赤の王子
「おい、」
声をかけられて顔を上げると美少年がいました。
「オマエ、俺が声をかけているのに無視をするな。」
「申し訳ありません殿下…」
おっと記憶が混同してて私はよくわからなかったぞ。するっと言葉は出てきたけど誰なの??
黒髪の美少年はソファにドカッと偉そうに座る。
………そう、思い出した。
彼の名はクローズ・ビレドール……我が赤の国の王子だ。婚約したのは私が猛アタックしたから。
彼も私が馬鹿で扱いやすそうだったから婚約したんだろう。
「せっかく俺が来てやったんだ。なぁ?婚約者サマ??」
……………腹立つ~~!!!!前の私こんなやつのこと好きだったの!?信じらんない!!!
「…態々御足労感謝致します。ですが、もう此方へ出向かなくて結構ですわ。
殿下は私の事を好ましく思ってないようですし、私は最近気になるお方ができて………
お互い利害が一致していますわよね?
婚約破棄をしてくだされば、お互い幸せになれると思うのですが」
いっけなーい☆イライラMAXで思わず婚約破棄宣言しちゃった!
でも、これがお互い幸せだからいいと思うのよねっ!
対する殿下は俯いて、表情を窺えない。
やらかした?不敬罪で処される?いや、まだ、お姉ちゃんに会えてないからまだ死にたくない………
「あはははっ!!面白い女だな!!!婚約破棄はやめだ!オマエ、俺の傍から離れるんじゃないぞ。なぁ、サーシャ」
ひえ……。ははっ、面白い女!って感じですか…………結構です…………
ていうか!このまま成人迎えたらこいつと結婚するってこと!?無理無理!!!私ストレスで死んじゃう!!!!!
あれから殿下は少しでも時間があれば私の元へと通った。
まるで今まで接してこなかった時間を埋めるように。
「サーシャ。今日は何をする?」
「で、殿下のお好きなように………」
「俺が好きなのはダメだ。俺はお前の好きな物が知りたい。じっくり、教えてくれよ?」
私の手をとる殿下の血のような赤の瞳は爛々と、新しい玩具をみつけたと言わんばかりだった。
………拝啓お姉ちゃん。私はここから逃げ出したいです。




