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ショートショート①SF

その存在を誰にも気付かれてはいないが、ある所に超天才な男がいた。


その男の頭の良さは、アインシュタインやダヴィンチなどの名だたる天才達をまるで子供扱いしてしまうほどずば抜けたものだった。


ある日男は、重力が自在に操れたら便利だな、と思った。

そして次の日男は、重力を自在に操る仕組みを思いついた。

やはり超天才なのだ。


その装置は驚くほど単純な仕組みで作成する事が可能な上、材料の入手もドンキ等で全てまかなえる為、次の日曜日にでも試作してみようかしらと思ったのだが、男はそれが実現した時の影響について気になってしまった。


前述したように簡易に作れるその装置は、小型化する事も容易な事から、多くの人達が所持し乱用した時の危険性を感じたのだ。


量産体制が整えば、100均でも売り出されてしまうだろう。

それぼど簡単な物だった。


それどころか、仕組みさえわかれば素人にだって簡単に作る事が可能なのだから、その装置があっという間に世の中に蔓延する事は容易に想像する事ができた。


伝搬率と危険性は比例する。


物体に貼り付ける事でその物体にかかる重力を無効化し、さらには貼り付けた面に強制的に重力を働かせる事が

出来る為、どんなに重たい物だって持ち上げたり移動する事が出来てしまう。


上手く使えばとても便利な物だ。

揚力を得ずとも飛行機を空に飛ばす事が出来るし、重量物を扱う工事現場でも重機を使う事なく作業する事だって出来るだろう。

考え出したらキリがない程その発明の用途は広い。


しかしながら、人間ってのは本来の目的以外にも使いたくなるという性がある。


新たな技術が兵器に転用されたりする悪い例もあれば、逆に兵器として開発された技術が便利な日用道具に変わる事もあるが、それだけを期待する事は愚かとしか言えない。


そんな大それた事でなくても例えば、イタズラっ子が車の屋根に貼り付ければ簡単に車は空に飛んでいってしまうし、家の屋根に貼り付ければ中にいる人達が天井に張り付いてしまうというわけだ。


世界中にこれが出回れば、空中を様々な物が飛び交い空の安全も守られなくなるだろう。


きっとそうなれば新たな法律によって規制されるのだろうが、規制されるまでに起こり得る被害を考えると、これが世に出していい物だとは到底思えなかった。


そうして男はこの技術を発表する事を断念した。


それでもやはり、新しい発明は実際に使ってみたくなるものだ。

男は誰にも内緒で一人それを完成させ、様々な物にそれを貼り付け、宙に浮かぶたくさんの重量物を眺めながら悦に浸ったものの、この技術は封印すべき事だとの再確認もした。


一通りその効果を堪能した男は、自分が作ったそれを一つ一つ破壊し、2度とこれを作る事はしないと心に決めた。


しかし男は、ただ一つだけは壊す事が出来ずに残し、通勤に使うカバンの中にヒッソリと隠し持ち、生涯それだけは壊す事が出来なかった。


「こんな便利な物を世に出す事が出来ないとは・・・」

男はただそれだけを残念に思い続けた。


男が持ち歩く弁当箱の底に貼り付けられたそれは、今日も弁当箱の中身が片寄る事のないようちゃんと機能を果たしている。


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