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街 後半

夜、街の住人達は寝静まり明かりが消え真っ黒に染まっていた、ユウヒも明日の奴隷販売に向けての準備を終えてベットに入り目を閉じていた。

するとギギギっと扉がゆっくり開く音が聞こえる、ユウヒはすぐに気がついて警戒を強める。


(こんな時間に誰だ…?やはり温厚な性格の人が多いとはいえ鍵をかけなかったのは失敗だったか…)


暗殺か奴隷の強奪か目的は分からないがユウヒは耳をすませ義手に仕込んだ小さなナイフを取り出す。


(足音からして人数は一人、やけに軽い足音だ…女か)


ユウヒはそのまま寝たふりを続ける、最大限引きつけて取りおさえるためだ、そして足音はだんだんと近づいてきてベットの前で止まる、そしてゆっくりと布団に入ってきた。


ユウヒはおかしいと思い侵入者の方を見る、するとそこにいたのはナズナだった。


「なんだナズナか…」

「ユ、ユウヒさん、起きてたんですか…」


ユウヒがはぁとため息をつきナイフを直す、そしてナズナは顔を真っ赤にして慌て始める。


「いや、違うんです!これはその…夜這いとかではなくてですね!ちゃんとした理由がありまして!」

「分かったから大声を出すな、子供が起きるだろ」

「はい、すいません…」


ユウヒはとりあえずナズナを落ち着かせようと深呼吸をさせた、そしてしばらくしてようやく落ち着いたのか話を始めた。


「あの、明日奴隷販売の日じゃないですか…」

「ああ、そうだが」

「もしかしたら、こうしてユウヒさんと話せるのも今日が最後になるかもしれないと思うと、なぜか怖くて…」


ナズナはユウヒの身体をぎゅっと力強く抱きしめていた、だがその手は微かに震えている。


「今までだって何回もあっただろ?」

「はい、でも本当はいつも怖かったんです、あなたと離れるのが…母に捨てられてからずっとあなたの隣にいて家族ってこんななのかなって思ったりして…本当に毎日が幸せで…でもいつも奴隷販売の時になると自分は奴隷なんだって思い知らされて…」


そう言ってナズナは静かに涙を流した、いつも元気で笑顔の彼女がだ、ユウヒは彼女と3年も過ごしていながら泣く姿を見るのは初めてだった、だが別れが嫌だと言ってもいつかは別れる事になる、それは仕方のない事なのだ。


「俺は商人でお前は売り物だ、それ以上でもそれ以下でもない…ただ、俺は出来るだけお前達が幸せに暮らせる主人に売りたいと考えている、これ以上は言わん、明日も早いんだ寝るぞ」

「はい…」


翌朝、目が覚めるとナズナはユウヒの隣で眠っていた、どうやらあのまま部屋には戻らずここで寝てしまったらしい。

ユウヒは彼女を起こさないようにそっとベットから出て今日の準備を始める。


「よし、行くか…」


それからしばらくした後、街は賑わい始める、そしてユウヒ達も奴隷商人を始める、テーブルを置いて奴隷達を座らせていく、首からかける値札を一人づつ渡していく。

全員に20万と書いた値札を渡していくがナズナに値札を渡す寸前に昨日の事が頭によぎったユウヒはため息をしながら50万と書いた値札を渡す。


「あの、ユウヒさん、いつもより値段が高いのですが…」

「お前先月で15歳だろ、値上げだ値上げ、さっさとそれつけて座れ」


それを聞いたナズナは嬉しろうに値札をかけて椅子に座る、奴隷販売開始だ。

少しするとおじいちゃんおばあちゃんがぞろぞろと集まってくる、やはりどこも若者不足なようだ。


「すいません、この子買い取りたいのですが」


最初に選ばれたのは10歳の少年であるアランだった、勉強もできるし力仕事も得意なのでこの街でも十分活躍できるだろう。


「お買い上げありがとうございます。では契約をいたしますので」


契約に必要なものは少量の血液のみである、ユウヒはおじいちゃんの指先をほんの少し針で刺して血液を首輪につける、これで契約は完了だ。


「じゃあ、アランこれからここで頑張るんだぞ」

「うん、ユウにいちゃんも頑張ってね!」


そしてアランはおじいちゃんと手を繋ぎながら歩いて行った。

その後、何人かがナズナの方を見ていたが値段を見て諦めていった。

そうして夕方になり販売も終了にする。


結果は男が4人、女子が2人売れ合計で120万だった。

予想していたより多く売れたので売り上げは上々だろう。


「皆さん男の子ばかり買って行きましたね」

「ああ、これでうちの店の男は俺を含めて2人か、女子が多いと肩身がせまいな」

「また旅が静かになりますね」

「静かな旅ってのもまあいいだろうさ」


そう言ってユウヒ達は宿屋に戻っていった。


「おかえり、ずいぶんと人数が少なくなったね、まあ当然かここはいつでも人が足りてない」


宿屋のおばあちゃんはそう言いながら笑顔で夕食のお皿を運んでいる。

ユウヒは子供達は部屋でそれぞれ遊んでいて何もすることがないので「手伝いましょうか?」と聞くと「お疲れだろ?座ってな」と言われて素直に座る。


「あの女の子、美人だから買われると思ってたんだけど買われなかったみたいだねぇ」


と言いながらおばあちゃんはニヤッと笑う。


「もう15だったんで値上げしたんですよ」

「へぇ〜そうかい」


おばあちゃんはまだニヤニヤしたまま料理を運んでくる、ユウヒは軽いため息をつきながら懐から写真を取り出す。


「なぁおばあちゃん、あんた元情報屋だろ?この男の場所知らねえか?」


すると途端におばあちゃんの目つきが変わり写真を受け取る。


「こいつかい?あんたが騎士をやめた理由は」

「そんな大層なもんじゃないよ、仕事のついでに探してるだけだ」


おばあちゃんは写真をテーブルの上に戻し店の奥に入って行く、そしてしばらくして一枚の紙を持って戻ってくる。


「この紙には前にこの男が目撃された場所が書いてある、いくらで買う?」

「100万だ」

「お買い上げありがとう」


ユウヒはおばあちゃんから紙をもらう、正直なところこの街に来たのはこの情報屋と会うためでもある、ユウヒの本来の目的はこれで果たせた。


「魔族領域にある国、エルニーアか」


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