追い風と向かい風
追い風と向かい風が、どちらが偉いかということで喧嘩をしました。
「俺様の方が偉いに決まってるじゃないか、俺様がいなければ、あの娘は売れてないぜ」
と追い風は主張します。追い風が指差す先には、追い風に乗って売れに売れているグラビアアイドルがいます。
「僕のほうが偉いよ。向かい風がなければタレントは成長しないんだよ。追い風だけで売れたタレントなんてさ、天狗になって嫌われて干されちゃうもんだよ」
と向かい風が反論しました。
「向かい風さんよぉ。言ってくれるじゃねえか。だったら、どっちが偉いか勝負しようぜ。あのグラビアアイドルを全部脱がせた方が勝ちっていうのはどうだ?」
「受けてたつよ」
追い風はグラビアアイドルに、どんどん風を当てていきました。
追い風に乗ったグラビアアイドルは水着の写真集がたちまちベストセラー。続く写真集では更に肌の露出が多くなっていき前回の写真集の売り上げを軽く超え社会現象的な話題になりました。この調子でいけばオールヌードは時間の問題だと思った追い風ははりきって風速をマックスにしました。一躍、時の人となった彼女は追い風に乗って、月九ドラマの主役に抜擢されましたが、それ以後脱グラビア宣言をして、肌の露出が無くなってしまいました。
「おかしいな」
追い風はがっかりです。
続いて向かい風の出番です。向かい風はすっかり女優になった元グラビアアイドルに風を当てはじめました。
向かい風に晒された女優は人気に陰りが見えはじめ、話題作りのためグラビア復帰、少し肌の露出した写真集を発売しました。向かい風は、もっと脱がそうと更に風を当てていきます。すると、彼女のドラマの視聴率は、みるみる下がっていきました。更にスキャンダル発覚、そして記者会見でのちょっとした発言がファンの顰蹙を買い、数か月で落ち目とよばれるほどにまでなりました。そんな状況を打破するために、彼女はかなり肌を露出した写真集を発売しました。もう少しでオールヌードになると思った向かい風は、風速をマックスにします。強烈な向かい風の中、彼女の写真集はまったく売れず、話題にもならず、彼女は二度と写真集を出すこともなく、静かに芸能界を去っていきました。
「あっちゃー、僕もダメだったよ。売れなくなると脱ぐと思ったんだけどね」
向かい風もがっかりです。
追い風と向かい風は反省しました。
「どっちが偉いかなんてことで争うのはやめようぜ」
「そうだよね」
向かい風と追い風は仲直りをしたそうな。めでたしめでたし。
……って運命を弄ばれたグラビアアイドルの立場が……、っていう気もするので彼女がどうなったかも書き加えておきます。
噂によると、とりあえず結婚して幸せになったそうです。どんな男性かとか、細かいことまでは知らないですよ。風の噂に聞いた話ですからね。
《終》