表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地下300Mからの・・  作者: 生丸八光
7/19

7話 そして・・・

暗闇の中、回し車と壁を(こす)る音が、静かにリズムを刻んでいた・・・


そんな中で静かに漫画を読んでいるトト・・


地下300メートルの空間に閉じ込められ、果てしない時が流れていた。


高杉は、瞑想してるのか夢でも見てるのか、壁の前に座り込み、ボーっと壁を擦っている・・・


ムムは200年()(たび)にトトに知らせ、トトはそれを高杉に伝える。

そして、またムムから200年が()とうとしている事が伝えられた。

「健三!また200年()つみたい・・・あと10秒だって・・」


高杉は、ピタリと手を休め

『・・・これで10回目か・・』

と思った瞬間!

「ガシャ!ガシャ!ガッシャーン!」

扉から大きな音が鳴り響く!


目を凝らして扉の方を見つめる高杉・・・暗闇の中に感じる(わず)かな風・・・


「け、健三!扉が開き始めてる!」

トトが驚いて大声を上げた!


扉はゆっくりと静かに開いて行く・・高杉の目には見えないが、入り込んでくる新しい風に、扉が開いている事を確信させた・・・


「・・ついに、()いちまったか・・」


扉は開かないと諦め、壁を擦り続けて来た高杉・・夢を見ているのかも知れないと、一応自分のホッぺをつねった。そこにトトが近付いて来て

「健三!ムムが言うには僕たちは、この地下に2000年間もいたんだって、ビックリだね!」


「あぁ・・そうだな・・」


「どうするの?すぐ地上に出る?」

「当然だ!今すぐ行こう!」

立ち上がり、扉に向かって歩き出したが、カラカラと回し車が回る音・・・


「ん?ムムは、まだカラカラやってんの?」

「うん・・地上に行きたくないみたい・・」


「何で?・・」


「もっと、回し車に乗ってたいって・・」


「はぁ?2000年も乗り続けて、まだ足りねぇのかよ!」


高杉は、あきれながらもムムの所へ行き

「一緒に行くぞ!」

と回し車ごとムムを持ち上げる!ムムは、夢中で回し車を走らせていた・・



高杉は扉の外へ出たが、そこも、光の射し込まない地下300メートルの空間・・


「確か、エレベータと階段があったんだけど・・」


「あるよ!すぐそこに」


手探りで、エレベータのボタンを押すが、動く気配がない・・


「階段だな・・」


隣にある階段を登り始める・・1段づつ地上に近付いて行くのを感じながら、階段を踏みしめ、上がるに連れて高鳴る鼓動が、死者に生気を吹き込むように高杉に力と気力を蘇らせて行く・・


(はや)る気持ちに足もどんどん早まって行き、地上まで、あと10メートル程と迫った所で行く手を阻まれる。


崩れた瓦礫が階段を塞ぎ、進めなくなっていた。


『ちきしょお・・どうなってんだ・・崩れて放置されたのか、それとも埋められた?・・』


手探りで進めそうな所を探す高杉に


「健三!ここから行けそうだよ!」

トトが通れそうな所を見つけた!


トトの声を頼りに瓦礫の間を登って行くと、遠くに一筋の光が見える!

「光だ!光が見える!」

1本の糸のようなに細い光が瓦礫の隙間から射し込んでいた・・


高杉は、光を目指して突き進む!

『もうすぐ、地上に出れるぞ!』

『ドックン!ドックン!』と、高鳴る鼓動に呼吸も早まり、光を目指し一直線に向かう!


岩の脇から射し込む光!その岩を右腕と頭で支え、踏ん張って押し退()けた!


降り注ぐ光!

眩しさに目を閉じ、顔全体で受け止める・・・瞼を閉じても感じる光と太陽の温もりに微笑み・・


『光を感じる・・温かい・・』


2000年振りに太陽の光を感じると、目を閉じたまま地上に顔を出し上半身で風と匂いを感じる・・


『懐かしい・・気がする・・』


2000年振りの地上・・・懐かしいような・・初めてのような感覚を感じつつ、ゆっくり目を開ける。

眩しさに何度も瞬きをしながら目を慣らし、辺りを見渡す・・


青々と茂る木の葉の間から射し込む光・・・青い空に白い雲を眺めると、ハッとして地上に飛び出た!


「ここは、都会のど真ん中だったハズだぞ!」


ビルの影も形も無く、周りには樹齢1000年を越える大きな木々が生い茂る・・


「どうなってるんだ?・・いったい・・」


高杉は、ムムが走らせている回し車を手に、茫然と立ち尽くし、長い歳月で、驚く程変わってしまった地上の様子に


「人類は、いったい!どうなってしまったんだ!」


と叫んだ!



「よいしょ・・よいしょ・・」


茫然と突っ立っている高杉の目の前に、見た事のない生き物が、地下から這い上がって来た・・


「よかったね、健三!地上に出れて・・」


「えっ?お前、トトなのか?どうしたんだよ!・・その体・・」


「ちょっと、大きくなっちゃって・・」


今まで暗闇の中で分からなかったが、トトの体は、身長1メートルを超え、大きな耳に大きな瞳・・ぽっちゃりとした2頭身のぬいぐるみのようになっていた・・










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