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勇者がハーレムをつくれない理由

作者: ゆきまろん

拙い作品ですが、よろしくお願いします


喧騒に包まれたギルドの中。そこは冒険者と呼ばれる屈強な男たちが依頼を受けるため、もしくは町人が依頼を出すために集うことが大概で、貴族などはあまり来ない。


ーーそう、だからこそ受付嬢である私の前に今立っているこの男性は、とても目立っている。


煌びやかな服を見にまとい、貴族然とした態度で佇む男性。サラサラとした金の髪をオールバックにし、碧い瞳に浮かぶ深い知性を銀縁の眼鏡が際立たせている。もう齢四十にも達するはずなのに一向に老いを感じさせない彼は、正直に言ってイケメンである。


そんな冒険者ギルドにて異端の存在感を放つその人は、私に向かって優雅に微笑んだ。


「元気か、ジュリアーナ」

「…またお供も連れずに…。ここは貴方様がいらっしゃるような場所ではありませんよ、公爵閣下」

「いいではないか。それに、そのように畏まってくれるな、いつも言っているだろう」


そう、彼はこの国に三家しかない公爵家の一つ、メシュヴィツ家の当主であり、この国の宰相閣下である人物である。一平民でしかない私は、当然タメ口どころか会話をするだけでも不敬になりかねないほどの遙高みの人なのだが、目の前の彼はニコニコと‘鬼宰相’の異名も何処へやらといった様子で私の返事を待っている。


しかし、と言葉を続けても却下するばかりの彼に、折れたのは私の方だった。


「はぁ…分かりましたよ、アーサー様」

「まだ口調が堅い」

「これは誰にでもです」

「まぁ仕方ないか。それは良いがせめて呼び方を変えて欲しい」

「公爵様、と呼ぶのは…」

「ダメだ」


本来は名を呼ぶことすら躊躇われるのにこれ以上どうしろと言うのだろう。いや、本当はわかってはいる。彼がどう接して欲しいのかも、どう呼ばれたいのかも。そして、それを実行しなければいつまでもここにい続けるであろうことも。


周りを見渡せば随分と業務が滞っている。仕事仲間が頑張っている中、いつまでもこうしているわけにはいかないので、私は漸く諦めたように項垂れる。


「お父様、本来ならここは貴族が来るような場所ではないのですよ?それにいつも護衛くらい連れてきてくださいと…」

「おぉ!やっと父と呼んでくれるか愛しい娘よ!」

「仕方なしにです。仕事が溜まっているので今日のところは帰って欲しいんですけど」

「いや、もう仕事などいいではないか。我が家に来れば、働かずとも綺麗なドレスも輝かしい宝石もなんでもあげよう!」

「その話は前々からお断りして…」


「くぉら!アーサー!てめぇ何抜け駆けしてやがる!」

「…っち、五月蝿い奴が来た」


父、と呼んだ瞬間に目を輝かせ、感極まったように私を連れて帰ろうとするアーサーに、ギルドの奥から怒声が飛んだ。


振り返ればそこには、全身に引き締まった筋肉をもちながらもスラリとした均衡のとれた躰つきの男性。燃えるような赤い髪を短く切り揃え、こちらもアーサーと同じく碧い瞳。若い頃はS級冒険者として世界に名を馳せた彼は、今では冒険者を纏めるギルドマスターである。年相応の渋みを感じさせる顔立ちの彼もまた、イケメンだ。


「そもそもてめぇがジュリーに会えんのは2日後だったはずだ!協定違反するつもりか!」

「声が大きいぞウォル。愛しい娘に父が自由に会って何が悪いのだ」

「てめぇの娘じゃねぇ!俺の娘だ!」

「いや、私の娘だ」


「あの、ギルドマスター。ギルド内での争いは原則禁止となっています」

「あぁ、すまねぇなジュリー。そういやそんなルール作ったっけ…じゃあそんなルール今から撤廃だ。アーサーてめぇ表でろコラァ!今日こそ決着つけるぞ!」

「ふん、野蛮な。いいだろう、魔法で消しとばしてくれる」

「俺の剣でぶった切る方が早ぇよ」


火花をバチバチと散らせる彼らに、歴戦の冒険者達も恐れたように一歩後ずさる。…私だって逃げたい。


けれど二人が争っている原因は私にもあると言えるので、どうにかしなければとワタワタしていると、ギルドの扉が開いて新たに二人の男性が現れた。彼らの姿を確認した私は救いの神を見つけたような気持ちで立ち上がる。


