スーとテオラン
考えや緊張から一睡もせずに朝を迎えたのだが、あくまでも地下の秘密基地なので窓なんて付いておらず時計の目覚ましでしか確認ができない。
俺は全く癒えることのなかった身体を起こし時計を再度確認した。
集合時間の一時間前だ。
俺は顔洗い、服に着替えて食堂に足を運んだ。
食堂は驚くほど静かで食堂のおばちゃんがあくびをしてぼーっとしながら突っ立っている。
大きな宴会場見たいなとこに座っているのは意外にも三十人程度だ。
俺は特に見知った顔もおらず朝からぼっち飯をかました。
まぁあっちでも昼はいつもそうなんだけど。
再度部屋に戻ると先ほどまで寝ていたレインの姿はもうそこには無くなってしまっていた。
キチンと布団は整理されていた。よほど几帳面かつ綺麗好きなんだな。
あと三日もすればアイツからすごく指導されそうなぐらい俺の部屋は汚かった。
気をつけていこう。首斬られる。
俺は細かい準備を済ませると始まりの門まで駆け足でしっかり踏みしめてたどり着いた。
「時間きっかりだな子分よ!おはよー」
「おはようございますテンリさん。早速ですが今回の任務は私が仕切らせていただきます。」
門にはすでに二人がにこやかに俺を待っていた。
朝から恐ろしいぐらいに元気な姉さんと本当に聞こえるか聞こえないかぐらいの声でスーさんが俺に話かけてきた。
「おはようございます。早速質問ですがその隣国にどうやって潜入するんですか?」
「はい。それは一度地上に出てもらうと荷物を運ぶ荷台が用意されてるのでそれに乗ります」
意外にも歩きとかじゃないことに素直に嬉しい。
なんかカバンとか背負って山を二つ超えた先なんてのも想像していた。
五分ほど歩くと俺らが最初に入ってきた階段がみえた。
対して時間はたっていないのだが太陽の光がとても眩しくととても暖かいそんな気持ちを抱いて外へ出た。
家から出る時の気持ちとは真逆でここに来てからこのような気持ちばっかだ。
「ほら子分。あそこに見えるのが馬車の荷物運びだぜ」
姐さんの指が指す方にはシンデレラが城に向かったあの馬車にそっくりだった。
荷台は特にカボチャという訳ではないがようやく見知らぬ異世界に来た感じが湧いてきた。
早速三人は乗り込み馬を出した。
思いのほか揺れが酷く吐き気がする。
道の整備があまりされておらず上下に揺れることが多く俺はみるみる具合が悪くなりその場にぐったり倒れてしまった。
本来なら外の景色なんてものを見ながら楽しんで行こうなんて思っていたのだがまじでそんな余裕がない。
「こんな状況で失礼ですが任務の説明をさせていただきす。まず最初は一番ガーデンで栄えている都市に出向き情報を集めます。私が一人でテンリさんはテオランと一緒にお願いします。そのあとは合流してアジトの探索を三人で行います。」
彼女は物静かであまり話さないが指示や任務は的確に説明しとてもわかりやすかった。
しかし俺と同じぐらい姐さんの顔が汗ばみ何かを言いたい口だった。
「おいスー。話が違うだろ!これだとガーデンと事を構える気がだろうが!私は認めねーぞ!」
昨日の一件もそうだったが姐さんは闘うことに対してすごく嫌がっている様子だ。
しかしスーさんもそれは引けないという眼差しで口を開いた。
「テオラン。あなたの気持ちも分かりますでも。これはボスの命令です。それにテオランもホワイトの戦士でしょ?いつまでも昔の…」
「うるせーうるせーお前はだって嫌でこんなとこあるんだろうがよ!本当は一族の頭首なんてやりたかねーんだろ。」
「あなたに私の一族の何が分かるの?リーダーは私。指示は従ってもらう。」
場面はすごく悪い雰囲気でのスタートとなった。
止めに入りたかったのだがこの体の状態ではどうにもできなかった。
それにスーさんの静かな怒りが意外にも覇気があり呆気にとられてしまったのも事実だ。
気がつけばこんな雰囲気のせいか俺の酔いはどこかへ消えてしまっていた。
「なぁー二人ともとりあえず仲直りしろよ」
「しません。」
「誰がこんなやつとするか!」
二人とも即答であった。
その前一時間半この状態で一切口をきく事はなかった。
そしてふとしたタイミングで意外な人が声をあげた。
「おい見てみろよ子分!あれがガーデンだ!ここは森に囲まれているからそう呼ばれているんだぜ!」
確かに外を見ると一面の森で下を見下ろせばそこの中には多数の町と奥には大きな塔がそびえ立っていた。
「見てくださいテンリさん。あそこの塔の下に都市が栄えていて私達の任務はそこです。」
なるほど。ようやく口を開いたとおもったらやはり二人とも俺に話すだけで仲直りはまだ程遠そうだ。
そのまま馬車に揺れながら大きな門のところまでたどり着いた。
「二人はここに隠れていてください。私が相手します。」
二人の門番らしい人が馬車に止まれの合図をだしそれをみてリーさんは馬を止めた。
「すまないね。お嬢さんはなんの用かな?」
「はい。私は商人でして油を売りに来ました。」
「ちなみにどこの地区からですか?場所によっては入れないんですよ今」
少し困った顔をしたリーさんは深呼吸をしてその場をしのぐかの如く銃を二丁構えた。
バンバン!
