9話 鬼が来たりて、
迫る鬼から逃げる禍津日は家屋の隙間を縫うように走る。瑠奈をお姫様抱っこしているにも関わらずそのスピードは落ちる気配がない。
だが鬼のスピードはもっと速い、その巨体故に小回りが利かないため簡単には追いつかれないが一度直線に入れば距離がグングンと縮まってしまう。
逃走開始から既に二時間以上が経過しただろうか、鬼の猛追はとどまることを知らない。それまで疲れた様子の見せなかった禍津日も少し前から徐々にスピードが下がりはじめている。
「瑠奈よ、このままでは命が危ない、一度駅舎まで戻るのじゃ、あそこは神かその巫女しか入れぬからの!」
「駅舎!?だいぶここから離れてない?間に合うの!?」
「知らんがそれしか道はないじゃろ」
「禍津日ちゃんにお任せします!」
「任されたのじゃ」
禍津日は急ブレーキをかけると近くの家の屋根へ向け飛びつく、そのまま空中で迫り来る鬼の腕を躱しながら屋根の上の着地すると踵を返して駅舎へと逃走を再開した。
家屋が密集しているので足場がないという事はないがそれまでの道路と違い走りづらい。
禍津日は既に限界が近い足でかなりの時間を走っている、このままでは駅舎に着く前に限界を迎えてしまうだろう。それは禍津日にも分かっている。
鬼はいまだ二人を逃すまいと迫っているので立ち止まる訳には行かない、だが駅舎まではまだまだ距離がある。
かなり絶望的だがそれでも進む。雪の上を走っていた時は気にならなかったが下駄で走るのはとても辛い。もう一度下へ戻るべきだと考えた禍津日は路地が入り組んでいる所を探して飛び降り、そのまま近くの家屋へ入り身を隠す。
幸い鬼には気づかれることも無く二人は一息つく事ができた。
その後二人で話し合い、夜の活動は危険なので夜が開けるまでここに留まることに決めた。
ただどのみち禍津日が酷使した足が治るまでは動くことは出来ないだろう。夜はまだ始まったばかりだ。
次回の投稿遅れます。