1 day ①
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「本当だったのか。」
朝目を覚まし最初に見た右手は、昨晩の邂逅を事実だったことを示した。
「っていってもどこに他の神器使いがいるっていうんだよ。」
彼はそう独り言をつぶやくと、毎日のルーティンをこなすため、いつもの仕事の準備を始めた。
昨日はあれほど覚悟を決めたが、何をすればいいのか分からず漠然としてしまい、ならばやることは必然的にただルーティンをこなすことに絞られていった。
そしていつも通り、ただただ仕事をこなし終え、夜の帰り道を歩き家路へ向かう最中だった。
ー身体が震える。
自身の異変に気付いた刹那、右手をとっさに構える。
「まさか、こんな唐突だとはな。」
震える足を何度も叩き、鎮めようとするが、震えは止まず、その恐れが伝達したかのように震えは手にまでやってきた。
ー来るのか⁉︎今!ここに!
震える手足に言い聞かせるように力を込め抑え込む。少しはマシになった構えを崩さず留めようとするだけで必死だった。
(この状態で戦闘になれば確実に致命傷を喰らうことになる。だが、やるしかない!)
その覚悟は戦いのものなのかそれとも死についてなのかわからず曖昧なものだったが、少なからずそれがこの状況下での彼を変えていった。
彼は身構える。
1秒。まだ敵に動きはない。
2秒。神器を出しておくべきか。
3秒。風向きが変わった。
4秒。明確な殺意の視線。
5秒。今だ。
彼は右手から神器を具現化し視線の先を見つめる。
ーだが、
「消えた?」
今まで彼を見つめていた殺意の視線はまるで風に流されたかのように消えていった。まるでそんなもの無かったかのように。自分の考えすぎだったのではないか。ただの疑心暗鬼。そういう自分にとって良い方にばかり短絡的に結びつけてしまっていた。
そして再び、家路に戻る。
その直後だった。
見えない斬撃が2つ、彼の横を通る。
「・・・・」
上を向くと一つの黒い影が月明かりに照らされ立っている。
何も言わず、ただこちらを睨んでいる。
右手には一体化しているかのような短剣らしき神器が埋め込まれている。
「動くな。」
刹那。目の前から消えた敵は瞬く間に彼の前に現れた。
大きく振り上げられた剣は真也に向かって振り落とされた。
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終
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