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担任と思しき先生は、それはそれはイケメンなかっこいい先生だった。周りの生徒の歓声が、一段と高くなる。
「おら、お前ら席に座れー」
だるそうに発せられた言葉。しかし、それが生徒たちには受けたようで、また声が高くなる。この時ばかりは、外すまで効くという《防聴》が効いててよかったと思った。
「おう、席に座ったなー。俺は、堤谷 征人。このクラスの担任になった。三年間よろしくな」
きゃー!という声に、多少うんざりしながらも先生の話を聞いていく。どうやら、明日は実力テストをするらしい。実際の授業は、明後日かららしい。実力テストは半日かけて行い、午後は自由時間らしかった。
「あぁ。あと紫藤。この後温室へ行ってくれ」
「……温室、ですか?」
そんなところ、この学園内にあっただろうか。周りでは、「温室?」「温室ってあの温室かな?」という声が聞こえてきた。どうやら、有名なところらしい。
「案内は……いらないだろう。ひとりで行けるようになってるから」
その言葉の意味は、すぐに分かることになる。
「たしかに、これは案内いらないね」
温室の入り口、と言われて案内されたのは、学園の中庭にある森の入り口だった。すぐそこには、精霊と思しき小さな子がこちらを覗いていた。そちらへと歩いていくと、精霊はつかず離れずの距離を保って奥へ奥へと案内してくれる。中心部へと着くと、そこには大きな温室があった。
「ここが、温室……」
ここまで案内してきた精霊は、ふわりと空へと舞いあがった。右耳のピアスをいじって、水精霊を呼び出すと、遊びに行っていいよ、と声をかけて、温室へと入っていく。中は、薔薇が周りに生えていて中央には白いテーブルとイスがセットされていた。そこに、見覚えのある男が座っていた。
「……陵、さん?」
声をかけると、男はむくりと体を起こしこっちを見て微笑んだ。一瞬ドキリ、とする。
「あぁ、入学式お疲れ様、青藍」
「陵、さん……。……ここでは、その名前はご法度ですよ」
「あー、すまないな。冬華」
手招かれて、すぐそこまで行くと腕をグイッと引っ張られる。すると、ちゅっと軽く頬にキスを落とされた。
「な、」
「ん?」
「なにしてるんですか……」
顔が真っ赤になるのが分かる。こんなに恥ずかしい思いをしたのは久しぶりだ。陵さんは、ふふ、と笑って近くの椅子へと僕を誘導する。その目の前にあるテーブルには、二つほどティーカップが置かれていた。中には、紅茶がなみなみと入っている。僕は一口、それをゆっくり飲んで気を落ち着かせることにした。




