1話閉ざされた扉
「ガシャ・ガシャ・ガッチャーン・・・」
扉がロックされた音が響き渡り、がっくり頭を下げる男・・・高杉健三。35歳。不死身の男・・・
彼は、国家情報保安保障局のリサ・ステッキーに新宿の地下300メートルに閉じ込められた。おまけに彼女は、ロックする年数のボタンを間違え、ゼロを1つ多く押してしまったが、デートに遅れそうだったので、そのままロック。当然、高杉はその事を知らない・・2000年間閉じ込められてしまった事に・・・
広々とした部屋の中央で、手足を椅子に縛られ身動き出来ない高杉・・・目の前にゲージに入ったマウスが2匹と重厚で巨大な扉が見えるだけ・・・
『ちっきしょおー・・・あの女、飛んでもねぇサイコパスだった・・・笑って人を殺すタイプだな・・笑顔で誘っといて、最初から俺を閉じ込める気でいやがったんだ!200年間も・・恐ろしい女だ!・・何もかもアイツにしてやられた・・くっそぉー!』
高杉は縛られた手に力を込める・・リサへの怒り、憎しみと恨みで力を増幅させ、両足を踏ん張り、ありったけの力を込めた・・が、紐はちぎれない・・
スーパージョブ細胞を体に取り入れ不死身になったが、ただの非力男だった・・・
「だっ・・ダメだ・・・ゴハンの奴・・ガチガチにしてやがる・・」
あきらめて力を抜き、息を付いた高杉にトムが見える・・・1匹は、まわし車に乗りカラカラ音を立て一生懸命走っている。
もう1匹は、じっと高杉を見ていた・・・何か言いたい事があるかのようにじっと・・・
「どうしたんだトム!何か言いたのか?」
高杉が声を掛けると、トムはゲージの中をクルクル走り回り、ゲージに飛び付きガリガリ金網に歯を立てる。
それを見て分かった!
「そうか!お前が紐をかじるんだなっ!」
『よぉーし!』とばかりに、気力が沸き出る!
尻でジャンプする様に反動を付け、少しずつ椅子をゲージの方にずらして行く。そして、ゲージのそばまで来ると、思いきり前方に体重をかけ倒れ込んだ!
「ガツン!」
床を顔面で受け止め、痛みで顔を歪める・・多少の痛みは覚悟の上だったが、痛すぎたのか、しばらくそのまま固まる・・
顔面を床に付けたまま、横目でゲージを確認・・
あと横に10センチ程で、ゲージに腕が届く・・高杉は気合いを入れ体を揺さぶるが、横に移動するのは難しくビクともしない・・
「あと少し・・あと少しなのに・・」
必死で体を揺さぶるが時間だけが過ぎ、徐々に動きが鈍くなってきた・・
「チッキショォー・・・こんな時に・・」
体をくねらせ食い縛る・・
高杉は、オシッコがしたいのだ!もう我慢の限界を越えていた・・・顔と体を歪ませ耐える・・
「うっ・・ううぅ・・」
声を漏らすと顔が和らぎ、すぅーっと力が抜ける・・股間に温もりが広がるのを感じ、目を閉じ安らぎに身をまかせる高杉・・温もりがどんどん広がり・・止まらない・・
『あぁ・・昼間たっぷり水を飲んだっけなぁ・・』
止まらず出つづけるオシッコに、何とも言えない幸せを感じつつも涙が出ていた・・
『情けねぇ・・あの女だ!・・あの女が悪いんだ!・・くっそぉー!何もかもあの女のせいなんだよ!ちっきしょぉ~!』
怒りと悔しさ、情けない自分に涙を流し、身動き出来ない高杉のボヤけた視界にトムが見える・・トムが何かを言いたそうに、じっとこっちを見ていた・・・
「あぁ・・トム・・俺、ションベン漏らしちまったよ・・ハハハハ」
精神的ダメージを少しでも和らげたいのか、トムに笑顔を見せたが、身動き出来ない自分が可愛そうになり
「トム・・そこから出て来て・・この紐を噛み切ってくれよぉー・・」
と泣き付く・・
それを聞いたトム!グルグル走り回ってゲージの天井に飛び付き、ロックを外しフタを開け外に出ると、高杉を縛っている紐をかじり出す・・高杉は唖然としながら・・
「そんな事も・・できるのね・・」
高杉は自由になった・・
取りあえず縛られた状態から解放された・・が、股間に広がる冷たく不快な感覚・・ポタポタと雫が落ちるのを落とさないように内股で、つま先立ちしながら洗面所を捜し歩く・・
洗面所はすぐに見つかり、隣にはトイレにシャワー、風呂に洗濯機までも・・高杉は着ていた物を全て洗濯機に入れ、シャワーを浴びる・・
シャワーを浴びながら高杉は誓いを立てた!
『俺が、黙ってここに200年もいると思うなよ!・・すぐに抜け出し、この屈辱をお前にも味合わせてやる!リサ・・絶ってぇに許さねぇからなっ!』
復讐の炎が、メラメラと燃えていた!