リーさんは門番の顳顬に銃弾を各一発ずつ打ち込んだ。
「おい!スーさんどうゆうつもりですか?簡単に人を」
「大丈夫だ!子分黙ってじっとしてな」
すると門番はむくりと立ち上がり何事もなかったかの様に口を開けた
「イマカラモンアケマス」
すると門が上に上がり馬車の立ち入りを許可された。
「ごめんなさい。テンリさん驚かせてしまってこれが私の鍵の力です。色々な効果のある弾を打てるんです。いまのは記憶を改善する弾です。」
そのまま馬車は走り続けた。
町はわりと賑わっていて周りを見ると猫の耳をした人が多数いた。
「ここはな猫属が多いんだよ。それにホワイトよりここは賑わっているんだぜ」
町に見とれていると急に馬車が止まった。
二人が降りる準備をしているところを見ると今から任務が始まるみたいだ。
「それでは二手に分かれて開始です。テンリさん、テオランを頼みますよ」
「うるせーんだよ一々!いくぞ子分」
「わかりました。ではまた後で」
俺と姐さんは町の栄えている方担当だ。
近くで見るとわりと高いんだなあの塔。
都市は塔の周りが全てらしいのでとりあえず塔を目指した。
「おい子分腹へらないか?とりあえず飯食うぞ!」
「え?確かに腹は減りましたけど任務はいいんすか?」
「腹が減ったら任務なんて無理だ!肉食うぞー」
立場的には姐さんの方が上なので俺は連れられるまま近くの肉屋に立ち寄った。
店はとても洋風なところで人はいっぱいおり満席状態だった。
「おいマスター肉二つ大盛りとビールを頼む」
「ちょっと姐さん酒は流石に」
「うるせーな大丈夫だ!」
「かしこまりーねぇーちゃん小さいのに飲むんだね!」
「うるせーぞ私はおとなだ!!」
肉のいい匂いが漂いそちらをみると骨つき肉が豪快に二つテーブルに置かれた。
「はい!お待ち。これはビールね。」
見るとどデカイジョッキにビールがギリギリまで注がれていた。
「うめーこれはやべーな!どーだうまいだろ?」
「美味いっすね」
二人は満腹まで腹に詰め込み。異世界の肉はすごく美味かった。
「では任務開始だ!子分よ。私について来い」
すると姐さんは駆け足で人混みの中を突っ走っていた。
俺はそれを急いで追いかけるも中々追いつかない。
いつのまにか金髪の幼女は人混みに紛れて見えなくなっていた。
「待って姐さん。あっ」
声は聞こえず俺は人にぶつかり飛ばされてしまった。
「ごめんね。大丈夫立てるかい?」
一人の茶髪の少年が手を差し出してくれた。
この時から事件は始まっていることに三人は知るよしもなかった。
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今日の鍵Wordー「シク・テオラン」
姉貴肌でテンリを子分と呼ぶ。ちっさいと言われると怒るがそこまで気にはしていない。鍵は持っているが今はまだ秘密。戦うことに対して色々思っているが…。