「ギルバート父様、エルンスト父様!」

「やぁ、どうしたのジュリアーナ。またあの馬鹿どもが騒いでいるのかい?」

「…お前も苦労するな」


「ちょっと待て。なぜ私はお父様となかなか呼んでもらえないのにギルバートとエルンストは容易く呼ぶのだ」

「俺なんてずっとギルドマスターだぞ!?」

「だってアーサーお父様は公爵閣下ですし、ギルドマスターは上司ですもの」

「しかしギルバートはともかく、エルンストはこの国の将軍、私と同じ貴族ではないか」



新たに入ってきた二人の男性。


一人はギルバート父様。各国の王族に絶賛される吟遊詩人である。彼の声はまるで天使の歌声のようだ、と讃えられ、その容貌も腰まで伸びる銀の髪に紅い瞳というどこか浮世離れしたものだ。四十歳どころか三十代にも見えない、もはや女性より綺麗な男性だと私は内心で思っていたりする。


もう一人はエルンスト父様。アーサー父様が言ったようにこの国の軍隊を全て取り仕切る将軍閣下である。その剣の腕はS級冒険者であったウォル父様とも渡り合い、その名声と優れた指揮能力によってこの国を守る立派な人なのだ。肩につかないくらいの長さで切り揃えられた青い髪に、鋭い目の中に潜む優しさを具現したような琥珀色の瞳。軍人らしい精悍な顔立ちの彼は、言わずもがなイケメンだ。


「だってエルンスト父様は一番初めに私に会いに来てくれた人だもの。寧ろずっとエルンスト父様がお父様と思っていたくらい」

「なっ…!エル、てめぇ…!羨ましいなおい!」

「くそ…将軍でなければ宰相の権限で抹殺できたものを…!」

「物騒だねぇ。ジュリアーナはみんなの可愛い娘でいいじゃない」

「…俺に何を言おうと勝手だが、ジュリアーナをあまり困らせてやるな」


そう、私がこの二人を慕う理由はこれだ。


アーサー父様もウォル父様もいい人だし、私を可愛がってくれるのは嬉しいのだが、いかんせん押しが強い。時々二人で言い争ってはその後始末に私が駆り出されることもあるので、あまり進んで近づこうとは思わない。


その点、ギルバート父様はのほほんとしてそんなことはしないし、エルンスト父様は常識人だ。口数が少ないながらも可愛がってくれる彼を、私は一番慕っていたりする。


兎にも角にも二人が来てくれたことにホッとしてまた席に座った時、肩にぽん、と手が置かれた。


気配も物音も全くなかったその動作に、思わず肩がびくりとはねる。恐る恐る振り返り、後ろに佇む人物を確認して私はホッと息を吐いた。


「ニルス父様、あまり驚かせないでください」

「こぉーんなに驚くなんてジュリアーナは可愛いねぇ。けどさっきみたいな気配がよめないんじゃ、この細くて綺麗な首、すぐに掻き切られちゃうよ?」

「ニルス父様の気配が私なんかによめるはずないじゃないですか」


そう言うと彼は可笑しそうにケラケラ笑い、ごめんね、と言いながら私の頭を撫でた。


彼、ニルス父様の気配を消す技術はすごい。なんていったって彼の職業は暗殺業だ。暗殺、と言っても犯罪で行うのではなく、王家からの依頼を受けて貴族や王族に襲いかかる他国の暗殺者を抹殺したり、情報収集を行ったりと、一応公務員なのである。常に目元以外の顔を覆ってしまっている彼の顔を私は見たことがないが、きっとイケメンなのだろう。


