表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ令嬢は楽して生きたい!  作者: はーきぃ。
7/10

カルル=ビークリー

ピリリッーカチッ


目覚めるのは日の出と共に。

1時間ほど運動をして、シャワーを浴び、決められた服を着て、鏡の前で確認。軽い朝食をとり、身なりを整え、向かう先は大好きなあの方の元。


コンコンッ


「お嬢。おはようございます。」


「ふあぁ〜。おはよぉ〜。」


まだ半分夢の中にいるお嬢。

あぁ、今日もなんて可愛いんだろうか。


「ほらほら、朝食に遅れますよ。」


本当は寝かせてあげたいが、朝食は家族みんなで取るというのがここの決まりだ。

旦那様も奥様も超がつくほど親バカだし、お兄様方もお嬢を溺愛。

まぁ、お嬢に関してはこの家の使用人全員からも溺愛されている。もはや信者に近い。


この間の誕生日パーティーといい、何でそんなに人をタラシ込むんだこの人は。人間ホイホイだ。

王太子殿下にも、公爵家の令息にも目をつけられた。また惚れる人が増えたのだ。

こっちはあの時からずっと好きだというのに。


元々、貧しい平民の家に産まれた俺。

ある日、母と買い物に行った際に人攫いに遭い、奴隷市の商品に。

一人、また一人と売られていく毎日。売れ残ると見えない所を鞭で叩かれる日々。

毎日移動しているが、外の景色は見えないので自分が今どこにいるのかもわからない。

そんな時また新しい領地に入った。

珍しく、警備隊に止められ荷馬車を確認。

これを逃せばチャンスはないと思い扉が開いた途端に全速力で走り続け、力尽きて倒れ、意識を手放した。


「ふんふんふーん。」


誰だ、呑気に歌ってる奴は。


「うわっ!人っ!ビックリした。心臓止まるかと思った。あなた大丈夫?生きてる?」


「…ぅるせぇ。」


「よかった。生きてるなら助けられるわ。」


そういうと同い年くらいの子供は何の躊躇いもなく近づいてきた。

見るからに貴族のお嬢様。奴隷が物珍しいのか。

追い払う気力もない。


「…これ、誰にも言わないでね。」


途端、身体から光を放つ。そして俺の手を握った。

あまりの眩しさに目を閉じる。

次に目を開けた時には、少女はニコニコしながら聞いてきた。


「どう?もう平気でしょ?」


「そんなっ…まさかっ!」


身体がかるい。起き上がって動き回れる。全身にあった傷も無くなってる。奴隷の刻印もだ。枷も外されてる。


「こんな日が…くるなんて…」


気付くと俺は泣いていた。


「お腹空いてるでしょ。まずはご飯ね!」


少女に連れてかれ、屋敷に着くと、嫌な顔ひとつせず歓迎してくれた。こんなに温かい場所初めてだ。

お腹いっぱい食べて、お風呂も入らせてくれた。


「人生で一番幸せだ。」


「あら、貴方まだ私と同じくらいでしょ?これから先まだまだ長いんだから、幸せなことなんてきっといっぱいあるわよ。」


「先のことか…考えたこともなかったな。」


「せっかく自由になれたんだから好きなことやればいいのよ。ここにずっといてもいいし。」


「なら、俺はあんた…いや、貴方のそばに居たい。力つけて強くなって、どんな奴からも守ってみせる。だから俺を従者にしてくれ。」


「ふふふ。黙って守られる主人じゃないわ。一緒に戦うのが私よ。それでもいい?」


「頼もしいご主人様だ。」


それからは、旦那様に直談判。

ティアが選んだならいいよ〜と軽い口調で採用。

カルル=ビークリーという名前を貰った。

執事長やメイド長からマナーや稽古を受ける日々。

何とこの屋敷の使用人全員、戦闘員でもあるのだ。

ちなみに執事長は旦那様の、メイド長は奥様の従者らしく、強さが半端ではない。


そして魔法は奥様から直々に教えて貰った。

なんでもこの国で5本の指に入るほどの実力だとか。けれど、お嬢はそれ以上の魔力の持ち主だという。

産まれた瞬間、その魔力で人々を癒やし、6歳にして魔法をおもちゃにして遊ぶほど自由自在に操っている。


勉強してわかったのだが、お嬢が俺を助けた魔法も、普通の治癒魔法とは違うらしい。

普通はできた傷の箇所のみに手を当て、呪文を唱えると緑っぽく光り、そこだけが治る。

前からある傷は、薬などで薄めることはできても治癒魔法では消えない。

そして、ある程度傷は治せても体力までもどすのは不可能で、それには体力回復用の薬を飲まなければいけないらしい。


お嬢もそれを知っていたから、他の人には秘密なのだろう。でも、そんな奇跡に近い魔法が使えるなんてお嬢は一体何者なのだろうか。

時々年齢の割に妙に大人びていて、ドキッとする。

テラスから使用人や家族を見る時、高台から領地を眺める時、心から愛おしそうに見つめるその姿はとても幼い子供には見えない。


「お嬢は…一体…」


「…私は、この世界が大好きなの。」


俺に光を、生きる希望を、与えてくれた人。

貴方の笑顔はこの命に変えても守ってみせる。

可愛くて優しいお嬢様。どうか貴方が幸せになれますように。

いつか貴方が誰かと結ばれ、俺が不要になるその時まで…ずっとお側に。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