奢りと迷い
本当なら俺自身もこの戦いに参加したいのだがやはり体が全くゆうことをきかなく、椅子でただただ傍観するだけだった。
戦況は一見姐さんが人数的な問題で不利のように見えるが何一つ臆さなく逆に余裕の笑みを浮かべていた。
そしてお互いが睨み合いどちらが先制を取るかタイミングをうかがっていた。
「二対一というのはせこいが恨むなよ。ライオン娘!」
リンがそう言うと剣を振り上げテオラン目掛けて走って行った。
テオランはそれを軽く避けた。
「大丈夫!勝負にせこいもくそもあるかよ!」
テオランはそのまま距離を取り攻撃をすることはなかった。
次は二人同時に攻撃を仕掛けて来た。
リンの太刀筋に合わせるようにカーリが背後を取り獲物を喰らい尽くすように襲いかかった。
がしかし。リンの剣はテオランの片手に抑えられ、カーリの攻撃は毛深い体で守りそのままカーリに一撃を食らわした。
「てめーらは甘いんだよ!もっと本気で掛かってこないと死ぬぞ」
リンはそのまま後ろに下がり飛ばされたカーリは壁にめり込んでいた。
「姐さん!危ないっす俺まで巻き込まれますよ」
あれ喋れるようになってるなんでだ。
先ほどまで声が全く出なかったのに今すっと思うことを口に出せた。
てか体も動くようになっていた。
どうやら何か能力が切れたみたいだ。
「なんで芽が切られてるんだ。くそ!もう一回植えるか」
リンがもう一度俺の方に走って来た。
俺は急いで座っている椅子を退けて立ち上がった。
「おい。逃げるな。黙って技にかかれ」
「はいわかりましたって言うわけねぇーだろ!バカかあんた。」
俺は自分のポケットから鍵を取り出した。
そして追いかけてくるリンから逃げながらも鍵を左目に突き刺した。
「俺に応えろ!神眼。一体化【エボル】」
すると左目が光り輝き目元から黒のラインが入り目が真っ赤になった。
「それがテンリの能力かい?なんだか凄く目付き悪いんだね。」
「うるせーよ。それより俺が一体化【エボル】してお前心拍数あがってるぞ。ビビってんのかよ」
前よりこの目を凄く使いこなせているのが伝わってくる。
今は相手の心拍数まで左目ならわかるほどだ。当たり前だが相手の動きも先読みできる。
「テンリの能力は片目の強化か。それでも僕の方が有利だと思うけどね。さっさと俺の脳にかかれ!」
さっきより心拍数が上がりこちらに向かって走って来た。
そして剣を振り下ろすも。俺の左目からしたらスローにしか見えない。
俺はリンの攻撃を右に左に避けた。
「おせーんだよ。お前能力に頼りすぎだ。」
「それは君も同じガン」
目で見切れないほどのスピードでチーター女が背後に回っていた。
振り向くと顔面にパンチをくらい吹っ飛ばされると同時にまた俺の後ろに回り込みかかと落としまでお見舞いした。
俺は地面に叩きつけられて意識が飛びかけた。
どーなってやがる。姐さんはどーした。
目の前にはその場で棒立ちしてる姐さんがいた。
「ね、姐さんなにしてるんです、か。戦って下さい。」
すると姐さんは俺の声に反応してふと我に返って帰った。
「悪い子分!い、今倒す!」
そうゆうとカーリに向かって拳を振り上げた。
しかしその前にリンに斬られ肩から血が流れていた。
「さっきまでの覇気はどうしました?さっさと死んで下さい」
「ライオンよりチーターのほうが速くて優秀なんだガン」
そうゆうと姐さんに何発も殴りそして最後には回し蹴りと姐さんも流石にその場に倒れこんだ。
と思ったがすぐさま立ち上がり二人を睨みつけた。
「まだまだだぜ。チーターがライオンに勝てるわけないって言ってるだろ!」
「冗談はやめてください。もうボロボロじゃないですか。あなたの力じゃ何も守れないんですよ」
「うるせーんだって言ってる…グハ。」
「さっきからあんたがうるさいガン。戦う覚悟のない奴が武器を持つなガン」
カーリがテオランの腹に一撃を食らわせテオランはその場に血反吐を吐きながら倒れこんだ。
俺はそれをただただ床に倒れながら見ていることしかできなかった。
俺の右目には姐さんが二人に立ち向かっているように見えた。
しかし
左目にはずっと一人でその場に立ち塞がって耳を抑えて何かから逃げるようにしか見えなかった。
俺はそのまま意識が飛び、その後のことはわからなくなってしまった。
私はまた何もできないのかよ。
子分を守るために使った力があいつを巻き込もうとしてしまった。
私はあいつらと同じなのかよ。
ねーちゃん私どうしたらいいんだよ。なんで、なんで私を置いていったんだよ。
「とりあえず二人は塔の檻に入れる。運ぶぞカーリ。」
「正直このチビが戦いを躊躇しなかったらうちら危なかったガン。」
「それもそうだがこれが現実。勝ったそれだけですよ」
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「クソ。遅かった。二人はもうここには」
スーがこの屋敷に来る頃には一悶着あった後でもぬけの殻だった。
あるのは戦った痕跡と半壊した部屋だけである。
と思いきや、机の上に一通の手紙が差し出されていた。
ケイへ。二人は塔に運ばれたが命に別状はない。お前は一度ホワイトに戻ってボスの指示を仰げ。
俺が二人を連れ出す。俺なら任務は失敗しない安心しろ。ジュール。
「すいません。二人を頼みます。」
彼女はすぐさま振り返りきた道を走り戻って行った。
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「ローズ様。とりあえずは任務遂行しました。二人はどういたしましょうか?」
「リン、カーリお疲れ様あったな。二人の拷問は他の者に任せる。お前らはホワイトとの全面戦争に備えておけ。」
「了解しましたガン。」
そこには大きな椅子に踏ん反りかえっている黒いドレスを着た紫の長髪をした女とその端に膝をついて先ほどの二人が話していた。
「ジュール、ペーパ、ドール。お前ら三人も備えろておきなさい。まぁ、基本はリンの人形兵で大丈夫だと思うけど」
「わかりました」
「早く切りたーーーい。」
「……う……」
「お、おい。おい子分起きろ」
どっかで聞いたことのある声が聞こえる。誰だ。
痛い!
「は!ここは。姐さんですか。どこなんですかここ。」
「何とか大丈夫そうだな。すまない私のせいでこんなことになった。」
二人は何もない地下牢のようなところに入れられて手足を鎖で繋がれていた。
「大丈夫です。それよりなんで途中戦わなかったんですか?姐さんなら勝てたはずです。」
「嫌無理だよ。私に戦う資格なんて。ねーちゃんがいなかったら私自信なんて。」
見るからに姐さんは元気がなく、度々言葉にでるねーちゃんとは一体誰のことで、なにがあったのか。
俺はなんの言葉も出なかった。
聞くことも慰めることも。ただただ俺は無言で座っているだけだった。
水の落ちる音。風が強く吹く音しか聞こえず。俺らはなすすべなく立ち尽くしていた。
「少し昔話をさせてくれ。聞いてるだけでいい。」
姐さんは自分の昔の話をたちまち話し始めた