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尋問、それはとても怖いもの。2

 立派なスパイは同情心の欠片も見せないというが、私にはそうなれる自信がない。現にあの男を見捨てた罪悪感を感じているし、何より奴隷達の扱いに心底心痛めている。これが普通の感情だと思うが、先輩方はどうやってそれを克服しているのだろう。

 もしかして、今私が置かれている状況以上の修羅場を何度も何度も経験させられるんだろうか。

 それだったら私は心が壊れそうだ。そうなるともう、あの時のテロリストと変わらなくなる。そうなるのはごめんだ。


「見つけたか?」


 真下から人の声が聞こえた。少し低めの声帯だが、これは女の声?

 他の音から察するに今は何処かの通路の上か。ちょっと聞き耳立ててみよう。


「いえ、いません。逃げられました」


 男もいるな。しかし周りがやけに騒がしい。足音だらけだ。


「クソ餓鬼が。どっから逃げたのよ」

「奴隷達も白を切っており調査が難航しています。ジェシカも同じような状態です」

「とにかく片っ端から第3格納庫を調べ上げて。傭兵には下水路まで調べさせるのよ」

「了解、今すぐに」

「待って、アルピャス」

「な、何か」

「……油断するな、あの餓鬼はまだチュウボウだがトリニティのスパイよ。一筋縄じゃいかない」

「承知してます。ところで一緒にいた男は」

「好きにしていい。いや、もう殺せ」

「はっ」


 いよいよ本当に男の人もヤキが回ったな。

 可哀想に。

 辛いけど、あなたの分まで立派なスパイになって見せますよ。天国で見守っててくださいな。


「……くそ、儲かると思ってこのシステム(星系)に基地を作ったのにトリニティがいちゃ商売あがったりだっ」

 

 言い終わるよりも前に何かを蹴る音がした。同時に沢山のものが散らばる音。


「カティ落ち着いて」

「落ち着いてられない! あの餓鬼のせいで全ておじゃんになるかも知れない、私やお前達の生活が掛かった問題なのよこれは!? もし軍や警察、それかあいつらの組織にばれたりでもしてみたらッ」

「カティ、大丈夫。たかが子供1人でしょ。俺達に任せてあなたは自室でお待ちください。すぐに吉報を持って参ります」

「……くそ、頼む。皆に何か飯でも振舞って、明日がランデブーだ」

「了解」


 明日がランデブー? どこかと合流でもするのかな、だとしたら何故?

 まさか、奴隷の取引か。いや、そうに違いない。

 もっと情報が欲しいな。どこかにタイルの隙間はないか。


 潜入工作型のスパイはとにかく施設の基本構造を教え込まれる。簡単な見取り図を見ただけでそこにどんな家具あってどんな材質が使われているのかが推測できるようになってやっと一人前になれるそうだ。実地で活躍するプロの潜入スパイは超一流の設計技術を取得していたりするしプロのリホーム業者に転職することも出来る。つまり、そういう潜入方法もあるって事。というか結構ポピュラー。

 私のような下っ端で見習いのスパイはもっぱら監視が主任務だが、いざって時のためにダクトのタイルを音もなく1枚2枚剥がせる訓練は受けていたりするもんだ。


「あ、しまった! うわっぷッ」


 ただ、訓練で取得した技術が実地で活かせられるとは限らない。


「あいたたた……」


 ダクトタイルの素材に何を使用していたのかは知らないが、私がそっとずらすとそのままぱっくり割れて床に叩き落された。

 受身も取れずそのまま落下したことで体中が痛い。その痛みに耐え切れず呻いていると、私の周りに人が集まる気配がした。顔を上げると、屈強な男達と一人の女がこちらを見下ろしていた。誰もが驚愕した表情を浮かべて。


「あ、どうも……」

「どうも、じゃねーよ糞餓鬼が!」

「アルピャス、まだ子供よ。加減して」

「分かってますよ」


 意識が飛ばされる直前、顔面に蹴りが入ったことまでは覚えている。

 その後、靄のかかった故郷の夢を見た。久しぶりに見た実家の景色だった。

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