二話・・・からの
シャワーでスッキリ!すっかり元気になった高杉
シャワー室を出てタオルでも無いかと、目の前のクローゼットを開けると、バスタオルにバスローブまである。
「けっ!少しは気が利くじゃねぇか!」
バスローブを羽織り、辺りを見回り始めた・・
「隣には食料があるって言ってたな・・」
隣に通じるドアを開けると、山のように積まれた食料が壁の向こうまでビッシリ、お菓子や缶詰め、サプリメントにドライフルーツとバラエティー豊富に積んである。お菓子を1袋手に取り摘まみながら歩き続け、冷凍室に足を踏み入れた。
電気を付けると、天井まである棚がズラリと並び、パックに入った高級ステーキがぎっしり、マグロやサーモン、カット野菜に焼き飯ギョーザと、高杉の好きな店のピザやアイスまであった。
「へっ!俺の好きな物は、知ってますよってか!」
冷蔵室に入るといつも飲んでいるビールと缶チュウハイの銘柄がズラリ・・高杉は歩き見ている内に・・
『もしかして俺は、あの女を誤解してるのかも・・』
と思い始めてきた・・
自分の状況を振り返ってみた・・研究所を辞め、毎日パチンコへ行き87円しか金がなくなった・・働く気力もなく、ぺてん師だと指を差され行き場を無くしていたのだ・・
「あの女に感謝すべきなのかも・・いや、あの女は俺を破滅に追いやったんだ!感謝してどうすんだ!・・」
高杉は葛藤を繰り返しながら歩き、目の前のドアを開けた・・その部屋にはパチスロにパチンコ台、漫画の本やゲーム、映画のDVDにセクシー女優のDVDまでもズラリと並べられている・・
「リサ・ステッキー・・」
高杉の目がキラキラと輝き出していた・・復讐の炎は煙りとなり、感謝の気持ちが湧き出る
『俺はリサを誤解してた・・リサのあの笑顔は俺を騙して地下に誘い込む為じゃなく、俺を招待して喜んで貰う為の笑顔だったんだ!俺にとってリサは、救世主であり女神だったんだ!」
高杉の心は、すっかりリサへの感謝へと入れ替わっていた・・
『リサは、俺が地下で生活するのに高級食材や俺の好きな物を取り揃え、少しでも生活しやすい様に頑張ってくれたんだ!
それなのに俺は・・
よぉーし!俺は、この地下で暮らす事に決めた!200年は無理だけど、リサの為に20年は頑張るぞ!』
自分に誓いを立てたのであった・・
高杉はその後、洋服の置いてある部屋を見つけ、スエットを着ると、縛られていた椅子の所に戻って来る。
ゲージを見ると、2匹のトムが中に居て1匹は相変わらず回し車をカラカラ走らせている。高杉は自分がやらかした後始末を終えると、ゲージの金網を取り外し
「しばらくここで、のんびり暮らす事にしたから」
と餌箱に山盛りの餌を入れ
「お前達は、2匹になっちまったからな、名前を付けよう!お前はトトでお前がムムだ!」
新しい名前が気に入ったのか、トトはクルクル走り回って飛び上がり、ムムは嬉しそうに回し車を走らせる。
高杉は、さっそく大量の漫画本を持ってきて読み始めた。今まで研究に明け暮れ、漫画を読む暇がなく、読む事もなかった。
夢中で読んでいるうちに、2日が過ぎていた・・
「腹へった・・」
高級ステーキを5枚焼き、ピザとビールを持ってくる
「かぁー旨い!最高だぜ!」
ステーキにかぶり付き、ビールを飲む高杉・・しみじみと地上を見上げ・・
『地上じゃ、こんな高級な肉は食え無かった・・リサのおかげだ・・』
改めて地上を見上げ、リサに感謝したその時・・
「ゴゴゴゴゴォ・・・ゴゴゴォ・・」
地鳴りが鳴り響き、少し揺れるのを感じた・・
「ん?地震か・・」
それから何度か、地響きと少し揺れるのを感じたが、地下に閉ざされたこの部屋はビクともしない。
「さすが機密文書を保管していただけあって、地震でもビクともしないな!」
高杉は安心して肉を頬張り、ビールとピザで大満足すると、漫画を読みながら、いつの間にか眠ってしまった・・
トトはそんな高杉を心配そうに見つめ、ムムはひたすら回し車を走らせる・・
地下300メートルの閉ざされた空間で、カラカラと回し車の音だけが静かに響いていた・・