。
貴族にあるまじき所業である。
強請・強迫に、暴力、麻薬の斡旋。
不貞行為の強要に、商売などにおける妨害工作・活動などなど。
あげたらきりがない程問題を起こしてるのが侯爵令嬢の派閥である。
これを殲滅しないというなら、何のために統治者がいるのか?
別に倫理・道徳や道義に正義のためでなくてもいい。
王家を中心とした政府、権力側・体制側の都合からみても放置は出来ない。
権力闘争・利権争いとしてみても、侯爵令嬢の派閥は国にとって無視できない存在だ。
それを放置するというなら、王家にしろ政府にしろ存在する意味がない。
さっさと侯爵令嬢に統治者としての地位、国家としての主権を渡せば良い。
それもしないで国家権力を握りながら。
しかし、国家をおびやかそ輩を放置する。
矛盾極まっている。
日頃、権力闘争や勢力争いであこぎな事をしてるくせにだ。
こういう時にこそ、その悪辣さを発揮して、危険な勢力を殲滅するべきである。
それをしないで、敵に迎合してる時点で己の存在する意味や疑義を捨てている。
何のために王子が侯爵令嬢と婚約してるのかがわからなくなる。
王子の婚約も政治権力の争いの一つだ。
王家の立場や地位を強化するために侯爵令嬢との結びつきを作ろうとした。
しかし、それが王家を損なうものならするべきではない。
率先して破壊し、侯爵令嬢と侯爵家を殲滅するべきである。
なのにそれをしない。
権力闘争・勢力争いという建前すら放棄してる。
そんな輩、いるだけ無駄である。
だからこの際まとめて処分する事にした。
親である国王・王妃を含めて。
国王・王妃は我が子を使って権力闘争・勢力争いをしている。
なのに、危険な存在を放置した。
言い分けとして、「結婚して取り込めば、王家で操作できる」などとほざいてるが。
「そんなわけあるか」というのが王子の考えだ。
身内に取り込んで操作する。
馬鹿げた戯言だ。
そんな事で操縦が出来るら苦労しない。
実際には、身内に敵を呼び込むだけだ。
城壁内部に敵兵を呼び込むようなものだ。
そんな事をすれば、あとは敵が内部を簡単に蹂躙する。
敵を阻む壁はもうないのだから。
ではどうするか?
敵を城壁の外で殲滅するしかない。
身内でないうちに処分するしかない。
でなければ、有利な条件を自ら捨て去る事になる。
そんな愚かな事は出来ない。
それでも身内に敵と手を結ぶ者がいたらどうするか?
身内を殺すしかない。
獅子身中の虫というのは、さっさと潰すに限り。
それが身内だろうと関係ない。
そもそも、身内だから安全などと誰が決めたのか?
身内こそが最も注しなければあらない危険な存在だ。
身内という事で行動の自由を得てるのだから。
何をしでかすかわからない。
身内同士で争う事など珍しくも無い。
骨肉の争いという言葉もあるくらいだ。
血を分けた親兄弟での殺し合いなど過去からずっとつづく事。
それなのに身内を、親類縁者を無条件に安全圏扱いする。
意のままに動くと思う。
とでもない勘違いである。
どうしてそうなるのか、王子には理解が出来なかった。
そんな王子からすれば、親である国王と王妃は真っ先に処分するべき敵でしかない。
身内に敵を招き混む内通者でしかない。
さっさと殺すに限る。
親兄弟だからこそ、手加減は出来ない。
手心を加えることは出来ない。
処分を軽くすることは出来ない。
やらかしてるなら、身内がまずは処分しなくてはならない。
でなければ、外部の信頼を得ることが出来ない。
もしもだ。
「あいつは身内には甘い」
「あいつあらは身内を優遇する」
と言われればどうなるか?
そんな奴に協力する奴はいなくなる。
身内でない限り冷遇されるということなのだから。
だからこそ、身内に対しては誰よりも厳しくあたらねばならない。
王子はその責任を負うために国王と王妃を殺した。
毒に苦しむ国王と王妃。
それは確かに王子の父親と母親だった。
だが、国をおびやかす敵でもある。
身内として、このような危険な存在を生かしておくわけにはいかなかった。
「父上、母上」
国王・王妃ではなく、王子は親として二人を呼んだ。
「あんたらが侯爵令嬢という害悪を呼び込むからこうなったんだ」
「…………!」
「…………!」
冷たく見下ろす王子。
その視線に気付くことなく、国王・王妃は苦しみ悶えてる。
「さっさと死ね。
死んで王冠と王権をよこせ。
王としての最後にこの仕事だけはこなせ」
そういって王子は国王と王妃の首をはねた。
鋭利な刃は簡単に首を切断した。
それが終わると、王子は最後の処分対象の所へと向かう。
彼につきまとっていた男爵令嬢のところへだ。