街 前半
南北の国エルミナ、その領土にあるイギンの街は温厚で優しい人が多いらしく国からの評価も上々、農業が特に盛んで豊かな街、他国から農業を教わりにくる人も多数いるらしい。
ただ問題があるとすれば老人が多い事、つまり跡継ぎが少ない、3年前の魔獣達との戦争に参加した若者のほとんどが戦死したからだ。
あの時は人手不足で奴隷もよく売れていた、ユウヒが騎士に売った奴隷の一人が戦争で大活躍したと風の噂で流れている。
「ここでの目標は2、3人かな」
イギンの街についたユウヒ達は今街に入るための手続きをしていた、さすが他国にも人気の街だ、とずらっと後ろに並んでいる他の馬車を見ながらあくびをする、並び始めてかれこれ二時間が経っているので流石に暇になる。
「はい、次の人」
ふと気づくとユウヒの番になっていて門番の前で馬車を止める。
「入国の理由はなんでしょうか」
「奴隷販売だ」
ユウヒから身分証代わりの冒険者カードを受け取り確認が終わり販売許可書とともに返してくる。
「ぜひ元気で若い子をお願いします、この街には若い者が少ないのでね」
ユウヒは言われなくてもそうするつもりだ、と返し馬車を動かし街に入る。
辺りを見渡すと技術を学びにきた若者はいるがそれ以上に老人が多くいた。
「まずは、食料と宿かなぁ」
待っている間に日が傾き始めたので馬車を動かしまずは宿屋を探す、ユウヒを含め12人いるので最低でも4部屋取らなければならない、幸いユウヒの奴隷達は逃げ出そうとするものは居ないのでその辺りは安心できる。
そしてしばらく馬車を走らせていると良さそうな宿屋を見つける、早速馬車を止めて手綱をナズナに任せ宿屋に入る、扉を開けるとカランカランと音がなり奥からおばちゃんが「いらっしゃい」と出迎えてくれる。
「3人部屋四つ、二泊分と食事、空いてますか?」
「えらく大人数だねぇ、大丈夫空いてるよ」
「あと馬車を止める場所を貸して欲しいのですが」
「横にあるから勝手に使っちゃって」
ユウヒは料金を払い宿屋から出てナズナの下まで行き宿の隣に止めるように指示する。
馬車を止めて子供達を全員荷台から下ろして再び宿屋に入り、おばちゃんに案内されて全員を部屋に入れ大人しくしているように伝える。
「ユウヒさん今から買い物ですか?荷物持ち手伝いますよ」
「ああ、助かる」
ユウヒとナズナは食料を買いに出かける、食料は長持ちするものを選ばなければならないため慎重に選ばなければならない、三ヶ月前ほどに寄った街では長持ちはするがまるで粘土を液状にしたような食べていられない物を買ってしまった事もある。
原因の一つはユウヒが金が入った袋をカウンターにどんっと置いてこれで買えるだけの保存のきく食料を、などと言ったためではあるが、きっと売れ残りを詰められたのだろう。
なので二人の顔はまさに真剣そのものだった、あの地獄の日々を再び味わうわけにはいかない、そしてついに店につく、ここからユウヒ達の戦いは始まる。
「まずは干し肉と、あとはスープ缶と魚の缶詰…」
「この乾パン、というのも買ってみたいのですがいいですか?」
「パンってついてるぐらいなんだから美味しいのかもしれないな…」
だが初めてのものだ…!と二人は悩む、これでもし外れだったら、と真剣に考えている二人を苦笑いで見ている店員の方を同時にバッと振り向く。
「店員さん、これは…食べられるものですか?」
「え?いや、食べられますが…」
「その言葉…信じて大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫ですよ、食べられないものは置いていませんから!」
二人はジーッと店員の目を見て、じゃあ買う、と言って干し肉、スープ缶、乾パン、魚の缶詰を大量に買う、これで一ヶ月は持つだろう。
二人は紙袋いっぱいに詰まった食料を持って宿屋に戻っていった。
宿屋に入るとおばちゃんが夕食の準備をしているのかいい匂いがしている。
「ああ、帰ってきたかい、二人で仲良く買い物楽しかった?」
「ただ食料買ってきただけですよ」
「そ、そうですよ、仲良くなんて」
分かってる分かってる、とでも言いたげな顔でおばちゃんはニヤケていた、ユウヒはよく分からず首を傾げているがナズナは少し頬を赤らめている。
「とりあえず荷物置いてきな、夕食の時間だよ」
二人は分かりました、と言って部屋に入っていった。
ちなみにおばちゃんのご飯はとても美味しかったそうです。




