JR西日本ふれあいデー 体験記
この作品は、閣下をはじめとする鉄道ファン並びに男の子を持つお母さんたちに捧げます。
鉄道記念日奉祝企画 参加作品。
男の子は恐竜、車、電車、戦隊ものなどに次々とハマるものですが、幼稚園の年少組に通う、うちの孫は赤ちゃんの時から鉄道オタクです。「鉄おも」という子ども向けの鉄道雑誌を定期購読するほどの鉄っちゃんなのです。その雑誌に手紙が掲載されたりプレゼントを貰ったりしたこともあります。新刊が届くと、ばあばにテレビ電話をかけてきて、表紙から最終ページまで説明して見せてくれます。
筋金入りでしょ?
「JR西日本ふれあいデー」に初めて参加したのは、2014年11月16日のことでした。
Sが1歳10か月の時です。普通、こんな赤ちゃんに鉄道の何たるかはわからないだろうと思いますよね。
それがこの子は、新幹線の車輪軸やコンデンサーに物凄い興味を持ってじっと見ていたのです。Sのすぐ側にリュックサックを背中に背負った中年の鉄ちゃんがいたのですが、この年齢差のある二人が揃って軽量化の為に空洞になった車輪軸をじっくりと検分していたのには笑いました。
秋の日の朝、ジジとババは岡山駅にほど近いJR山陽本線の北長瀬の駅で、孫のSと娘のCを待っていました。
「こりゃあ思ったよりも大勢の人だな。見つけられるかな。」
じいじが娘たちと会えるのかどうかを心配するのも無理はありません。普段の北長瀬の駅とは思えないほどの人ごみなのです。電車が着くたびに東京の通勤電車を思わせるような乗客たちが次々と駅の構内に増えていきます。
「Cは一人で大丈夫かな。旦那さんは仕事で来れないんでしょ。」
「Sがだいぶ歩けるようになったから、なんとかなるだろ。」
そんなジジババの心配をよそに、人ごみの中から現れた孫のSは大興奮でした。普段は車で移動するので、駅に行き切符を使って電車に乗ってきた、この体験が孫にとっては得難いものだったようです。
「ばあば、でんしゃのった!はやい!」
口数が少なくて、言葉を覚えるのも遅かったのにレールスターだの500系等という言葉はすぐに覚えたのです。
北長瀬の駅からJR西日本の操車場までは長蛇の列でした。10分もかからずに行ける場所に、列に並んで少しずつ進んで行くので30分ぐらいかかるのです。
Sはそんな人ごみに飽きてじいじに抱っこをせがんでいましたが、遠くに新幹線の姿が見えるようになるともう釘付けです。お気に入りのDVDに登場する新幹線たちが、すぐそこにたくさん止まっているのですから、興奮して目がキラキラしています。
「しんかんせん!あっち、あっち!」
操車場の中の会場に入ると、身体ごとくるくると振り返ってすべての新幹線を見ようとするので、Sを抱いていたじいじが取り落としそうになって、困っています。
「こりゃー、よっぽど好きなんじゃなぁ。」
プレゼントが貰えるイベントなどには見向きもしません。車両に目がいってしまっています。
「先に運転席に乗れるイベントに行ったほうがいいかも。人が多くなったら乗れなくなるかもしれないから。」
娘のCがそう言うので行ってみたら、2つの新幹線に乗れると書いてありました。
「S、どっちに乗りたい?」と聞いたら、即座に指さしたのは700系ひかりレールスターでした。
「レールシュター、めめ、ひかってりゅ!」
運転席のすぐ下にあるライトが点いています。
まず、階段を登って乗客が乗る車両に入ります。そして中の座席に座って運転席に入れる順番を待つのです。
新幹線に乗るのがはじめてのSは、びっくりした顔であちこち眺めています。おりこうさんに座って待っていたら職員の人がカンセンジャーとその物語の主人公ニシタビトが描いてあるシールをくれました。
このカンセンジャーはJR西日本のマスコットキャラクターらしく、500系の顔をしている正義の味方です。悪の手先ダークマインダーから地球の平和を守ってるんだって!