そろそろお気づきだと思うが、私には父と呼ぶ人が五人いる。


もちろん全員が私の父なわけではない。


事の発端は二十数年前、彼らが学生だった頃だ。

王立学院は貴族、平民問わず学生を募る学校で、そこに彼らと、私の母は入学していた。


平民でありながらもその可憐な姿と慈悲に溢れる性格で、私の母は次々に彼らの心を掴んでいった。そして卒業式、五人からの好意を知った母の、誰か一人を選ぶことなんてできない、という言葉に彼らは納得し、母と五人の交際が決まったという。


ーーいや、なんでやねん。


しまった、つい前世の口癖が。


さらっと流してしまったけれど、私、ジュリアーナは前世の記憶がある。地球の日本で乙女ゲームを嗜む、一女子高生としての記憶が。しかし特別な能力も、知識でチートも出来なかった私は今こうして平凡にギルドの受付として働いている。


話が逸れてしまったが、そんな記憶を持つ私は母からその話を聞いて思った。


なるほど、あなたはあの乙女ゲームの主人公ですか、と。そして逆ハーエンドを迎えたのですかと。


ゲームの中でしかありえないと思っていたが、さすが異世界。なんでもありのようだ。


そして数年経ち、その関係が続いた結果私が生まれたのだが…ここでまさかの事態。誰の子が分からないのだ。


母曰く全員と関係を持っていたらしく、時期的にも分からないレベルらしい。我が母ながらビッチである。


私の見た目のいえば母譲りの茶色い毛に、これまた母譲りの茶色い瞳。なんとも平凡ではあるが、父方からの美貌は受け継ぎ顔は整っている方だ。しかし誰も彼もイケメンなのでそこで特定はできない。


肝心の母とはいえば私が幼い頃に病で亡くなってしまった。


こうして彼ら五人が五人、自分こそが私の父だと主張するのだ。


ここまで思い返して思わずため息が漏れる。神よ、あなたは何故私の髪色と目の色を母と同じにしたのですか。この世界にはDNA検査なんてものはない。親子だと特定する方法なんて一つもないのだ。


国の重鎮たちが揃いも揃ってこんなザマで、この国大丈夫かな、なんて考えているうちにニルス父様も加わって言い争いは激化していた。


また、ため息が漏れる。


そんな時、再びギルドの扉が開いた。入ってきた人物を見つけ、私は思わず父様たちを押しのけながら彼の元へ走り寄り、その胸に飛び込んでしまう。


「お帰りなさい!祐也!」

「ただいま、ジュリアーナ」


こらえ切れなかった私を仕方ないな、という風に彼は微笑んだ。


しばらく二人で見つめ合い、抱き合ったままでいると、父様たちの方から言い知れないプレッシャーを感じる。


「おいてめぇ…!俺のジュリーに何してやがる…!」

「私の…私の可愛い娘に虫が付いている、だと…」

「ジュリアーナにはまだ恋愛は早いと僕は思うなぁ…!」

「…ジュリアーナ。男は皆ケダモノだ。危ないから離れなさい」

「ふぅ〜ん、面白くないね。彼、殺しちゃっていい?」


これは私に彼氏がいた時のいつもの父たちの反応である。


大概の男はこの殺気と宰相であるアーサー父様からの権力を用いた攻撃に耐えられず逃げて行く。普段は常識人なエルンスト父様すら剣に手をかけているのだから、困ったものだ。


しかし、彼は大丈夫だという自信がある。


「祐也、彼らは私の父様たち。前に話したでしょう?」

「あぁ、初めまして、お義父さん方。高橋祐也と申します。お嬢様とは結婚を前提にお付き合いさせていただいています」


「て、てめぇにお義父さんと呼ばれる筋合いはねぇ!」

「いや、待てよ…タカハシ、ユウヤ…!?」

「まさか、君って…」


案の定父様達からの殺気に怯えることなく、にこりと腰を折った祐也は、驚いたように目を見開くアーサー父様とギルバート父様に頷いてみせた。


「召喚されまして勇者の位をいただきました。以後お見知り置きを」


そう、祐也は異世界、つまり地球から召喚された勇者だ。町で黒髪、黒目の彼を見かけてつい声をかけてしまったのが出会いだ。ちなみに前世の話はもう彼にしてある。私の話を信じてくれ、そして優しく誠実な彼に私が惹かれるまでそう時間はかからなかった。


