2day ③
ーーーー 2 day ③ ーーーーーー
火薬の匂いが充満したコンテナヤードには戦う2人の姿があった。
片手に出現させた銃で散弾を打ち続ける。弾切れになった銃を手放すとその銃は消失し、また新たな銃が手元に出現し、相手に向かって発砲を再開する。
だがもう一人の神器使いはその弾丸を剣で弾きながら空を縦横無尽に飛んでいる。
「なあ、あんた。そろそろ降参しないか?」
動きを止め、剣を持つ神器使いが話す。
その問いかけに銃を持つ神器使いは無言を貫き、再び発砲を続けた。
放った弾丸は相手の頬をかすめ、後ろのコンテナに当たりその直後に爆発した。
「....そういうことか。頑固なんだな。意外と。」
そう呟くと空に浮かぶ銃の神器使いに一気に距離を詰め、攻撃を仕掛ける。
銃を持つ神器使いは銃剣を出現させ応戦する。剣をお互いに斬りつけあい、やがて銃を持つ神器使いの銃剣が弾かれる。手元に何もない銃を持つ神器使いは右腕を顔の前に出し、剣の直撃を防いだ。
「右腕、貰ったぜ。」
そう微笑むと、銃を持つ神器使いは距離をとり左手に新たな銃を出現させ、右腕に打ち込む。その瞬間に右腕が回復し剣を防いだ傷があっという間になくなった。
「....ありかよ。」
剣を持つ神器使いは再び距離を縮める。
剣が振り下ろされる時、銃の神器使いは左右の手に新たな銃を出現させるとすぐに一発ずつ発砲した。だが、その弾筋は相手に向けられてはいなかった。左手で撃った弾丸に右手で撃った弾丸が当たり、その瞬間銃を持つ神器使いの前には透明のガラスのようなシールドが出現し相手の剣撃を防いだのだった。
剣を弾くとシールドは消え、瞬時に新たな銃を出現させ、カウンターを仕掛ける。
シールドにより、剣撃を防がれた剣を持つ神器使いは、新たに出現した銃を即座に反応して上半身を大きく後ろに反り弾丸を躱し、その勢いで左足で持っていた銃を蹴り飛ばし、距離をとった。
「驚いた。なんでもありなんだな。あんたの神器。ずるいんじゃないのか。」
「これが本当の戦いというものだ。」
そして、蹴り飛ばした銃は偶然かそれとも必然かその戦いを見ていた真也の前に落ち、自分の存在を彼らに認知させてしまった。
銃の行方を発見した二人は同時に驚愕した。
銃を持つ神器使いは真也に銃口を向ける。
剣を持つ神器使いは真也に向かって飛んでくる。
発射された弾丸は真也に向かって一直線に飛んできた。その弾丸は剣を持つ神器使いに弾かれる。だが、弾丸はその後にまた二発目、三発目と連続で発射された。その弾丸を弾きながら、剣を持つ神器使いは叫ぶ。
「何やってんだ!とっとと逃げろ!」
そう叫ぶ剣を持つ神器使いを背に真也は来た道を辿る。その戦いから逃げるように。初めての逃走を彼はしてしまった。
「どうして殺さない?見られたんだぞ。」
「無関係な人間を殺してどうなんだ。それにそうなったら俺の願いの意味がなくなっちまう。」
「....後悔するぞ。あいつを殺さなかったことを。」
「しない。これだけは言える。」
その後、お互いが何も語らず、ただ睨み続け、やがてどちらからという訳でもなく、二人は姿を消した。
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戦いの場から、少し離れた場所で真也は身を潜めていた。
(気配が消えた...?)
気配が消え少し安心したが、また後悔と同時に疑問が生まれた。
あの時、どうして俺を庇ったのか。そして、どうしてあいつに攻撃しなかったのか。背中を向けたあいつに剣を振るうだけで一人は殺せたはずだったと。
(俺はあの時神器を使っていなかったから、神器使いだとわからなかったのか?)
こうした疑問を考えながら、コンテナヤードを後にしようと再び歩きだした時。
「あの〜、手を貸してもらってもいいですかね?ちょっと腰抜けちゃって...」
コンテナに背をつけその場に座り混んでいる女性。
やがて雲に隠れていた月が顔を出し、女性を月明かりが照らし、正体を露わにさせた。
そこに佇むのは、真也が唯一今の暮らしでまともに会話ができる女性。
会社の後輩、神条天音だった。
ーーーー2day ③ーーーーーー
終