08
「光の子、行っちゃったね」
「水の子、また来るといいね」
「きっとまた来るわ。だってあの子は」
――【鍵】だもの。
僕は、森を出て生徒会長に連れられて、マンションのようなところに来た。ここが寮らしい。実際、カードキーで出入りするみたいだ。
「一階は、談話室。二階は購買になってるから必要なものを買うといい。教科書も売っているからな。で、三階以上が実際の寮」
「で、僕の部屋は409で四階なんですね」
「呑み込みが早いな」
寮の前で手渡されたカードキーに書かれたルームナンバーを見る。そこには、「0409」と書かれていた。四階の九号室目ということなんだろう。
「一、二年は基本的に二人部屋だ。特別なことがない限り一人部屋になることはない。三年は一人部屋だ」
ということは、僕には同室者がいることになる。どんな人なのか楽しみにしている傍らで、生徒会長は頭を悩ませているように見えた。
「……どうかしたんですか?」
「あぁ、紫藤の同室の奴なんだがな。ちょっと癖のあるやつなんだ」
「癖?」
「そこまで、気にするほどのものじゃない。……と思いたいんだが」
眉間にしわを寄せて考えている生徒会長に僕はちょっと不安になる。そこまで考え込むような人が同室なのか。ちょっと不安だ。
エレベーターに乗って、四階まで上がり409号室を目指す。
その間も生徒会長は考え込んでいたが……大丈夫だろうか、僕の学園生活。
といっても、そんなに時間がかかるわけではない。すぐに、部屋の前についた。
「ありがとうございました」
「……あぁ、気にするな。それよりも悪かったな」
「え?」
「そんなに案内できなくて」
十分案内してもらったような気がするんだが、まだこれはごく一部なんだろうか。どれだけ広いんだ、この学園。そう思いながらも、もう一度礼をして生徒会長と別れる。いい人だったな。機会はもうないと思うけど、あるのならもう一度会いたい。そんな人だった。
「さて」
生徒会長が見えなくなったところで、一息つく。ネームプレートをみれば、そこには僕の名前と同室者らしき人の名前が。
手にはカードキー。それを差し込んで、引き抜くと、ピッという音がした後に鍵の開く音がした。
「……ちょっと不安だけども」
これから始まろうとしている学園生活に期待が高まってきているのを自分でも感じながら、ゆっくりとその扉を開いた。