それに勇者だという彼ならば、この曲者揃いの父にも対抗できると思ったのだ。


「結婚…お父さんは認めないよ!」

「うっ…あ、危ないですよお義父さん」

「俺も絶てぇ認めねぇ!」

「…俺たちを、倒してからにしろ」

「くそっ…勇者の地位剥奪は不可能か…ならば世間的に抹消するのみ!裸にひん剥いて王都のど真ん中に吊るしてくれる!」

「あぁ…僕が頼んだら全世界の王族達は君の抹殺を手伝ってくれるかな」


事実、現在も暗殺者であるニルス父様の背後からの攻撃を躱し、ギルドマスターであるウォル父様からの剣撃をいなしている。将軍であるエルンスト父様もそこに加わり、やや苦しそうには見えるが。


「ジュ…ジュリアーナ!」

「どうしたの?祐也」

「君のお父さん達なんか強くない!?話には聞いてたけどここまでとはっ…と!」

「…うん、ごめんなさい。無駄にスペック高い父様達で」


少し焦ったようにこちらを振り向く祐也に謝るほかない。アーサー父様まで魔法を使用しだし、祐也の周りには四方から攻撃が仕掛けられているのだ。


ふと、ギルドの様子を思い返したように私は見渡した。


そして気づく、酷い惨状に。当然だ、強大な力を持つ彼らが剣を振っているのだから。しかしこれの修繕はギルド員の、即ち私の仕事。


「…にして」


「てめぇ、くたばれこらぁ!」

「おとなしくひん剥かれろ!」

「…虫は排除する」

「殺す!」


ただでさえ業務は滞っている。

それに加えてギルドの修繕。彼氏への仕打ち。


私の小さく漏らした声に父様達は気づかず暴れ続けている。


ぶちっ、という音が聞こえた気がした。



「いい加減にして!」


「ジュ、ジュリアーナ…?」


「このギルドの修繕、誰がすると思ってるの!?全く父様達はいつもそう!私の都合なんか考えもしないで。そんな様子でどうして父と認められると思ってるの?そもそも母さんと不健全な恋をした父様達が、私の至極真っ当な恋道に口を出す権利なんてないの!いや、そんなことを言ってくるあなた達を、父様なんて呼んであげない!」


