4/40
03
「あ、あの……」
抱えられたまま、僕は校門から校舎の近くまで連れてこられた。
声をかけてみるが、返ってくるのは何もない。僕、何かしたかな?出会い頭で僕が勝手躓いただけなんだけどな。
「あ、あの!そ、そ……」
「?」
あ、はじめてこっち向いた。……じゃ、なくて。
「そ、そろそろ下ろしてもらえませんか……」
「……あぁ、」
ゆっくり、どもりながらそう伝えると、男はゆっくりと僕を地面に下ろしてくれた。意外といい人である。
僕は数分ぶりの地面に違和感を覚えながらも、男に向き直る。
そういえば、この人の名前知らなかったな。あの人には永介って呼ばれていたみたいだけど。
「紫藤、冬華だったな」
不意にかけられた言葉に僕は背筋が伸びた。名前知っていたのか、という疑問はすぐに解決されることになる。
「俺は、藤宮 永介。この学校の生徒会長だ。」
なるほど。と納得した。生徒会の人なら、編入生の名前ぐらい知っててもおかしくはない。
よろしくお願いします。と、その場で握手をして校舎への残りの道を二人で進んだ。