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【 二 章 】
扉を開けるとそこには十数人の男女がいた。各々、手にはグラスを持ち、飲んでいたり話をしている。僕も、近くにあったテーブルから飲み物の入ったグラスを一つ手に取る。こくりと一口飲んでみると、それはアイスティーだった。
近くの壁に寄りかかって、部屋全体を見回してみる。すると、一人の女性と目が合った。目があった女性は、一緒にいた女性に一言告げてから、こちらへと向かってくる。僕はそれを見て寄りかかっていた姿勢を直した。
「冬華君、来てたんだね」
「はい、ついさっき」
そう答えてから、人差し指を自分の口に持ってくる。
「白爛さん、ここでは本名は……」
「あぁ、そうだったね」
青藍、と呼ばれてこの部屋の空気が変わったのが分かった。
――青藍、それはこのギルド【車輪の輪】のメンバーの一人であり、最も実力の高いエースのような存在。そして、この僕紫藤 冬華の別名でもある。
「その変化のピアスは初めて見るね。何個目かな?」
「最新作の十七個目ですよ。よくできた女性体でしょう?」
本当は声も変えたかったが、それはピアスではできない。このピアスにかけている魔法は特殊だが簡単なもので、声を変える魔法はまた違った魔法になる。
白爛と呼んだ女性は、「いいなー」といい、思い出したかのように「そうだ」と続けた。
「紹介したかった子がいるの」
そう言うと、彼女は近くにいた男を呼ぶ。……あれ?この男、どっかで見たことあるような。
「この春から入った新しい子なの。炎斬っていうのよ」
「この春から――」
この春ということは、まだ、一週間もたっていない。そんな子をこの場に呼び寄せてよいのだろうか。という、疑問が出てくる。が、僕より年上だろうその人にはあまり関係ない話だったのかもしれない。
「……炎斬だ。よろしく頼む」
うん、やっぱり聞いたことのある声。しかも、今日聞いた声だった。
「青藍です。――よろしく」
握手をしようとして、はっと気が付く。
この人、もしかして――、
「?こちらこそ、迷惑をかけないか心配だがよろしくな」
ぎゅ、と握手をして、確信に変わった。そうだ、この人は。
そう思っていると、後ろからさらに声をかけられる。
ついさっき、電話で話していた声だった。
「青藍さん、来てくださったのですね」
高い、女性の声。……紅祈だった。
「……あそこまで誘われてしまえばな」
「ふふ、そんなところも可愛らしいです」
赤い巫女服に身を包んだ女性、紅祈。ある特殊な魔法使いで、その体は死することはない。
「今日は珍しいな。あれじゃないのか」
「いつも媒体という訳にはいきませんわ」
赤みがかった長い黒髪を払いながら、そう言う紅祈。近くにいた炎斬は、有名どころのそろったところで戸惑っているみたいだった。
紅祈、ある特殊な魔法使いゆえに、身を追われている女性。僕にはそれぐらいしかわからないが。
「そろそろお開きの時間ですし、どうです、青藍、この後――」
「やめとく」
そういうと、僕は炎斬に挨拶をして、そのまま《風移》で部屋へと戻った。
……だから、紅祈の声なんて聞こえていなかったし、そのあと炎斬が呟いた声も聞こえなかった。




