婚約者のした事
婚約者には様々な候補がいた。
侯爵令嬢だけでなく、他の貴族令嬢がだ。
その中には、美貌も才能も気立てでも侯爵令嬢を上回る者もいた。
それらを追いおとして侯爵令嬢は婚約者になった。
他の令嬢は、立場を失ったり、精神的に追い詰められて貴族学院から退いた。
派閥・取り巻きの令嬢たちも含めてだ。
そうして貴族学院は侯爵令嬢が君臨するようになった。
そうして作り出した派閥で、学院内で好き勝手をしていた。
教師とて下手に手を出せないほどの。
おかげで、様々な問題を起こした。
ただし、自分が表に出る事はなく、手下にやらせていく。
自身は授業にマジメで出て、試験もそつなくこなした。
それだけの才能・能力は持っている。
ただ、侯爵令嬢は指示するだけ。
結果の報告を受けるだけ。
実際の作業は派閥の人間が行う。
実行犯は爵位の低い貴族令嬢。
あるいは、伝手のある学院外部の者達。
それらに様々な活動をさせている。
典型的なシンジケートの形だ。
頂点や幹部は動くことは無い。
指示を出して結果を待つ。
そうした体制を侯爵令嬢は作り上げた。
学院の中で逆らう者はいない。
学院の外でも影響力を持つ。
市井においても、侯爵令嬢の息のかかった業者などが幅をきかせるようになった。
庶民の町の中でと侮る貴族もいるが。
それが都全体に及べば無視できない勢力になる。
庶民による飲食店から雑貨店、職人などなど。
それらのほぼ全てが侯爵令嬢の手の内にある。
上がってくる利益は膨大だ。
また、麻薬などを用いての支配もしている。
意に沿わない者達を廃人のするために。
何も考えずに動く捨て駒を作るために。
更に、女を使って男をとりこんでいった。
体を売る事を商売にしてる者達を使うだけではない。
貴族令嬢も用いて有力者を取り込んでいった。
栄養状態が良く、風呂などに定期的に入ってる貴族女子である。
一般の女子より身ぎれいだし、体も発達している。
また、子供の頃からの教育でしとやかにしつけられている。
そんな女を求める者は多い。
たとえ婚約者がいようと。
それを求める男がいるなら遠慮なく使っていった。
派閥の中にいるにはそれが条件だといって。
令嬢達は頷くしか無かった。
派閥から追い出されたら何をされるかわからないのだから。
これには令嬢と関わりのある貴族夫人も用いられた。
たとえ人妻だろうと関係がない。
むしろ、貴族夫人という事で価値が高まる。
それが不貞になろうとも関係なく、侯爵令嬢は女を男にあてがっていった。
彼女にとって、男にあてがわれる者達の今後などどうでもいい。
大事なのは己の欲望だけなのだから。
侯爵令嬢自身も奔放に享楽にふけっていた。
表に出すことはなくても、持ってる力はにじみ出る。
それを嗅ぎ取った者達が接近する。
そうした者達の中から好みの男と睦み合った。
もちろん、裸で肉の交わりによってだ。
清楚・貞節を守った清い交わりなど一切ない。
それは王子の婚約者としてふさわしくはない。
だが、だからといって婚約を取り消す事は出来ない。
政略結婚であり、本人の意向は関係ないからだ。
大事なのは権力における勢力争いである。
その点で侯爵令嬢の家は申し分ない。
まして侯爵令嬢本人が自分で多大な権勢を作り上げたのだ。
その才覚は王家としても欲しいものだった。
王子の気持ちや考えなど考慮する事などない。
こうして都の経済活動の多くに侯爵令嬢は影響力を持つようになった。
経済とは生活活動そのものだ。
そこに大きな影響を持つという事は、生殺与奪の権を得てるという事。
都はほぼ侯爵令嬢の手に落ちてるといえる。