表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

道中

イギンの街を出て3日が経った、人数が減ったので荷台の中は前と比べると相当静かになっていて少し寂しさを感じていたり感じていなかったり、だが子供6人分減ったので荷台の重さが軽くなり少しだけ移動スピードが上がった。


次の街までは後2日特に急ぐ理由もないのでゆっくりと行くつもりだった、だが今は馬車のスピードを最大限に上げている、理由は子供達が暇つぶしに風景を見ていてそのうちの1人がスキル《遠視》で狼の魔獣に襲われている馬車を発見したからだ、馬車に乗っている若者は魔法で必死に追い払おうとしているが魔獣の数が多いので苦戦している。


馬車との距離はあと1キロ、ユウヒはナズナに弓を渡す。


「ナズナ!」

「はい!《散弾》!」


ナズナの魔力で作られた矢はヒュンッと風を切り飛び空中で7個に別れる、そして正確に魔獣の脳天を撃ち抜いて行く。

しかしその内の1匹は防御系スキル持ちだったようで矢を防がれる。


「1匹、逃しました!」


ナズナが再び魔力で矢を作ろうとするがさっと手を出してユウヒが止める。


「魔力がもったいない、あとは俺がやる」


ナズナは魔力の扱いは上手いが魔力量があまり多くない、使いすぎて倒れられても困る。

ユウヒは左手を手を銃のようにして指先に少量の魔力を貯め狙いを定める。


「《風切》」


放たれた不可視の斬撃は防御スキルを切断し若者に噛み付く寸前の魔獣の首を音もなく切り落とした、魔獣は首をなくし断面からは血が溢れ出し倒れる。

ユウヒ達は馬車の速度を落として若者のところまで行き、馬車を止める。


「いや〜、助けていただきありがとうございます、私はユール商会の下っ端、コルと申します」

「俺は奴隷商人のユウヒです、よろしく」

「あぁ、あなたがあのユウヒさんですか」

「なんだ、知ってるのか」


コルは「あなたは有名ですからね」と言って後ろの子供達をチラッと見る。


「貴方はSランク冒険者ですから、よく噂は聞きますよ、王女専属騎士団の2番隊隊長をしていたと聞いていましたが奴隷商人になられたのですか」

「まあ色々と心境の変化があってな…」


ははは…と笑いながらユウヒは目をそらす、コルも何かを察したのかこれ以上は何も聞いてこなかった、だがまた襲われると困るという事だったので途中までは一緒に行くこととなった。


その後、日が暮れる前まで馬車を走らせて場所を決めて野宿することになり、夕食を作り始める、今晩の食料はコルが出してくれるそうで野菜たっぷりのスープと肉を焼くことにした。


「お強い方が一緒に居てくれると助かります」

「それは良かった」

「あの…スープどうぞ」

「ああ、ありがとうございます」


ナズナが夕食を作り終えて配り始める、子供達も嬉しそうにテーブルに座っていただきます、と言って食べ始める。

コルが話があるとのことだったのでユウヒとコルは小さなテーブルを出して別のところで食べる。


「で、話なんですが、貴方の奴隷に《収納》スキル持ちはいませんか?いるなら言い値で買いますが」

「ああ、1人いる、値段は40万でどうだ、勉強も体術や魔法も教えてある、護衛がわりにもいいと思うんだが」

「それはいいですね、ぜひ買わせていただきます」


ユウヒとコルはさっと食事を済ませて《収納》持ちである女の子、エイナを呼び出す。


呼ばれてすぐは何か悪いことをしてしまったのかと思い慌てていたが「この人がこれからお前の主人だ」と伝えるとパッと笑顔になる。


「商人さん、よろしくお願いします!」

「こちらこそ、これからよろしくお願いしますね」


コルが軽くエイナの頭を撫でるとエイナは嬉しそうにえへへと笑う、そして奴隷契約をおわらせるとエイナは「私買われたよー!」と言ってみんなのもとに走って行く。


「珍しいですね、奴隷が買われて喜ぶのは」

「あんたが優しそうだから安心したんじゃないか?」


ユウヒが揶揄うように言うと「そうですかね?」と困ったように笑った。

そして次の日、コルは別の方角に向かうようなのでエルナと別れる時が来た。


「エルナ、これからちゃんと頑張るんだぞ」

「うん!ユウヒにいもお仕事頑張ってね!」


エルナはコルの馬車に乗り「またね〜!」と手を振り続けた、ユウヒ達もコル達が見えなくなるまで手を振り続けた。


「じゃあ、行くか…」

「はい、行きましょうか」


そう言ってユウヒ達も馬車に乗り次の街に向けて進み始めた。


「もしかしてユウヒさん、だんだんみんないなくなって寂しいんですか?」

「別に寂しくはないさ」

「そうですか、なら良いですよ、でも寂しくなったらいつでも言ってくださいね」


ナズナはにっと笑い荷台に移動して行く。

次の街まであと一週間ほど、まだまだ道のりは遠い。

ユウヒはまた1人減ったから食料余るかもなと思いながら馬車を少し加速させる。

今日の風は少し冷たい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