07
地上に戻り、外を見てみるともうすでに空は暗くなり始めていた。生徒会長は小屋を出ると、何処かへと電話をかける。
僕は手持無沙汰になり、小屋の周囲を生徒会長から離れない程度で探索することにした。
まずは、小屋の周りを一周。木でできている小屋の一角がコンクリートになっていて、ここが地下への入り口なんだな、と悟る。
そしてその途中で小屋の裏側に大きな森があることに気が付いた。森の入り口に立ってみると、ひんやりとした風が吹いてくる。風の精霊でもいるのか、その風は心地よかった。
そろそろ戻ろうかと立ち去ろうとした時だった。
「――」
「……え?」
何かが聞こえた気がして、森の方を向いてしまう。
よく見ると、木の陰から小さな何かがのぞいているのが分かる。目が合うと、その小さな何かは奥へとするりと消えてしまった。
表に戻って、生徒会長の様子を見るとまだ話し中のようだ。
「……すこしくらい、いいよね」
僕は、森の奥へと進むことにした。
森の奥は、夜だからか薄暗く、光の魔法を使わないと足元が見えなくて不安定になる。
「《光球》」
少ない光の精霊の力を借りて、明るい球を作り出すと、僕はそれを足元に配置した。これで足元が見えないという危険は回避できるだろう。
道はすぐに分かった。小さな粉のような魔力がよく光で照らしてみるとキラキラと輝く。僕はそれに続いて奥へと進んでいった。
「――」
「こっち?」
と、不意にまた声が聞こえてくる。その声を頼りにさらに奥へと進んでいくと、開けた池のような場所に出た。池というよりは、湖に近い。中央には丘があってそこには立派な木が生えている。最初に見た小さな何かはそこにいた。
「光の子が来たよ」
「水の子が来たよ」
「光だってば」
「水だったよう」
小さな何かはこちらには気が付いて無いようで、一回り大きな、それでも小さい何かに話しかけている。
じっと見ていると、大きな何かは僕に気が付いたようで小さな何かに話しかけていた。
「ほら、お客さんですよ。君たちが話していた子じゃないのかい?」
すると、小さな何かとも目が合う。気まずくなった僕は、木の陰に隠れるように回り込んだ。
「そうそう!あの子!」
「あの子、***の子!」
「……え?」
よく聞き取れなかった部分があって、聞きに行こうとそちらへと踏み出した時だった。
生徒会長の声が聞こえる。どうやら僕を探してこっちまで来たらしい。
「お行きなさい。***の子。迎えが来たようですよ」
大きな何かはそう言うと、小さな何かとともに消えてしまった。
風に乗って、声がまた届く。
――ここは、憩いの場所。また来たくなったらいつでもいらっしゃい。あなたなら歓迎するわ
ふわり、と風が吹いてその声は消えていった。
と同時に生徒会長に見つかる。
「紫藤、こんなところにいたのか」
「あ、すみません、お話し中だったから声もかけずに……」
後ろを振り向いても、もう何もいない。
残っていたのは、光に照らされなくても分かる、魔力の欠片だけだった。