ベールを脱いでよ
6月中旬、同居人が朝の冷たい空気日包まれる中、シーツを頭から被ってそっぽ向いてる。てるてる坊主。
シーツの上の部分を指で引っ掛けると短い丸刈りの頭が出てきた。手の腹で撫でてやるとまたシーツに頭を仕舞う。
「ばかばかばか」
彼氏が鼻声で唸る。僕はにやけ顔で煙草に火を灯す。
昨日、昼から2人で酒を飲んでとても良い気分だった。僕は彼の頭を掴んで床屋に連れていったらしい。酒を飲んで気分が良くなったところまでしか覚えてない。
パーマをかけたばっかの素敵なベリーショートは小さい子供のような、指で髪を挟んだ時飛び出ないぐらいの長さに整えられていた。
「俺をそこのガキと同じ長さに切ってくれとか頼んで、俺は拒絶したんだけど、俺の頭にガムつけやがって、それで、それで・・・」
半べそをかいてる今に戻る。目が赤い。髪も綺麗にブリーチされており、アルビノを思わせる白髪だったが、今や白黒の斑模様で、パリパリアイスみたいになってた。
僕は自分のワンレンをかきあげて、彼の正面に座り込んだ。彼は椅子から僕を見下ろし、足を僕の顔に乗せた。指で圧をかけてる。可愛い。
「うーっ、うーっ」
唇を噛んで唸る。お前がガソリンだったなら、どこまでも走れそうだ。照れて足裏が熱くなったのか、すぐ足をどかした。
シーツが宙を舞い、彼の姿が顕になる。柔らかい髪質故に坊主は可愛らしく頭に沿って撫でつけられており、ベルベットのような触り心地で、僕と比例して彼は不機嫌になっていく。
「僕も坊主にしたらエッチしてくれるの?」
「俺別に坊主好きじゃないし」
「尚更坊主続けてくれよ」
流石に怒ってる。僕は加えた煙草を口で消して彼に近寄るも、顔を手で跳ね除けられる。
「意味がわかんない、俺から何個奪えば気が済むんだよ」
童貞、恋人、髪、趣味・・・笑顔?僕は君のトロフィーをコンプリートしたいなんて言ったら刺されるのかな。体の相性だけでここまで手懐けられる君も大概だと思う。
僕は彼の口に自身の指を入れた。力強く噛まれたがそのまま口内を這いずり回ると即落ちで、力の入った拳はすぐに緩み、顔は仄かに赤みがかかる。
僕は彼に時間を奪われてる。彼も僕に時間を奪われてる。言いっこ無しに出来ないだろうか。
彼の表情がよく見えるこの髪型が好きだ。大粒の涙を指ですくって強く頭部を抱きしめた。彼の頭皮の匂いが目の前いっぱいに広がり僕はとても甘ったるい毒で他のことが考えられない。
君が可愛いから僕は苦しめなきゃならない。魅力を引き出す手段だと、そのうちわかってもらえれば・・・