自分の弱さと力
イマイチ今の状況が飲み込めない。
俺は何でここにいるんだ?どうして俺のせいで女の子が倒れた?
分からない。分からない。
ねぇ。気をしっかりもって。私の力を使ってしっかり生き延びて。
誰かの声が聞こえる。俺に直接語りかけてくる感じがする。
誰の声なんだ。分からない。
ハッキリと分かるのは美少女を傷つけたあのくそ坊主を止めれられるのは俺だけだ。
「まさか。その鍵をてめーみたいな弱い奴が使うとはな。どのみちこっちが有利だぜ。」
さっきまでは声しか聞こえなかった坊主がなぜか見える。
坊主は腰にかけているカバンから手投げナイフを数本出した。
それを俺に目掛けて三本投げた。
見える。
俺は足下に落ちていた鉄パイプを拾いあげた。
なぜか分からないが見える。
それもナイフがゆっくりに見える。
俺は鉄パイプで俺に近づいてくるナイフを一本、一本地面に叩きつけた。
カランカランカラン。
「何故だ?ナイフを。俺のナイフが何故見える。」
「知るか。俺が聞きてーよ。」
これが一体化って奴なんだろうか。
こっちにきてから分からない事だらけだ。
場所も鍵も一体化って奴も何一つ分からない。
俺が命を狙われる必要ってあるのかよ。
俺を守ろうとして巻き込まれる必要ってあったのかよ。
「おいクソガキ!お前あの坊主が見えてるのか?」
「あぁ。よく分からんがそうだ。ってやべー。あいつ性格もゴミだな」
坊主は美少女に向かって走り出した。
ケタケタ笑いながら走っている所を見るとトドメを刺すきだ。
くそ。やばい。間に合わない。俺はとっさに手に持っていた鉄パイプをナイフの様に投げた。
パイプは一直線に坊主に向かって飛ぶ。
坊主と美少女の距離十メートル。パイプと坊主の距離二十メートル。
届け間に合ってくれ。行ける。
坊主は鉄パイプの事が全く見えていなかった。
いやあいつは自分が見えているということを理解していなかった。
ドガ。カランカラン
俺の投げた鉄パイプは綺麗に坊主の頭に直撃した。そして鉄パイプは地面に転がり落ちた。
見えた。当たる軌道までも俺には見えていた。
俺はこの鍵の凄さが今ようやく分かった。
「痛い。クソお前俺の姿まで見えるのか?」
「ナイフ見えたならお前も見えるだろ。クソ坊主が!」
こいつはバカだ。ヤンキーは常にバカだな。
俺は坊主の近くまで走って駆け寄り空手黒帯の実力を
みしてやった。
流石三年もやってるだけはあるなと今初めて役に立った気がした。
腹パン。上段回し蹴りまで決められると流石に坊主もその場に倒れこんでいた。
「主様。気をしっかりもって。息はあるな。大丈夫すぐ病院に連れて行……くそ。」
デカかった犬が元々の小さな可愛い大きさに戻っていった。
「大丈夫か?ワンコ。俺が彼女を連れて行くから安心してくれ」
「誰がワンコだ!すまぬかたじけない。」
俺は血だらけの彼女をおぶった。
すまない。俺が不甲斐なかったから。やっぱり俺なんて何の役にも立たないな。
「おいクソガキ。何をそんな難しい顔をしておる。お前がおらんかったら鍵と主様を失っておった。立派だったぞ。」
なんか見透かされたな。もしこんな友達がいれば何か変わってたのかな。
家に帰ったら少しは態度改めるか。
俺らはアジトと言われる所に向かっていた。
アジトなんてどこの敵の基地だよってツッコミたかったがもうそれには飽きた。
充分というほど驚いたし自分の弱さを知れたよ。
三十分ほど走るとそこにはよくある展開な地下通路があった。
俺らはそこを潜って歩くとそこには大きな門があった。
「ここはな。警備が厳重でな。こうして何重にもセキュリティーを重ねているんだ。」
「お前達もここも謎だらけだな。いい加減正体を教えてくれよ」
「まてよクソガキ。それは後で教えてやるからボスの口からな。」
なんだ。急な殺気が後ろから襲ってきた。
会話をしている途中で油断した。
後ろを振り返るとそこには一人の男が刀を俺に向けていた。
「おい。ヒエ何者だこいつはティアも傷だらけだし任務は?お前は動いたら殺す。いいな。」
「レイン鍵を下ろせ。彼は鍵の契約者だ。それに主様の命も危ない。」
レインと呼ばれる男は刀を下ろした。声は低く顔は整っており、青髪のイケメンだ。
「とりあえずティアは俺が連れて行く。お前ら二人はボスの所へ行け。」
「わかったレイン。主様を頼むぞ。行くぞクソガキ。」
ワンコが俺を案内するために前を歩き同じような薄暗い道を十分ほど歩いた。
「そーいえばお前名は?ある意味恩人なのに名の一つも聞いてなかったな。」
「確かにそうだよな。イチノセ テンリだ。テンリでいいよ」
「そうかテンリ。ワシはヒエだ改めてよろしく頼むぞ。ところでお主は鍵の力どこまで理解した?」
色々焦っていたがいつのまにか左目に違和感が無く素の状態に戻っていた。
特に目は痛まないし、奇跡体験したようだった。
「俺は鍵をさしたら見えない物が見えたぐらいしか分からなかった。」
「そうか。鍵の力は己にしか分からん。自分で限界を探せ。着いたぞここだ。」
そこには大きな扉がありヒエが扉に頭突きをすると自然と扉は開いた。
「お帰りヒエ。お疲れ様!そして少年ようこそ。」
そこには黒い革手袋をして黒いロン毛の男がそこにはいた。
驚いたのはすごくいい声だ。
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今日の鍵Wordー「鍵」
契約者と一体化【エボル】するためにある。色々な形があり能力もそれぞれだ。契約者が名を呼べばそれに答えるような形で本来の姿を得る。(詳しくは次回本編で)