おっちょこちょいなスパイ達。2
スパイにとって、絶体絶命のピンチと言うのは任務を放棄してでも避けなくてはならない重要事案である。
スパイは相手の情報を根こそぎかっぱらうから逃がしてしまえばすべてが筒抜けになるのは言うまでもなく。それ故、命乞いしても逃がしてくれるなんて甘い考えは通用しない。ハイリスクハイリターンなジョブ、それがスパイだ。
どうしよう……私達、捕まっちゃったけどこれどうなるんだろう……。
なんか臭い人員輸送船に無理やり放り込まれたけれど、これ今あの秘密基地に向かってるんだよね?
冗談じゃないよ、ガチで冗談じゃないよ。
「どうするんですか。私達、今手錠が掛けられちゃってますよ~!」
「落ち着けリン。今、なんとかしようと考えてる途中だ」
「なんとかって。ここからなんとか出来るんですか? 私達の宇宙服はみんな星空の塵にされちゃったんですが」
「黙ってろって! 今、あれだオイ、生身でも宇宙で生存できる方法を思案中だ馬鹿野郎ッ」
メットを脱がされ、初めて目にした男のナイスフェイスに意外にも心ときめいた私であったがその内実、頼りにならないスパイと分かるや胸のときめきは何処か遠くへ消えてしまっていた。
今は落胆の余り泣きたくても涙が出ない。このまま得体の知れない組織の男達にどう料理されるのか。分からないし想像したくない。もうやだ、死にたい。
「だから、あの時逃げていたら」
「どの道捕まってたんだな、これが」
私は敵のロボットを見つけたと同時にシャトルの操縦権を自分に譲渡し逃げることを考えた。
だが男はシステムをロックし、シャトルに残された雀の涙程度の武装もパージして酸素も抜いた。これで逃げることが出来なくなったため私はやむなく敵のお縄に付いたわけだ。
そもそもあの男が勝手なことをしなければ逃げ切れる自信はあったのだ。余計なことをしくさって!
「私達、どうなっちゃうんでしょ……」
「もう弱気か? うーん、そうだな。リン、君は同級生の男と寝たことはあるかい?」
その質問には耳に熱を感じた。
「あ、あるわけないでしょうが! なんですか、どういう意味ですか?! お泊り会ってことですか?!」
「いや、お互い生まれたままの姿になって―――」
「あるわけないでしょうがぁぁあぁぁあああああ!」
くっそぉぉぉお、磁気固定式手錠がなければそのままぶってやる所だ。動きたくてもその場から離れられないもどかしい!
「わた、私はァ!」
あ、声が裏返ってしまった。
「私は、そもそも中学2年生であり、倫理を重んじモラルを重視ししかるべき恋愛は大人になってからと決めているのです! そもそもォ! そも……おお男の裸なんてまだ雑誌だけでしか見ていませんッ」
「そういう雑誌は見るんだ」
しまったぁぁああ!! 口が、お口がチャック!!
「ま、とにかく気持ち覚悟しといたほうがいいんでない。そのうちいやと言うほど裸も見れるし触るようになる」
「どういう意味ですか」
「そのまんまだ。女は男の慰め者。非力な女を労働に使うとでも思った?」
「え、まさか私の将来って……」
「お互い末端のスパイだからなぁ。尋問拷問されて殺されるか洗脳だな。君の場合子供でまだ可愛いから性奴r」
「ひぃぃぃぃいい! やだぁぁああ、もういやぁぁぁあああ! 助けてお母さあぁぁあああああんッ」
「あぁ、いや……」
「お母さん、いやぁ……」
「いy……あ? う、うぅん……なにこれ臭っ」
どうやら私は気絶していたらしい。
気付くと薄暗く広い空間の中で横たわっていた。床は何かしっとりしている。背中の生地が少し濡れていた。
一体ここはどこなんだろう、薄暗くて、それでいて臭う。物凄く臭う。
光源は? 光源は何処? とにかく明るいところを探さないと。この状況を把握しないと。
「―――うわぁ……なにこれ……」
起き上がり、兎に角辺りを見回したその時、私の目には数え切れないほどの動く物体が見えた。それらを注意深く観察すると手がある。足がある。頭がある。
それらは私を囲み、警戒した眼差しでこちらを凝視していた。
私は察した。これは皆、人間だ。
「うぅ、皆さん、お洋服はどうなさったのですかぁ……?」
「あー。うー」
「やー。あ、あ、あ、あー!」
「へ? なんですか?」
「あー! あー!」
「あうえお、あうえお!」
言葉が理解できない。異国の言語とも違う気がする。なんか息が抜ける言葉だなぁ。
「あの、あなた方はここの人たちに連れ去られた方達ですか? 奴隷さんですか?」
「おえい? あー! あー!」
雰囲気的にニュアンスは理解してくださってる模様。
「あのう、ここに男の人が一人、私と一緒に攫われてきませんでしたか?」
「あー?」「うー?」「いああい」「あー」
うーん、この微妙な言葉。もどかしい。