もうねー、ツッコミどころ満載で大人には大うけでした。
ニシタビトの名前っ(爆)。このキャラの人がちょっとおじさん顔のふつーのお兄さんなの。そして、何故に宇宙の平和を守るのか?・・・いいでしょー、ローカル色が出てて。
この後JR東日本がつくったシンカリオンというキャラクターを知ったのですが、このシンカリオンはすごかった。戦闘ロボットを制作するプロが作っていましたね。合体やモデルチェンジが出来るし、アニメなんか物凄い迫力。このシンカリオンも1年後にはトイザ〇スで2機買わされることになったのですが。(笑)
でもね、人が入った変身スーツ姿の時はカンセンジャーの方がカッコいいのよ。シンカリオンは動きにくそうだからね。
少しずつ前の席にズレていって、運転席に座れたのはたったの1分間。
それでも本人は夢中で運転していました。レバーを操作してね。
新幹線の運転席って狭いんですよー。流線形になるとどうしてもそうなるんでしょうが、運転士さんにとっては大変な職場だなぁと思いました。
うちの三女の友達が新幹線の運転手同士で結婚してるんだけど、毎日福岡から大阪まで何往復もしているので一般の人とは距離の感覚が違うそうです。三女が二人の結婚式に行ったら、同僚の出席者がみんな新幹線の運転手さんばかりだったので、三女が「大変ですねぇ。こんなに運転手さんがここにいたら新幹線が動いてないんじゃないですか?」と言ったら、「大丈夫です。ここに来るまでに福岡に行って帰ってきましたから。」と平然と言われ、三女たちは驚いたと言ってました。朝ごはんの前にちょっとその辺を走って来ましたっていうのが、何百キロも先の話なんだもんねぇ。昔の人が聞いたらびっくりするよ。
余談だがこの三女の高校の同級生にはJAXAに勤めている女の子もいる。研究者としてアメリカのNASAにも何年か行っていて、あのイトカワを調べに行ったハヤブサが持って帰ったホコリというか砂を調べるチームにもいたらしい。変わったクラスメートが多い年だったんだね。
運転席から降りたSは、光レールスターとドクターイエローの間にしゃがんで、双方の車輪の様子を見比べていました。
この子は家で電車のおもちゃを走らせるときも顔を床につけて車輪が動くのを見ながら自分の手で走らせるんです。電池を使って走らせるようになったのは幼稚園に入ってからかなぁ。よほど車輪の動きが好きなんですね。
この後、新幹線を整備する工場の中に入って見学しました。私には何が面白いのかわからなかったのですが、孫のSとじいじは、顔の高さまで車体を持ち上げられていた新幹線の車輪や車輪軸、裾カバーを外されたコンデンサーなどをじっくりと見ていました。じいじによるとこのコンデンサーは当時、三女が勤めていた会社で作ったものだそうです。三女は研究者だったので直接は作ってないだろうけど、じいじは娘の会社が作ったものだということで興奮して写真を撮っていました。
この日は人が多すぎて、売っているお弁当もなくなっていたので、昼前に引き上げることになったのです。
次にJR西日本ふれあいデーに行ったのは、二年後の2016年5月22日のことでした。
この日はとても暑くて五月とはいえ初夏の陽気でした。ふれあいデーの入場が事前申し込みが必要な抽選制になったらしく、人ごみも前回ほどではなかったのが良かったです。
Sが3歳、下の女の子が1歳の時だったので、最初はカンセンジャーのショーから観ることになりました。
こんなところが前回とは違いましたね。
ダークマインダーがいつの間にかダークマナーになっていて、乗客のマナーの悪い人を操っている。
・・・宇宙の平和はどうしたのかな?(笑)
それでも子どもたちには面白かったらしい。
「ほらっ、ばあば、あそこにいる500系が変身してあの人になってるんだよっ。」
うむうむ、なるほど。Sも成長したのう。よくわかってるじゃないですか。
しかし変身スーツ姿のカンセンジャーとダークマナーは近くに来ると怖かったらしく、記念撮影の時は二人とも泣き出してしまいました。・・・まあ、側で見るとナマハゲみたいなもんだよね。ばあばが一番ノッて、カンセンジャーと一緒に敬礼して、写真に写ったのです。
3歳になると見るところも違うようで、建物のそばを歩いていてガーガーという音がすると「ばあばっ、プラレールだ!入る入るっ。」と入って行ってしまいました。音だけでわかるとは・・。そこには確かにプラレールがあるにはあったのですが、Sの持っているもののほうが充実していた。(笑) それでも新幹線の紙工作が大量に置いてあったので、抽選にもれて来れなかった友達へのお土産を頂いたのです。
今回は制服を着て新幹線の前で写真を撮ることが出来るというイベントがあったのですが、Sはそれに見向きもせず、500系の前で記念撮影をしました。
そんな時に会場にアナウンスがあったのです。
「皆さま、もうすぐエヴァンゲリオン号が岡山駅を出発します。北側の線路にご注目ください。」
「わぁー!」というどよめきが会場にあがって、カメラを抱えた人が皆一斉に走り出しました。さすが、鉄ちゃんの集団ですね。
しばらく待っていると、パープルの車体が操車場の北側をスピードを上げながら走り抜けていきました。娘のCはエヴァのファンだったので、この車両を見ることが出来て、だいぶ喜んでいました。
そんな記念撮影の後、予約の時間が来たというので、500系の運転席に座りに行きました。これも時間予約制、並びに機種指定になっていたようです。
サービスも良くなっていて、車掌さんの鉄道クイズやお話もありました。この車掌さんはSに帽子を被らせてくれたりして、子ども好きのいい人でした。運転席の手前には練習用の触ってもいい運転レバーがあって、Sも下の女の子も、夢中で運転していました。
500系の運転席は、前回乗ったひかりレールスターよりも広くて快適でした。窓も前方へシュッと伸びていてカッコいいのです。これが廃車になるのはもったいないなと思いました。
新幹線の運転席から出て階段を使って下に降り、前方の方へ歩いて行くと補修車両がありました。そこで線路補修の映像を流していたのです。Sとじいじはそのテレビをじっと見て動かなくなったのですが・・・私たちにとっては専門的過ぎました。(笑)
最後にスタンプラリーの記念品で色鉛筆を貰って、エヴァの碇シンジ君達と記念撮影をしてから会場を後にしたのです。
二度目のふれあいデーは食べ物も充実していて、各所にアイデアが光っていました。職員の皆さんが年ごとに問題点を改良して、より良いイベントにしようと努力しているのががよくわかりました。
JR西日本の皆さん、いろいろとお世話になりました。とても楽しませて頂きました。
ありがとうございました。
企画の内容は鉄道にかすっていればオッケーとのことでしたので、素人でも楽しく書けました。