16年間、ためにためた鬱憤を思いっきり吐き出した。零れた涙をぐいっと拭えば、父様達が物凄く狼狽えているのがよくわかる。


「ジュリアーナ…!泣かないでおくれ…!父さんが悪かった」

「もう暴れねぇからよ、ほら!その…すまねぇ!」

「ご、ごめんよジュリアーナ」

「…すまん。やり過ぎた」

「ふ、不健全な恋かぁ〜…。それを言われると痛いねぇ」


「…もう争わない?」


「「「「「もちろん!」」」」」

「そう?ならいいです。ありがとう、父様達」


父様達からの言質をとり、私は満面の笑みで満足げに頷いた。


いきなりの私の変わりように呆気に取られている父様達を尻目に私は祐也の手を取る。彼は目があうと助かったよ、と柔らかく微笑んだ。


ギルドから取り敢えず彼を連れ出そうと扉を開く前に振り返って父様達に笑って見せた。


「ねぇ知ってました?私も母様に似て、女優なんですよ」


ふふっ、と笑い、その場を後にする。










ーーーーーー


先ほどと打って変わって静寂を湛えるギルド内で、置き去りにされた彼らは、椅子に座り込んでやれやれと笑った。


「ジュリアーナもアンナに似てきたな。彼女も、泣き真似が得意だった」

「あぁ、俺も何度騙されたことが分かんねぇよ」

「わかってはいたんだけどねぇ…」

「…アレには勝てん」

「ジュリアーナも男を捕まえるチカラも一流とみた。ユウヤ、とかいう彼、きっと尻に敷かれるね〜」


娘からの言葉にうちひがれていたような彼らは、その実、まだ反省していない。


普段なら父親の座を巡って争いあう彼らだが、共通の目的を持った時、その力を一つとするのだ。


「さっきの男、どう思う?」

「…剣はまぁまぁだ」

「気配察知はそこそこだけど、僕には劣る〜」

「度胸は悪くねぇな」

「顔は私の方が美しいね、もちろん声も」


本気で暴れていたように見えて手加減しながら様子を探っていた彼らは、真剣な顔で話し合う。その表情からはなんとも言い難い、殺気のようなものがまた伺いしれた。


「しかしジュリアーナは彼のこと、心の底から好きだったようだね」


「…おそらく、抹殺したら嘘泣きではなく本気で泣くだろうな」

「あと一生口聞いてもらえねぇな」

「…しかしアレに娘を任せるのは不安」

「じゃあ俺たちで鍛えちゃえば〜?」

「「「「それだ!」」」」


なんとも間の抜けたニルスの声に、全員が同意を示した。こうして彼らの中で勇者育成が決定する。


宰相であるアーサーは知性と魔法を磨くという。

ギルドマスターであるウォルと、将軍であるエルンストは剣や、その他の武器諸々を教え込む。

吟遊詩人であるギルバートは祐也の美貌と交渉力をあげるといい、

暗殺者であるニルスは気配察知と暗殺術を教えるらしい。


「私の可愛い娘のためだ。いくらでも頑張れるさ」

「てめぇのじゃねぇ、俺の娘だ」

「うーん、あの美貌。きっと僕の娘だと思うな」

「…つり目が、俺そっくりだ」

「いやいや、変なこと言ってると殺しちゃうよ〜?」


またいつものように五人の間に火花が散る。


ジュリアーナの前では猫かぶりをしているギルバートやエルンストまでもが言い争いに参加し、その後ギルドは半壊した。




ーーーーーーー


「勇者ってさぁ…よくハーレムつくるよねぇ」

「はぁっ!?ハーレム!?」

「そんなもの愛しいジュリアーナの付き合わせるんだから、そんなの許すわけないでしょ」

「つくろうとしたら殺すかも〜」

「…我々が言えたことではないのかもしれんがな」




遠くで交わされる会話を察知したようにギルドから出た祐也は身を震わせた。また父様達がいらないことを言っている予感。


「…なんか寒気がする」

「大丈夫?ごめんね、父様達があんなので」

「いいお父さんじゃないか。ジュリアーナも満更でもなさそうだったし」

「…分かっちゃった?」

「君は自分のことを女優だと言ったけれど、俺はそうは思わないよ。ジュリアーナは素直で可愛い」


手を絡ませながら歩きつつ、私は思わず祐也を見上げた。


「ねぇ、なんであの日本で育ってそんなにキザになるの?」

「ひどいな、結構勇気がいるのに」

「それとも今時の男子はみんなそうなの?」

「さぁ?けど思い出してごらんよ。俺、一応勇者だからね」

「関係あるの?それ」


じっと見つめてみると祐也は父様達程ではないがイケメンだ。それにこの性格、勇者という立場。

もしかすると将来ハーレムとか作ってそうだな、なんて考えながらとぼとぼ歩く。


私のこと好き?とふと聞いて見上げた彼の耳は真っ赤っかだったので、まだその心配はないかな。


それに、


「…きっと父様達が許さないし、ね」

「ん?なんて?」

「なんでもない」


小さく呟いた声は彼には届かない。


ごめんね、祐也。


私は五人の父と、ビッチの娘。


狙った獲物は逃さないの。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 父親多数ってどういうわけ?(><)?って、思って読みましたが・・・。 正直、溺愛ハイパー父親たちの描写も短編ながらしっかり個性がたってますし、話自体が今までなかったようなジャンルで新し…
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