3day ⑤
ーーーー 3 day ⑤ーーーーーー
「ーそこから一歩も動くな。動けば殺す。」
天堂、そして真也の動きを止めたその声の主は、輝かしく光を放っていた。
右手からは、常に刃が神々しく光り、周辺がはっきり見えるほどだった。
「まずは、名前からだろ?銀ピカ。」
真也から目を逸らし、ただ一点に視線を変えた天堂は問いを投げる。
天堂は真也よりも早く目の前にいる敵に対しての警戒心を最大まで膨らましていた。
「初めて見る面だが、新人か?それともただ、身を潜めていただけか?」
とにかく何か一つ、どんな小さな情報でもいい。敵に対する情報が欲しかった天堂は問いを連続で仕掛ける。
「よく喋るな、おまえは。それで自分は隠しているかもしれないが。」
左腕をすっと前に突き出す。しかし、その左腕に繋がっているのは左手ではなく、右手だった。銀色はその右手で天堂を指差しながら。
「隠し切れていないぞ。その恐怖心は。」
その瞬間、天堂の背中に一気に寒気が走る。
背筋を伝う大量の汗がそれをさらに増幅させる。
そう。天堂は誰よりも姑息で狡猾で入念な臆病者であった。
誰よりも早く、多くの情報を手に入れ、誰よりも優位の立場に立たなければ落ち着かない。それができなければ何も仕掛けることができない腰抜けだ。
今回の真也との戦いでは、情報量ではるかに上回っていたゆえの態度であり、神器の能力までの情報を得ることを望まなかった故の本来、天堂ではありえないイレギュラーな戦闘だった。
そして、またしても、天堂にとってイレギュラーな戦いが始まろうとしている。
「どうした。視線だけでは人は殺せないぞ。」
「・・・・・」
何も言い返さず、ただ、見つめる。
だが、見つめているのは、橋の上に立つ者ではない。
空虚。ただそれだけを見つめ、考えているのはこの場からどう逃げ出すか。それだけだった。
(・・・真也を囮にして、上手くすきをつくるしかないか。)
いくつもの考えた作戦の中の最もリスクが少ないこの作戦を実行することにした天堂は、真也に近づき、悪魔の言葉を呟く。
「真也、俺と手を組め。」
「奇遇だな、俺もそう思ってた所だ。」
二人の肩がくっつくほど近づき、相手からも手を組んだと思わせた。
「真也、俺が今からお前に向けて、攻撃する。かなりでかいのをな。その攻撃を神器で吸収してあいつに叩き込め。そっからは俺が応戦してぶった斬る。どうだ?」
「それしかないだろうな。任せたぞ。」
「私はそちらの方は相手にしていないのだが。手を組んでしまったか。残念だ。」
ため息をついた後、ゆっくりと右手を振り上げ、力を溜め込む。
「くるぞ。3カウントでやる。いいな?」
「・・・・あぁ、 全力 で頼むぞ。」
「あぁ、わかってる。」
「3...」
天堂が真也に共闘を持ちかけたのには理由がある。
戦いの中で真也の性格を理解し始めていたからである。
一つは前夜。戦闘を目撃され、真也がそれに怯えて見ていたこと。そして、先程の戦闘中。真也は口車に乗せられやすい、つまり、騙されやすい性格をしていると踏んだためだった。
始めたばかりの神器使いの戦いで、怯えた真也に手を差し伸ばせば、必ず乗ってくると確信したからこその判断だった。
決して人の手を借りず、自分の力だけで戦う天堂にとって、元々共闘など端から眼中になかった。
「2...」
天堂が神器に力を込める。振り下ろす先の真也はそれを横目で見つめ、準備をしている。
「1...」
天堂が十分に力を溜めたと同時に相手の準備も整った。
緊迫した空気の中、聞こえるのは、風を切る音のみ。
天堂の口元が緩みだす。
「0!」
その瞬間、天堂は横にいる真也目掛けて神器を振りかざす。それに合わせ、真也も神器を発動し、力を吸収した。
相手もカウントと同時に右手を振り下ろす。それに間に合うように真也も吸収した力を放とうとした。
それを横で見ている天堂の口元は完璧に弧を描き緩み切っていた。
だが、真っすぐに伸びるはずの闇は、こちらに向かって突き出され、天堂の元へと伸びていく。さらに、橋の上から放つ光も、まるで追尾弾のようにこちらを目指し駆けてくる。
その瞬間、弧を描いていた天堂の口元は真一文字になった。
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終
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