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尋問、それはとても怖いもの。4

「分かったわ。私は機関室に行く」

「了解。自分はここに残ります。でも無茶はしないでください」

「成人したときから無茶しかしてない。もう慣れっこよ」


 そう言って出て行く女を見送った男は再び私の前に立ちふさがった。

 私がそれを見上げると、頬に強い衝撃。殴られたと気付くのにちょっと時間が掛かったが久しぶりのグーパンチに奥歯が一個迷子になる。


「がはぁッ!」

「やい女スパイ、お前、仲間がいたのか?」

「はぁ、はぁ……! 冗談じゃない……、こんな組織潰すのに2人以上必要じゃないですわ」

「じゃあお前と一緒に捕まった男はなんなんだ? お前の彼氏か?」

「いいえ、紐です」

「ざけんじゃねーよ」


 また殴られた。それも今までより遥かに気合の入った一発だった。今度は前歯が揺れている。


「……―――ッ!!!」

「どうだ、吐く気になったか」

「あ、あなたの事は絶対に許さない! 女の顔に傷をつけてくれましたね!? 代償は高くつきますので覚悟していてくださいッ」

「おいおい、怖いぜ。ちょっとは落ち着けよ」


 男の右腕が激しく動いた。今度は全力で殴るつもりだ。まともに受けると気絶する。あとはされるがままだ。

 生きて帰る気力もなくなった。もうどうにでもなれ。


「うぐぁ!?」


 根気も覚悟も全てを投げ出し、目をつぶって痛みに備えたその刹那、男のうめき声がしたと思ったらそのまま私の胸に倒れこんできた。ちょっとだけ残った女のプライドで可愛らしい悲鳴が出てしまったが、すぐに男の顔は私の胸から離れていった。


「やぁ、元気してた?」


 聴きなれた声に目を開ける。すると、そこにはとても懐かしいと思える顔があった。

 私と一緒にここ、『スラブコーポレーション』を監視していた素敵フェイスの男だ。

 ついでに犬に囲まれ拷問(?)を受けていた男でもある。てっきり死んだと思ったけど。


「あ、どうも。無事でしたか」

「無事なもんかよ。危うく死に掛けたんだぜ」

「犬に囲まれて楽しそうでしたが」

「見てたのか!?」

「はい、エアダクトから」

「ああ。君はいいスパイになりそうだ」

「いいから起こしてください」

「待ってろ」


 奇跡ってあるもんだなぁ、と感動した。

 椅子から解き放たれ、自分のあんよで自由に歩けるという素晴らしさが今ならしみじみ分かる。自由とは素晴らしい、体が動かすのがこんなに開放的だとは思わなかった。


「さっき発動機をいじったのはあなたですか?」

「そういや自己紹介がまだだったな。俺の名前はマイケルだ。あなた、とか男、とかなんか嫌だしややこしいだろ」


 そう言ってマイケルはベルトに挟んだピストルを取り出し、部屋から出るドアノブに手を伸ばした。


「さあ呼びたまえ」

「は?」

「マイケルさん、と呼びたまえ」

「え、何で? ……まあいいや、マイケルさん」

「助けてくれてありがとう」

「……た、助けてくれてありがとう。……なんか照れますね」

「やっぱり君は素直でいい性格だ。水無月リン」

「私自己紹介しましたっけ?」

「もうぼけたのかい? 初めから呼んでたっしょ。さあ行くぞ」

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