6話まさか・・・
200年が経った事を知らされ、高杉は立ち上がる!
暗闇の中をゆっくり歩き、扉の前に座り込んだ・・トトも高杉の隣へ・・・ムムは相変わらず回し車を走らせていた・・・
しかし、2時間待っても扉は開かない・・・
「開かねぇなぁ・・まぁ、200年を数えたんだ・・・かなり誤差が出るだろう・・」
高杉がそう言うと、トトが
「誤差は殆んどないハズだって、ムムが・・」
「そ、そうなのか・・・」
が、そのまま3日経っても開かなかった・・・
「扉の電気がダメなのかもしれないな・・・」
高杉は扉が開かなくても落ち着いていた。それどころか、ホッとしているような・・・暗闇での200年間の暮らしにすっかり慣れていたのだ。
長い引きこもり生活・・昔の記憶は薄れてしまい、外に出たい気持ちも無くなっていた。それでも、扉が開けば地上に出なければ・・・
扉が開かずホッとしていたのだ。
高杉は、もう開かないと思ったのか瞑想を始める。その瞑想は、いつもより深くて長かった・・・
次に高杉が目覚めると、5年の月日が流れていた。
『まだ、開いてないのか・・・』
そう呟き、静かに立ち上がる。隣の食料庫へ行き、ポテトチップスを1袋手に取り、食べ始めた・・・
「・・・相変わらず、旨いな・・」
ここ100年程、何も口にしてなかった高杉・・続いてビールも一口・・・
「・・・こんな味だったけ・・」
と残りを一気に流し込み、溜め息を付く・・・
扉の前に戻ってきた高杉は、再び座り込むと地上を見上げ
「なぁ、トト・・地上は今、どうなってると思う?俺達のいた頃と大分変わっちまったかな・・・」
「う~ん・・・凄く変わってると思う。200年以上経ってるし、科学技術だって凄く進歩してるよ。」
「だよな・・車なんか空を飛んでるかもな・・」
「そんなモンじゃないよ!もっと進んでると思う!ワームホールを開いて他の銀河までワープしたり、宇宙戦艦を造って宇宙人と戦争してるかも!タイムマシンだって出来てて・・・」
何やら興奮の様子のトト・・・
「トト・・お前、漫画の読みすぎじゃねぇのか!」
「・・・そうかも・・でも、人間は賢いから、凄く進歩してると思うけどなぁ・・・」
「賢いか・・ずる賢いだけだよ人間は・・表向きはいい顔をしてるが裏では自分の利益に執着し、他人の足を引っ張り蹴落とす!科学技術が進歩した処で一部の人間が得するだけで、世の中そう簡単に変わらないさ・・・人間そのモノを進化させねぇと不安が増すだけだ!」
「・・僕には、よく分からないよ・・・人間の事も地上の事も・・・地上では、ほとんどゲージの中にいたし・・」
「・・・そうだったな・・俺がスーパージョブ細胞を造ったのは、根本的に人間を進化させて不安を取り除き、みんなが幸せになって、世界を一つにしたかったんだ!」
高杉は、地上や人間の事を考えている内に、地上がどうなっているのか知りたくなっていた。が、扉は開かない・・・立ち上がって歩き出し、壁に手を付けると手探りで前に削った所を探す・・・
50年位擦り続けて止めてしまった所・・深さ1cmに長さ1m程のキズを見つけると、ビール缶を潰して壁を擦り始めた!
ただひたすら壁を擦り続ける。腕立てやランニングも止め、ひたすら擦り続ける・・・
壁を擦り続けて100年が過ぎていた・・・
それでも削れたのは、深さ1cmで1辺の長さが1mの正方形の輪郭だけ・・・それでも擦り続けた。
その内高杉は、擦りながら瞑想する事が出来るようになっていた。深い瞑想状態の中でひたすら擦り続けて行く・・・
ムムが、また200年が過ぎた事を伝える・・・
高杉は、ただひたすら壁を擦っていた・・・