③スプリングボクス対ジャパン(試合開始〜終盤戦までの概況)
迎えた2015年9月19日、ロンドンの南方、ブライトン・コミュニティ・スタジアム。
発表された両チームの先発メンバーは以下のとおりである。
日本代表(身長/体重)
1 三上正貴(178/115)
2 堀江翔太(180/105)
3 畠山健介(178/115)
4 トンプソン ルーク(196/108)
5 大野 均(192/106)
6 リーチ マイケル(190/105)
7 マイケル ブロードハースト(196/111)
8 ツイ ヘンドリック(189/107)
FW平均(187.4/109)
FW総体重 872kg
9 田中史朗(166/71)
10 小野晃征(171/83)
11 松島幸太郎(175/88)
12 立川理道(181/94)
13 マレ サウ(183/97)
14 山田章仁(181/90)
15 五郎丸歩(185/99)
BK平均(177.4/88.9)
全体平均(182.7/99.6)
南アフリカ代表(身長/体重)
1 テンダイ・ムタワリラ(183/116)
2 ビスマルク・デュプレッシー(190/115)
3 ヤニー・デュプレシー(187/123)
4 ルードベイク・デヤーヘル(205/125)
5 ビクター・マットフィールド(201/110)
6 フランソワ・ロウ(190/114)
7 ピーターステフ・デュトイ(200/115)
8 スカルク・バーガー(193/110)
FW平均(193.6/116)
FW総体重 928kg
9 ルアン・ピナール(186/92)
10 パット・ランビー(177/89)
11 ルワジ・ムボボ(181/93)
12 ジャン・デビリアス(190/100)
13 ジェシー・クリエル(186/96)
14 ブライアン・ハバナ(179/94)
15 ゼーン・カルシュナー(184/92)
BK平均(183.3/93.7)
全体平均(188.8/105.6)
※※※※
この日のジャパンは、スプリングボクス相手に立ち上がりからうまく対応ができた。
フォワード陣がスクラムで対抗でき、ラインアウトもマットフィールドに奪われた一度を除いて確実にマイボールを支配できていた。
敵陣でペナルティを得ると、五郎丸が安定したキックで3点ずつ加点していくプラン通りのゲーム展開。
このようにセットピースが安定し、フィットネスでフィジカルをカバーできれば、あとは、個々のプレイ選択ということになる。
この日のジャパンは、自陣から敵陣10メートルを超えるまでは、シェイプによる連続攻撃にキックでの陣地獲得に拘り、敵陣10メートルを超えるとポゼッション(ボール保持)優先で粘り強く攻め、相手陣でのペナルティを誘っては五郎丸のキックで着実に得点を重ねるスタイルだった。
エディ・ジョーンズ・ヘッドコーチの導入した新戦術のシェイプ(従来の「縦縦横」の単調な展開に比べて、攻撃時に2組以上の攻撃軸をセットさせ走らせる戦術で守備側に焦点を定めにくくする効果がある反面、繰り返し攻撃を行う場合には体力消耗が激しい短所がある。トップリーグではサントリーが最初に本格的に採用)はJAPAN WAYの掲げるアタッキングラグビーとともに後半も機能し続けている。
逆に、前半こそ、ハイパントやスペースへのキックなど、ジャパンの嫌がる攻撃を仕掛けていた南ア代表は、後半になると徹底してフィジカル重視の戦術となり、パントやラインアウトモールなど、日本代表を圧倒していた攻撃の決め手が影を潜めるようになる。
しかし、後半に見せたルードベイク・デヤーヘル、アドリアン・ストラウスのジャパン・ディフェンス陣を正面突破してからのトライは、さすが南ア代表と唸らせられる。
だが、ジャパンのディフェンスにミスらしいミスは見られない。そして、後半28分、ジャパンボールのラインアウトから見事なサインプレーによるループパスと松島のランが南アフリカ代表のディフェンスラインを撹乱し、最後は五郎丸がゴールラインに持ち込んでトライが決まる。
コンバージョンも決めて70分経過(ラグビーの試合は40分ハーフの80分)して29−29の同点という誰もが予想し得なかったスコアが刻まれることになる。
その後、72分(後半32分)の時点で、南アは波状攻撃でジャパンゴール5メートルラインを攻め続けて、攻めきれず、ペナルティを得てキックを選択し29−32と再び突き放す。
そして、続く75分からの19フェーズにも及ぶジャパンの果敢な攻撃にたまらずペナルティを誘われた南アフリカ代表を見て、スタンドからはジャパンコールが巻き起こっていた。
これだけの連続攻撃が続くというのは、少なくとも攻撃側はハンドリングエラーが少なく、守備側にタックルでしっかりディフェンスされながらも接点でターンオーバーを許さない強かさが必要で、エディーの戦術によって、肉体的に恵まれた南ア代表に対して、スピードとフィットネスでジャパンが南アに対抗できた証左とも言えるだろう。
前半、南アフリカ代表が17フェーズの連続攻撃を仕掛け、トライ寸前まで行ったものの最後はノックオンで得点には至らなかった時とは対象的に、19フェーズ目の五郎丸のトライは、身を挺して止めに入ったコーニー・ウェストハイゼンのペナルティ(結果シンビンによる10分間の退場)を誘ったのも象徴的なシーンだ。
この時点でジャパンが、南ア代表スプリングボクスを気力で上回っているように感じさせた。