転生モブ令嬢?
-コンコンッ
「んっ…んー…」
「お嬢。お目覚めの時間です。」
「…カルル。ふぁ〜おはよぉ〜」
いつものように顔を洗って鏡を見る。
「ふぅ〜」
桃色の髪にペリドットのようなキラキラした瞳。
傷一つない白くてやわらかい肌。
それが今の私"ティアリス=フォン=ルイワール"
もうすぐ10歳の誕生日を迎える。
ルイワール伯爵家の末っ子で唯一の女の子。
だからか、みんなから溺愛されて育ってる。
「お嬢。早く着替えてください。朝食に間に合いませんよ。」
彼はカルル=ビークリー。10歳。
彼との出会いは6歳の時。
この世界には奴隷市場というものがある。
そこから逃げてきて、伯爵家の領地内に迷い込んだのだろう。
今にも死にそうな顔で倒れていたのを発見して、魔法でちょちょいのちょい!
まぁ、みんなには秘密なんだけどね。
そんなこんなで命の恩人的な感じになってしまい、彼は私の従者になった。
あ、"今の私"や"この世界"で気づいてるかもしれませんが実は私今流行り(?)の異世界に転生系令嬢です!
まぁ話すと長くなるんだけど…
前の世界では、親に散々連れまわされて
世界各地を回る冒険家みたいなことをしてまして
嵐で船が木っ端微塵。
私の人生って…一体…ブクブク(齢25にして永眠)
ーパチッー
ここは一体…
「ここは天界と人間界の狭間だ。」
「…あなた達は誰?」
「世界の創造主。人間界で言うところの神様ってやつだね。」
ははっ…神様って本当にいるんだ…
てことはやっぱり、あの嵐で…かな。うん。
「ごめーん!人が居ると思ってなくて嵐起こしちゃった!てへ!(ゴンッ)」
「そんな謝り方があるかぁ!この子の寿命はあと60年はあったんだぞ!」
「だからって殴るなよー!暴力はんたーい!ていうかお前との喧嘩でこうなったんだから連帯責任だろ!」
「その…すまない。こやつら双子なのだがいつも言い合いばかりで、その結果嵐が起きてしまい。このようなことに。」
「…私はこれからどうすればいいの?」
「案外あっさりしてんなー!」
「驚いたりとかしねーの?」
「まぁ、人って案外簡単に死ぬからね。それにあんな生活してたら命がいくつあっても足らないくらいだし。いっそ死んだ方が楽だわ。ホッとしてる」
「あのぅ〜そのことなんだけどぉ〜」
今度は女神様か。聖母マリアってこんな感じなのかな。優しそう。
「実はあなたね、本当はあの者達の所に生まれるはずじゃなかったの。あなたの中に前世の記憶はないけれど。実はかなり酷い待遇だったから、次は幸せで温かい家庭に行くはずだったのよ。なのにごめんなさい。天界と魔界の衝突によって亀裂が生じ、今世も大変な思いをさせてしまったわ。」
「まぁでも、お父さんもお母さんも普通に好きだったけどね。ちょっと頭がいっちゃってるだけで。」
「あれは、ちょっとってレベルじゃないけど…」
「まぁ悪い人間では無かったがな。一応。」
神様達にも呆れられるって一体…。
「それで?私はこれからどうなるの?」
「実はもう決めてあるんだ!テレレレッテレー!恋愛小説の世界へ転生〜!」
「今流行ってるみたいだから!」
流行ってるって…競争率高くて需要ないんじゃ…
「需要とかメタ発言禁止ー!ブブー!」
「悪役令嬢が流行り的には一番人気だけど〜その分リスクが多いんだよね。何かしら因縁つけられたり危険な目に遭うからね。」
「よし!じゃあヒロ「モブでお願いします。」
「「え?」」
「モブで。あ、でも苦労はしたくないな。あと家族から愛されたい。」
「いや、だったらヒロインに「それは嫌」
「何故だ?ヒロインになりゃあモテモテだし。本物の白馬の王子と結婚できるぞ。」
「モブかな。」
「「何故だ!」」
「あ、でも魔法使えるなら魔力は強くしてほしい。いざとなったら一人でも戦えるように。」
「一人で戦うって…」
「何かを守るため、戦うことがあるかもしれない。無力な自分じゃ意味がない。」
「そうか。ならば魔力は最強に。本当に主要人物じゃなくていいのか?」
「うん。私はのんびり生きていきたいから。」
「では、我ら12神の名において神月 瑠衣を転生させることを決定する。」
ん?そういえば小説ってなんの小説だ?
あれ?しかも魔力最強って…普通より強いくらいで良いんだけど!モブなんだから!
「ちょっと待っ「「いってらっしゃい〜!」」
人の話を聞けぇー!
ーーパァァァアッーー
「産まれました!奥様!元気な女の子です!」
んん〜誰?
「ティアリス…あなたの名前はティアリスよ。」
綺麗な人…温かい。
ティアリス…それが私の新しい名前ね。可愛い名前。
まぁそんなこんなで、記憶を持ったまま転生し成長してきたってわけよ。
何故か伯爵っていう爵位を持った貴族の家系に転生させてくれて、何不自由ない生活を送れてるけど。
肝心の小説が何の小説かわからない!
本当、そういうところよ。
いきなり嵐起こしたり、神様テキトーすぎじゃない?
「ティアリス。来週は10歳の誕生日だね。今回は同年代の子達も呼んでパーティーを開くことにしたよ。初の社交の場になるけど気にしなくていい。嫌な子がいたらすぐに追い出すからね。」
ニコニコ顔でとんでもないことを…
「ありがとう!パパ!」
「ドレスもとびっきり可愛いくて目立つものにしたからね!」
「ありがとう!ママ!」
どんな子達が来るんだろう?
もしかしてこの小説の登場人物とか!?
まぁ私はモブだから、関わることないか〜。
伯爵って言っても領民もみんな穏やかなこんな田舎じゃ来る人だってそんな名門貴族とかでもないでしょ!
あはは〜。
しかし、彼女はまだ知らなかった。
領地が平和なのは、暮らしが豊かだから。
ルイワール伯爵領はどこよりも潤っている。
港があるので外交もできる。他の領地との関係も良好。軍事力もあり治安が良い。
何より領主である父、グランド=フォン=ルイワールはかなりのキレもので有名。それに加え、剣術などの才能も兼ね備えており努力家、誠実で信頼も厚い。
そして…ティアリスより少し濃い"緑の瞳"を持つもの
母、エスティア=フォン=ルイワールはかつて社交界の三華と呼ばれていたうちの1人。かなりの美貌の持ち主。それでいて魔力の才能もこの国で5本の指に入るほど。
モブ令嬢と言ったはずが、かなり高貴な家に産まれてしまったのだ。
しかも彼女が産まれた時、領地は暖かな光に包まれた。病に倒れていた者や傷を負った者は瞬く間に癒され、奇跡が起きた日として領民に伝わっていた。
その噂はもちろん、王都にも…。