序幕
昔に書きたいと思っていて途中でやめていたものがでてきたので、修正して投稿してみることにしました。現状、続きを書いていくかはわかりません。
荒れ果てた乾いた大地をただ一人、歩く者の姿があった。
街といった灰色の人工物もなければ、緑溢れる森もない。
見渡す限りにあるものといえば、漠然たる砂の地と青く澄み渡った空があるだけである。
しかし、その者はそんな周囲を気にした素振りもなく、黒曜の様に綺麗な黒髪をなびかせて悠然と歩み続けている。
世界を包む静寂を破るは、砂を巻き上げる風の音と大地を踏みしめる音のみ。
腰に剣を携えて進むその者は、休息するに手頃な岩がある場所へ辿りついた。岩に腰を下ろし、懐からボトルを取り出し、口元へはこぶ。飲料を少量口に含むと、ゆっくりと味わうように喉を潤した。
中身は残り少ない。早く水場を探さなければならなかった。
ボトルを戻してどこへ進もうか思案していた時、突如として大地が唸り声を発した。地面も微かながら揺れている。地震だろうか? いや、何かが近づいてきているのだ。
漆黒の長い髪を風に靡かせるその者は、凛々しくも鋭い眼を真っ直ぐ地平線へと向けていた。遥か遠くにあった黒い影が徐々に大きくなるにつれ、その姿が見て取れた。
その影は、ダンゴムシを彷彿させる形をしていた。しかし、軽く五メートルは越すほどの巨大さをもち、更に体を覆う殻には針のように尖った突起物がいくつも剥き出している。言うまでもなく、衝突すれば即死すること間違いない。
異形な生物が前方から向かって来ているというのに、その瞳は落ち着いていた。
座っていた岩から腰を上げたかと思えば、その足で異形の生物と対峙するため自ら進んで行く。
異形の物は、目前からやってくる黒い外套を羽織った人物の存在を認め、更に勢いを増した。
互いが衝突するまで残り五十メートル。だが、どちらも止まらない。留まる足を持たない。そうすることが正しいのだと、避けることは間違いなのだとでも言うのが如く。
黒を身に纏いしその者は、腰に提げた剣の柄に触れた。土煙をあげながら迫りくる異形に対し、まるで恐れを感じていないかのように悠然と、堂々と、躊躇なく歩を進める。
――危ない! この両者がぶつかるかという瞬間を目にした者は、誰もがそう口にしたことだろう。
刹那、閃光がほとばしった。竜巻と見紛うほどの激しい風が吹き荒れた。
その時のことを異形の物は理解できたであろうか? 否、自身が今どうなっているのかさえ知ることはないだろう。
……既に息絶えているのだから。
異形なる生物を真っ二つに切断したその者は、それが当然であるかのように再び歩みだした。
これから語られるのは、終わりを告げた世界の中でもがく者たちの物語である。
飽き性で面倒くさがりなので、「面白そう」「続きが読みたい」と思って頂ければ、応援して下さると励みになります。




