エピローグ。
あれから1カ月が経ったクリスマス。私の元にメールが届いた。
送信元はトリニティ・スパイチーム。
その内容によると、あのあとすぐに『スラブコーポレーション』が拉致した奴隷は即座に解放され、そして今までの取引データも全て押収されたそうだ。そこから判明したのは、奴隷を買っていた連中はそのほとんどが政治家だったってこと。それで現在どこのコロニー惑星も結構大変らしい。自業自得だ。
あと、そのコーポレーションの代表者はあの女だってことも判明した。名前はカティア・クロノワール。クロノワール号という宇宙で一番有名な豪華客船の元オーナーの娘といえば、心当たりのある人はきっと多い。彼女の両親が詐欺でクロノワール号を手放した翌年からこのビジネスを始めたそうだ。そして彼女の周りにいた人間は皆、クロノワール号のクルーだったらしい。
どんな組織でも裏の顔を見ると始まりはこういう悲惨なパターンだったっていうのはこの時代よくある話だ。彼女は親の借金で家を失い、そして職を失った社員とその家族を食わせるためにスラブコーポレーションを立ち上げた。結果はああなったが。
メールには続きがあった。
コロニー警察は今回の一件でトリニティに感謝状を贈ったらしい。そこには私の名前は書いてなかったものの、『1人の勇敢なスパイによる活動で、凶悪なテロリストを排除することが出来た。ここに敬意を持ってトリニティの……』長くなるからここで切る。
どうやらこの事件は私1人で解決したことになっているらしい。マイケルと言う男の存在はどのデータにも載っておらず、そしてまた、2人で盗んだデータファイルも巡視船に乗ったマイケルと共に宇宙に消えた。トリニティの幹部もそんな男は知らないと口を揃える。もしかしたら、彼は私にしか見えない幻だったのかもしれない。最近は自分でもそう思いはじめてきた。
それはそうと私は大船長から謝礼を貰って最新式のゲーム機を買った。これを学校の友達と囲んで早くプレイがしたい! そして明日からは冬休みが待っている!
第114人類支配星系第3惑星ソフメディア標準時確認。0801。何時もと変わらない登校時間。地球産の雀が気持ちよく鳴いていた。
「水無月です。今年最後の、学園潜入ミッション開始します」
『こちらトリニティ。シグナル確認した。遅刻するなよ、帰宅後の連絡を待つ。オーバー』
ここまで僕の作品に付き合ってくれた皆様、本当にありがとうございました。
海で釣りをしながら思いついたこの作品、僕のスタート作品として皆様に読んでもらったことを嬉しく思っております。