プロローグ
光の届かない暗い洞窟の中で、恐らく10歳くらいであろう黒髪の少年が右手を頑丈な鎖で繋がれ拘束されてていた。
ジャラジャラと金属の擦れるような鎖の音だけが響く、繋がれている部分は何度も引っ張ったのだろうか血の跡がべっとりと付いている。
少年は同じように鎖に繋がれて生き絶えたであろう成人男性ほどの大きさの骨を見つめる。
「…こんな…ところで…死んでたまるか」
少年は近くに落ちいてた大きく尖った石を持ち上げた。
そして大きく深呼吸をし、覚悟を決めて全力で右手首にめがけて石を振り下ろす。
グチャという音が洞窟内に響く、石が深く突き刺さり右手からは赤黒い血がどくどくと流れ出てくる。
「っ!…ぐぅううぅ…!」
激痛で気を失いそうになりながら何度も何度も石を右手首めがけて振り下ろす、隣にある骨のようになって死んでたまるか、という一心で。
肉は抉れ、骨は潰れる、ぐちゃぐちゃにという音が響く。
「うあぁぁぁあああ!」
大声で叫び皮一枚で繋がっていた右手に最後の一回振り下ろし、ブチッと音を立てて右手は完全に千切れた。
右手の断面からは血が止まる事なく流れ続ける、少年は右手を抑え止血しながらうずくまる。
そして出口に向かって地面を這うようにして進んで行く。
「死にたく…ない…絶対に…生き残って…やる…」
そう言いながら地面を這って進んでいく少年の目はまるで獣のようだった。