5
「私も、魔法に色々興味があるのですが。ご一緒してもよろしいですか?」
「ミラ嬢も?それは意外だねー。君は何でも知ってるから。」
「そ、そんな事ありませんわ。魔法に関しては全然です。/////」
タナー家とノイガー家も確か婚約するのよね。
もしかしてこれは、ノイガー嬢が好きだから婚約したのかしら。
「というわけで、私のことはミラとお呼びください。」
「では、私のことはティアリスとお呼びください。ミラ様。」
「では僕はティアと呼ばせてもらおうかな。」
「ええ。どうぞ!って、殿下!?」
ん?ティアリスではなく、ティア?
「僕のことは、そうだな、フェディックじゃ長いからフェディでいいよ。」
「…そんな気軽に呼べませんわ。フェディック殿下で勘弁してください。」
「えー。気にしないのに。」
気にするわ!周りが!
うっかり婚約者にでもなったらどうするんだ!
あなたは未来でヒロインが待ってるんだよ多分!
「僕は君なら…」
?私なら?
グイッ
「カルル!?」
「失礼。リボンが曲がっていたので。」
たしかに、こういうドレスの腰についたリボンて座ったり立ったりするとすぐ曲がっちゃうのよね。
「リボンありがとう。」
「「…鈍感」」
「2人とも何か言いました?ボソッと。」
「「何も。」」
揃って言われると怪しい。
それに何だろうこの空気。笑ってるけど笑ってない。
ちょっと離れておこう。
「あ、あの!ルイワール令嬢!」
「…お気に召して頂けたみたいですね。」
「はい!とっても!私こんなに可愛くて楽しい魔法は初めてですわ!」
純粋で可愛い。
これが未来の悪役令嬢?嘘でしょ。
「そ、それで、あの、私と…お、お友達になって頂けないかしら。/////」
「もちろんですわ。アイリーン様。」
ゔっ。笑顔が眩しい。喜びが隠せてない。
流石ヒロインのライバル。顔面偏差値高すぎる。
「…また増やしてる。」
「カルル?なんか言った?」
「沢山お友達ができた様で、良かったですね。」
「あら、やきもち?」
「なっ…ちっ…ちがいます!/////」
ふふふ。可愛い奴め。
友達ができたら構ってもらえないとでも思ってるのかな。そんなことないのに。
「カルル。心配しなくてもずーっと一緒よ。」
「そう…ですね。」
せつなげに笑う彼に、それ以上言葉が出なかった。
ううん。正確には、パパとママに連行された。終わりのご挨拶のためだ。クッキーはいつの間にかママに元に戻されていた。
残された彼は誰にも聞こえない様な声で呟く
「ずっと一緒…主人と従者…」
そして、少し離れた所でもう一人
「僕は君なら…婚約したいと思ったよ。」
最後のご挨拶を終えて、パーティーは無事終了。
結局色んな人と関わってしまった。
まぁ、一応モブ枠だし、関係ないか。
「つ、疲れた〜。カルル。もう今日はすぐ寝るわ。部屋の準備よろしく。」
「はい。」
お風呂と着替えを済ませて完全オフモード。
この世界に来て楽なことは、全部みんながやってくれるとこよね。自給自足とは真逆の生活。
「ふぅ〜。あったまったわ。後は寝るだけ。」
「その前に髪乾かすのでこちらへ。」
「お、お布団にボフンッてやらせて。」
「ダメです。風邪ひいたらどうするんですか。」
「…うー。はーい。」
ドライヤーはこの世界には存在しないが、風魔法で同じ様なことができる。
カルルは魔法の調節が使用人の中でもピカイチ。
だから乾かしてもらうのが一番気持ちいい。
「今日は楽しかったですか?」
「んー。そうね。疲れたけど、思ったよりは楽しかったわ。友達も出来たし。」
「お嬢は…これから、もっと色んな方々と出会うんでしょうね。」
「お嬢はって、カルルも一緒に行くんだからね。私一人なんて絶対無理。」
「従者ですからね。どこまでもお供しますよ。
さて、乾きました!どうぞボフンと行って下さい!」
「えっ…ちょっ(ボフンッ)ふぁあ〜やわらかぁ〜い。じゃなくて!どこの世界に主人を布団にダイブさせる従者がいるのよ!」
「目の前に!まぁまぁ、細かいことは気にしないでゆっくりお休みください。」
そう言って強引に寝かしつけられる。
あぁ、私は本当に、眠かったんだ。
「カルル…今日みたいに笑われても…私は絶対…あなたを…まもる…から…(スゥー)」
「おやすみなさい。優しいご主人様。」
眠っている主人のおでこにキスをして従者はそっと部屋を後にした。