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12 days  作者: ペペロンチーノ
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1day ②

ーーーー 1 day ② ーーーーーー


振り下ろされる瞬間だった。

一瞬、その一瞬だが、全てが止まって見えた。そして電撃のように頭の中を駆け巡る過去。

これが走馬灯なのかと、彼は悟る。

(まだ!早い!)

やはり一瞬は一瞬だった。そんな走馬灯を一気に駆け巡り、現実に戻る。剣が振り下ろされるのにはまだ時間がある。こちらの神器をだす余裕が。

右手に意識を集中させる。身体中のありとあらゆる神経を研ぎ澄まし神器をイメージする。

間に合え。

何度も心の中で叫び続ける。

閃光の中から現れたそれは男の剣を見事に弾き返していた。

「!?」

そして一瞬の間もおかず次の反撃を繰り出す。

1撃。2撃。3撃と。

自分でも驚いている。神器を具現化させたはいいがここまで相手の剣撃に反応し戦えるとは思っていなかった。まるで身体が今まで戦っていたのを覚えているように。考えるより先に身体が反応している。

しかし、男が左手を横に振ると男はいつのまにか背後にまわっていた。右手の剣を真也の首にめがけ振り下ろされる。真也はそれにしっかりと対応し、剣撃を躱す。そしてまた男は左手を振る。その瞬間に思いがけない場所、真也の死角にいつのまにか回り込んでいたのだ。距離をとる真也だが、その間合いも一瞬に詰められ新たな攻撃を加えてくる。

「どうなってんだ⁉︎」

考える時間もなかった。

男との間合いは常に1m以内にあり剣を振るうか遮るかしかなかった。

「俺の攻撃に反応できるってことは神器のランクはそこそこってことだな。あんた。」

攻撃を止め男は語り出した。

「なんだ。話はできるんだな。」

「おいおい。そりゃあそうだろ、俺たち全員人間なんだぜ。これでも。」

「安心したよ。どいつもこいつもまともなやつじゃないと思ってたからな。」

「まあ。」

男が真也の言葉を遮り、睨む。

「この戦いに参加してる時点でまともな奴は一人もいねぇがな。あんたも例外じゃないんだぜ?」

再び空気が張り詰める。最初の時のように肌に当たる空気が痛い。

「今戦ってる奴らはそりゃもう躍起になってるだろうよ。なんせ時間がねぇんだからな。」

「時間だと?」

「なんだよ。あんた、聞いてねぇのか。この戦いのタイムリミット。」

「聞いてないぞ!タイムリミットだと?」

迂闊だった。確かに時間を決めずただ戦うだけの日々が続くとは思ってなかった。

「はっはっは、そりゃぁおもしれぇな。じゃあ教えてやるよ。」

息を呑む。だが男は何も言わず軽口にいった。

「12日だ。」


「12・・日・・」

短い。その短期間で決着がつくのだろうか。

自身の力もまだ試したことがない真也にはその言葉で緊張を増幅させていった。

「さてと、まぁ話すことも話したし再開しようぜ。」

刹那、気付いた時には男は目の前に現れ剣を振るう。振るわれた剣を自身の神器で弾く。

(反応はできている)

一瞬にして雰囲気は戦闘体制に入り、剣を構える。

「使ってみるか。」

神器に意識を集中させる頭ではわかってないが身体が勝手にこうしろと命令を下す。神器は黒く輝き歪な闇を纏っていく。

それに気付いたのか、男は形相を変え左手を振り上げる。

その瞬間に真也は神器を男に突き出すように向ける。

その瞬間、真也の神器から放たれた闇は鋭利な形に変え、男の身体に突き刺さった。

突き刺さった瞬間、男の身体にはいくつもの切傷が生まれた。深いものや浅いもの傷跡は大小様々なもの。

男は一瞬にして深手を負いその場に跪く。

「なんだ・・と・・?」

男は今起きたことを理解できず、その場で項垂れる。真也も自身の攻撃に驚く。ここまで強い斬撃を一瞬で男に喰らわせたのだ。

「てめぇ、どんな力だ、そりゃ..ぁ」

意識が霞んでいるのか、言葉も途切れ途切れになっている。立つことも困難なほどの傷を受けている男はただ冷たいコンクリートの上でのたうちまわる。

「あと一撃...!」

あと一撃当てれば必ず男は死ぬ。自分の夢に一歩近づくことができる。しかし。

あと一撃を放つのに躊躇いを感じてしまう。

当たり前のことだろう。ほんの数分前にあった人間を手にかけようというのだ。今まで人を殺すなど考えもしなかった真也にはとても重い決断だった。

(....覚悟を決めろ!俺が望むものを掴むためだ!やるしか..ない!)

再び神器に闇が纏う。先程と同じ闇。そして男に向け闇を放つ。最初の一撃と変わらぬ鋭利な闇に形を変え、男を貫く。

が。

男に変化はない。特に新たな痛みを感じる姿も見せない。

まるで、何も攻撃を喰らっていないかのように。

(何故だ?なぜ効いていない⁉︎)

真也自身も分からず戸惑っている中、男が苦しそうに囁く。

「んだ..よ..何にも響ねぇぞ..おい.」

痩せ我慢の挑発の通り先程の一撃からダメージは変わっていないように見える。

「あーあ..しょうもねぇな..おれも..おまえ...も!」

最後の一言に力を込めその瞬間に立ち上がった。

「立てるようにはなったが..ちぃとキツイなこりゃぁ」

「...!逃すか!」

立ち上がった瞬間を逃す訳にはいかない。ここで仕留めなければ。ここを逃せば次がない。そう彼は感じ取っていた。

神器の能力を使うのをやめ、剣だけでトドメを刺すことに切り替え間合いを詰める。男の目の前で立ち止まり、剣を振り上げる。

「これで...!」

終わりだと。覚悟を決め振り落とした。



気付けば周り一面は赤一色に染まっていた。

足元には先程までは息をしこの赤を宿し生きていた肉塊が無様に転がっている。

殺ってしまったのか。だが、真也は後悔を感じず逆に達成感を得ていた。

こんなものなのか。人を殺すのは。

あっけなく決着がついた真也の初めての戦いはただ達成感だけを残し終わった。

「まさか。一瞬で終わらせるとはな。」

新たな声に身が引き締まる。消えかかっていた緊張感は再び戻り、辺りを見渡す。どこにもその姿を見せず冷たい声だけが脳に響く。

(死体が!?)

気がつけば男の死体がなくなっていた。そして電柱の上から影が真也を覆う。

電柱に立っていたのは男を片手で担ぎ大剣を右手に握る新たな男が立っていた。

「迂闊だったな。その様子だと、神器使いの戦いは初めてだったようだな。」

「いい経験だ。人間は失敗から学ぶことが多い。この経験も君のためになるだろう」

そう言った瞬間、男の死体を左手で貫き、輝石を取り出した。

「なにを...している!」

取り出した輝石を男は身体に無理矢理捻りこむ。

「この男、神崎真琴の神器は今、槙島原理が受け継いだ!」

声を張り上げ、男、槙島原理はそう宣言した。

「受け継ぐ..だと?どういうことだ!」

「今この現実を受け止めろ。この経験がまた一つ君を進化させる。」

そう告げると原理は左手を高く上げ振り落とした。そして彼は先程の神崎真琴のように一瞬にして姿を消した。



一夜にして急激に変化した深神真也の日常はこうして始まりを告げた。

ーーーー1day ②ーーーーーー



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