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脱出。4

 もう終わりだ。

 このまま捕まって死ぬか、今この瞬間死ぬしか道は残されていない。相手の状態から察するにおかしな動きをしたらすぐにコクピットを吹き飛ばすのは明白だ。

 なんなら、と私はとあるコマンドが頭を過った。自爆である。だが、もしかして自爆までにタイムラグがあったりしたら間違いなく無駄死にだ。


{お前ら、よく見ていろ! トリニティのスパイは私がここで始末するッ}


 どうしよう、もう、なにをしても間に合わない。お終いだ。


{アルピャス見ててよ、今こいつを送るから……ッ}


 敵からのロックオン警報。

 嗚呼、神様、みんな、私の馬鹿を許して……!


「コマンド! 自爆装置、き」 

『水無月、衝撃に備えろ! スタンバイッ!!』

「!?」


 刹那、超高熱源体がフリゲートを貫いたのが見えた。さっきよりも大きな爆発が衝撃波となって私達の機体を襲う。

 続いて熱波が機体の装甲を焼いていく。コクピットに鳴り響くアラートの1つは各パーツの過熱警報だ。


「わ、わああああああ!?」


 だがこの時の私は一体全体何が起こったのか理解できなかった。

 ただ、私と一緒にコーポレーションの機体が巻き込まれ同じく制御不能に陥ってるのを見て更に混乱した程度。あ、命に別状は無いことだけは理解できた。まだ長生きは出来そうだ。


「こ、コマンド! 姿勢制御にスキャンモード!」


 アームズギアが命令を聞くのに少々時間が掛かったが、それでもすぐに体制を建て直し周囲10kmの浮遊物の存在をスキャンしてモニターに表示した。さっきまでいたコーポレーションの機体は一緒に吹き飛ばされた機体を除きほぼ大破。フリゲートにいたっては再起不能で生存者がわらわらとSOS信号を打っている。正直なところ、あの爆発で生存者が何人もいるだなんてちょっとした幸運だ。


『こちら、トリニティが3番艦ウェンティスト・クローバー。水無月リン、無事か』

「は、はいぃ!」

『今そちらに救出に向かったギアがいる。攻撃するなよ』


 レーダーに10は越えるシグナルが表示され、それらはまっすぐ私に向かってやってきた。

 10km辺りまで接近するとやっと肉眼でも確認できるようになる。そこに現れたのは紛れも無いトリニティ所属のアームズギアとフリゲート。この瞬間、今まで溜めていたストレスが一気に抜けて言ったような感覚を味わった。後になって分かったことだが、この時の私は大泣きしていたらしい。全然気づかなかった。


「あぁああありがどうございまず、たずかりまじだあああああ!」

『大船長が君を褒めてたぞ。喜べ、たった1人で奴隷商売の1つを壊滅させたんだ。最高のスパイだよ君は』

「うぇ? ひと、1人?」

『とにかく収容しよう。――――――こちらウェンティスト・クローバーより全隊へ、この宙域の生存者を確保次第直ちに撤収。あとその中破したアームズギアも回収だ。それにはカティア・クロノワールが乗っている。奴を逮捕次第、全てを吐かせるぞ!』






 西暦2454年11月24日。『スラブコーポレーション』は壊滅。

 近隣ステーションの警察によると、これから当コーポレーションに関係を持った組織が次々と摘発されていくらしい。いいことだ。

 そして私は無事にトリニティと合流を果たし、今まで受けたことの無い大歓迎をもって帰ってこれた。ご褒美として振舞ってもらったチーズケーキが欠けた歯に酷く沁みたのをよく覚えている。おかげで味は全く覚えていなかったが。

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