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婚約破棄

「婚約を破棄する」

 王子の発言が卒業パーティ会場に響く。

 だが、現場はそれどころではなかった。



 来賓である国王・王妃、その他重臣などなど。

 お歴々の方々が倒れ伏してむせび泣いている。

 投げ込まれた発煙筒からの煙を吸い込んだからだ。

 強烈な毒薬である煙は、容赦なく国王たち国の中枢を蝕んでいく。

 即座に解毒出来るなら良いが、それも難しい。

 彼らの命はあと間もなくだ。



 他も似たようなものだ。

 貴族学院の卒業パーティ。

 その中心となるのは学生達。

 将来、国の中枢を担う貴族の子弟だ。

 その多くも床に倒れ伏している。

 いずれも投げ込まれた発煙筒の毒煙を吸ったせいだ。

 大半は若い命をこの夜散らす事になる。



 例外なのは、王子が婚約破棄を告げてる相手。

 彼の婚約者であった侯爵令嬢くらい。

 その取り巻きの貴族令嬢達も含めわずかな人数。

 そのほとんどが震えながら身を寄せ合ってる。



「無様な」

 震える貴族令嬢に王子は蔑みと呆れを抱く。

 貴族たるもの、泰然自若とせよ。

 幼少の頃より教えられてるはずの事だ。

 それが国を担い、支える者の責務である。

 でなければ、様々な事態に右往左往する事になる。

 そんな事、貴族に許される事ではない。



 だというのに。

 目の前の令嬢達は不測の事態に震えるばかり。

 如何に政治に直接携わらない女子だとて、貴族として許されるものではない。

 まして、この者達は女子である事の枠にとらわれる事をよしとしてない。

 女の身であっても、男とおなじくするべき事をすべしと口にしていた。

 ならば、騒乱があろうと堂々としていなければならない。

 震えているなどもってのほか。



 その点で侯爵令嬢は大したものだった。

 震えて寄り添い、床に膝を付いてる令嬢達とは違う。

 堂々と立ち、王子に向かい合ってる。

 さすが王子の婚約者、ゆくゆくは王妃になろうという人物だ。

「見事だ」

 素直に賞賛する。

 その部分だけは。



「どういう事でしょうか?」

 そんな婚約者である侯爵令嬢が尋ねる

「このような騒乱、いったいどういった理由で……」

 言葉が途中でとまった。

 王子が手にした剣が刺し貫いたからだ。

 さすがにこれは予想が出来なかったのだろう。

 信じられないという表情になって婚約者は尻餅をつく。



「馬鹿か?」

 先ほどは少しだけ賞賛した。

 堂々たる振る舞い、まさに貴族と思った。

 女も男と同じたるべし、義務をおうべしとうたっていただけの事はあると。

 しかし、その後がいけない。



「なぜ語りかける。

 なぜ語ろうとする。

 そんな状況だと思ってるのか?」

 話し合いでどうにかなるような状況ではない。

 既に戦いは始まってる。

 毒を蔓延させ、周囲は死体の山だ。

 言論によろ舌戦などとっくに超えている。

 そんな状況で語り合いなどしてどうするのか?



「そういう状況に持ち込もうとしたのか?」

 考えられるのはこれだ。

 戦闘などの実力行使で勝てないなら、言葉巧みにまるめこむ。

 そうして周囲の人間の意識を変える。

 有利な立場の者達を、道義や正義を使って悪辣非道とする。

 そうして精神的な有利を手に入れる。

 よくある謀略の手段ではある。

「それが使えるとでも思ってるのか?」

 もうそんな状況では無いという事を無視すれば、有効だっただろう。



「それでも貴族か」

 やはり呆れるしかない。

 状況判断が全く出来てない。

 既に修羅場の状況で舌戦に持ち込もうというのが間違ってる。



 相手の油断をさそって刃を突き刺すというならともかくだが。

 そんな事、王子とて考えてる。

 だからこそ話しかけてきた婚約者を突き刺した。

 次の一手を警戒して。

 当然の対処だ。



 何にしても婚約者は全てにおいて後手にまわった。

 王子と相対してる時点でだ。

 そうなる前に、パーティ会場から逃げだせば良かった。

 事前に情報が得られていたなら、パーティを欠席すれば良かった。

 参加するにしても、相応の準備をすれば良かった。

 あわよくば、婚約破棄をする王子をおとしめる場にすれば良かった。



 貴族として当たり前といわれる謀略。

 その全てを使えば良かった。

 だが、しなかった。

 出来なかったのではない。

 しようとしなかった。



「裏であれだけ暗躍していたのに」

 情けない、と王子は思う。

「妃の対立候補を追いおとし、競争に勝ち進んでおきながら。

 それでこのテイタラクか」

 王子には理解が出来なかった。

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